トピック

ポートレート写真に圧倒的なインパクトを与えるRFレンズ

大きなボケ味と圧縮効果が魅力のキヤノン「RF135mm F1.8 L IS USM」

最短撮影距離の70cmまで近づいて絵作りを行った。右目を隠した前ボケの効果もあって、左目の印象が強まっている。緑色の発色も肌を美しく見せてくれる
キヤノン EOS R5/RF135mm F1.8 L IS USM/135mm/マニュアル露出(F1.8、1/500秒)/ISO 100/WB:オート

前回は「ポートレートのバリエーションが多く撮れる焦点距離は」というテーマで、限られたシーンで取り回しの良いレンズを比較検証した。

今回は「ポートレートにインパクトを生み出す1本」を探してみたいと思う。50mm、85mmがスタンダードになるポートレートにおいて135mmは完全に望遠域のレンズ。そのため、肉眼で見たのとは違う印象的な人物写真が撮影できる。今回は、写真家の清田大介さんにRF135mm F1.8 L IS USMがいかにポートレートレンズとして魅力的かというポイントを解説してもらった。

森の枝葉を背景に撮影した。幹の茶色い濁りが気になったが、順光で撮影することにより、緑の中にきれいに溶け込んでいる
キヤノン EOS R5/RF135mm F1.8 L IS USM/135mm/マニュアル露出(F1.8、1/1,000秒)/ISO 100/WB:オート
RF135mm F1.8 L IS USM
■SPECIFICATION
レンズ構成:12群17枚/絞り羽根枚数:9枚/最小絞り:F22/最短撮影距離:0.7m/最大撮影倍率:0.26倍/フィルタ―径:φ82mm/外形寸法(最大径×全長):約89.2×130.3mm/質量:約935g

■キヤノンオンラインショップ価格
33万8,000円(税込)

※本企画は『デジタルカメラマガジン2024年6月号』より転載・加筆したものです。

圧倒的な引き寄せ効果による背景描写が得意

RF50mm F1.2 L USM、RF85mm F1.2 L USM DS、RF135mm F1.8 L IS USMのそれぞれの開放絞りで、全身とバストアップを撮影したときの背景の見え方について比較してみた。

135mmの場合、奥の木を引き寄せて葉をぼかしながら密集して描写できるので、モデルを背景から浮かび上がらせる効果が高い。他の2本に比べて開放F値は暗いが、焦点距離が長いためボケ量はむしろ多いように感じる。全身を収めて撮影した場合、撮影距離は10mほどになり、スタジオでの用途よりも屋外でさまざまな背景とのコラボレーションが期待できる。EOS Rシリーズの瞳トラッキングと手ブレ補正のおかげで、ピント合わせにシビアになる必要もなく、積極的に明るいF値を使える。

全身カットによる圧縮効果の比較

焦点距離50mm/撮影距離5m
背景の密度は肉眼で見た印象に近く、背景の情報を伝える表現に適している。モデルとのコミュニケーションが撮りやすい撮影距離なので、カメラマンの意図が伝えやすく、スピーディーな撮影が可能だ
焦点距離85mm/撮影距離7m
50mmに比べて背景を引き寄せて圧縮する効果が強い。背景がなだらかにぼける分、つながりが美しい。被写体がゆがんで写らないので、体のバランスはストレートに描かれる
焦点距離135mm/撮影距離10m
背景を強力に引き寄せながら、ボケ量の多さは一目瞭然。F1.8にも関わらず、ピントを合わせたモデルの後ろからストンとぼける印象で情報が失われた背景からモデルが浮かび上がり、インパクトが生まれる

バストアップ時のボケ量比較

焦点距離50mm
モデルの周囲に余計な被写体が入り過ぎる印象。背景にある濃い茶色の枝がぼけ切れずにはっきり見えて主張しているため、モデルが浮き立つ力は弱い
焦点距離85mm
背景にあるのは木々だと分かるぐらいのボケ具合。背景とモデルとの情報が平等に伝わってくるので、場所の詳細も伝えたいポートレートに適している
焦点距離135mm
葉や枝のディテールがなだらかに消失している。モデルの立体感が一番表現されていて、主題の情報が強く伝わってくる。背景から浮き立つインパクトが生まれる

表現1;美しい前ボケでモデルを彩る

前ボケはモデルに視線を誘導する効果的な要素。135mmはその撮影距離からきれいな前ボケを作りやすい。前景、中景、後景を3層のレイヤーとして考えるのがポイントだ。ポートレートの場合は中景がモデルとなり、前景が前ボケ、後景が後ろボケとなる。大きい前ボケを作るためにはF値は開放絞りとし、レンズの前面に前景を配置する。画面全体にボケとなった色がかぶるので、肌や衣装のじゃまをしない淡い色や薄い色の被写体を選ぶ。カメラマンは前後に動きながらかぶり具合を調整する。

135mmはその撮影距離から、モデルの前に被写体を配置しやすい。前景と後景のボケでモデルをサンドイッチして写真に立体感を作り出すのも得意だ
キヤノン EOS R5/RF135mm F1.8 L IS USM/135mm/マニュアル露出(F1.8、1/800秒)/ISO 100/WB:オート
新緑の色は爽やかさが演出できる!

表現2:背景を大胆に圧縮してモデルを引き立てる

背景に何が写っているかという情報を圧縮効果で弱めると、絵画のようなポートレートが撮影できる。135mmは圧縮効果が強力で、アウトフォーカスとなる背景をぼかしながら引き寄せてくれる。前ボケと同じように肌や衣装のじゃまをしないきれいな色を背景に選ぶと失敗が少ないが、逆に暗い被写体であっても立体感が生まれる。モデルと背景が溶けないように観察したい。モデルと背景の画面上のボリュームは5対5ぐらいの配分になるように構図を作ると、モデルが浮かび上がる印象が強くなる。

芝生と森を背景にした。遠くで遊ぶ子どもの帽子が見え隠れしていたが、見事にぼけて消失している
キヤノン EOS R5/RF135mm F1.8 L IS USM/135mm/マニュアル露出(F1.8、1/1,600秒)/ISO 100/WB:オート
40mほど離れた森を背景に

まとめ:肉眼を超えた写真ならではの表現が大口径135mmの魅力

RF135mm F1.8 L IS USMは非日常を表現するのに最適なレンズ。EOS R5との組み合わせなら約8段分の手ブレ補正効果があるので機動力もアップする。望遠レンズは顔をクローズアップすることに注力してしまいがちだが、背景と前景を入れることでインパクトを生み出せる。自分が動いてよく観察しながら撮影しよう。

モデル:三橋くん

清田大介

(きよただいすけ)写真家。APA(公益社団法人 日本広告写真家協会)正会員。「清田写真スタジオ」経営。商業撮影、雑誌寄稿、セミナー開催。国内外のコンテスト受賞多数。東京カメラ部10選2020。