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超小型モノブロックストロボ「Profoto B10X」で写真表現力アップ! スタジオ撮影で“自然光”を再現

ライティングで光を自由に操って、写真表現の幅を広げたい。ズーム操作やレンズ交換で、画角やパースペクティブを選ぶことにより撮影の楽しさが広がるように、絞りやシャッター速度の設定で写真表現の世界が深まる。単純に「暗いからストロボを使う」というだけではない本格的なライティングに興味を持ったら、モノブロックストロボが間違いなくお勧めだ。

撮影アクセサリーとしてのストロボといえば、カメラのアクセサリーシューにセットして使う「クリップオン」ストロボが一般的。これは夜間や明るさの足りない室内でも写真撮影を可能にする便利アイテムで、その昔にマグネシウムをピカッ! と燃やして撮影していたものがルーツだ。

これに対して、モノブロックストロボはスタジオ撮影用の大型ストロボが小型軽量に進化したものなので、初めから光を操って撮影することを想定した道具。そのため、昨今ではライティングの調整や確認のためのモデリングライトを内蔵したモデルも多くある。光量もクリップオンストロボとは比較にならないパワーを持つのが特徴となっている。

ソフトボックス等のアクセサリー類の質も含めて、クリップオンストロボとは別物と言ってもよい。今回は、フォトグラファーのSHUN(三好俊治)さんに、ProfotoのB10XとB10X Plusを使った撮影をお願いし、本格的なストロボ撮影の魅力や使いこなしのポイントを伺ってみた。

Profoto B10X

小型軽量のProfoto B10X & B10X Plus

モノブロックストロボは、電源部(ジェネレーター)と発光部(ヘッド)が別体のスタジオ用大型ストロボに対して、電源部も含めて発光部が一体(モノブロック)になったもの。しかしその中でも、ProfotoのB10XやB10X Plusはバッテリー式で完全にコードレスで使用できるタイプとなっている。

B10XとB10X Plusの違いは最大出力で、B10Xが250Ws、B10X Plusが500Ws。外形寸法はともに高さ10×幅11cm、長さはB10Xが17.5cm、B10X Plusは23.5cmと少し長くなっている。

また、発光から次の発光までのリサイクリングタイムは最大で、B10Xが1.3秒、B10X Plusが2.2秒となっている。

ところで250Wsや500Wsというのは、GN(ガイドナンバー)でいえばどれぐらいなの? というのは誰しもが思う疑問。しかしWsをGNに変換するのは無理なので、一般的なクリップオンタイプのストロボとの単純比較はなかなか難しい。

ということで、今回の撮影にも使用したProfotoのクリップオンストロボ(Profotoではオンカメラ・フラッシュという)のProfoto A10のスペックを参照。76Wsとなっている。B10XとB10X Plusの250Ws/500Wsは、モノブロックタイプではないジェネレーター「Profoto Pro-11」の2,400Wsと比べると控えめに見えるが、クリップオンタイプと比べれば3~5倍の出力を持っている。

この違いはやはり大きい。ちなみにProfoto A10はモデリングライトも内蔵しており、リサイクリングタイムも最大で1秒と短い。最大光量以外のスペックではモノブロックストロボ的な性格も持ち合わせている。

撮影例1:窓際のカット

ライティングは「その場の光」を見ることから始まる

SHUNさんは「実は、その場の自然な光をしっかりと観察すること。それが大事なんです」と説明しながら、まずはストロボを使わないカットを撮影。

“その場の光”で撮影
その場の光をよく観察することが大切。まずはストロボ無しで撮ってみよう

「ちょうど、曇天の窓際の光みたいですね。ストロボを使わなくても綺麗でしょ?」と笑うSHUNさん。そして「どの方向から光が射しているのか。それを意識することが大切なんです。ここから一工夫なんですが、その自然の光と同じ側から光を入れるのが基本なんですよ」。

B10X Plusを、窓をイメージしたセットの外側に固定して位置と角度を調整。ベースになる光が曇天を思わせる柔らかい光なので、ソフトボックス(OCF ソフトボックス 90cm Octa)も使用。ストロボの光がプラスされたことで、柔らかい日差しが差し込み始めた窓際のような光になった。

撮影状況
ストロボの光と自然の光。その向きを揃えることが自然さにつながる
完成A

この時に大切なのは「環境光の露出をしっかり決めてから、ストロボの光を考えること」とSHUNさん。

そして、ちょっと露出を変えてみましょうか、とシャッター速度を少し落として、明るめの仕上がりにしたのが次の写真。

完成B

ストロボのセッティングはそのままに、環境光の露出を変えたバリエーション。自然光とストロボのバランスを変えてみるには、こういう方法もある。

自然光に対する露出が上がったことで、髪の毛などシャドーの描写が明るくなり、全体的に柔らかい雰囲気も出てきた。

「ストロボの撮影というと、どうしてもストロボの光量でいろいろ調整したくなると思うんですけれど、これはストロボはそのままで自然光に対する露出を変えているだけ。これもいいでしょ?」とSHUNさん。最初に背景の露出をしっかり決めてストロボとのバランスを調整しているからこそ、こういう表現の広げ方もできるのだという。

撮影例2:光と影で演出する①

フラットな光線状態の室内。背景の壁にストロボの光と影のグラデーションを作り、空間を演出。人物への照射の役割も含めて、シンプルな1灯ライティングで印象的な演出を実現している。

自然光(ストロボ無し)
完成(1灯ライティング)

壁際のドア枠の影を使って、背景の壁に陰影を作る。ストロボとドア枠の距離によって、光と影の境界のグラデーションが変わるので、その効果を意識しながらストロボの位置を調整。B10X Plusにはバーンドアをセットして床へ向かう光を制限し、足元が明るくなりすぎないように調整している。

撮影状況

そしてこの撮影シーンにはもう一つのポイントがある。「ここでは、人物の位置が結構重要なんです」とSHUNさん。ストロボの光がドア枠の影になって「当たるか当たらないかのギリギリ」のポイントにモデルが立っている。

撮影状況

その光は、背景の壁の光のグラデーションと同様のグラデーションをまとった光なので、ストロボの直接の光ながら適度な柔らかさも感じさせるという絶妙さ。

ストロボが作る影の特性を知ることで、シンプルな1灯ライティングでも、このような撮影ができてしまうのだ。

撮影例3:光と影で演出する②

木の板に施された白いペイントのエイジング感もリアルな背景。まずは、窓側からの柔らかい光をそのままに、ストロボを使わずにストレートに撮影。

自然光(ストロボ無し)
まずはストロボを使わずに。スタジオの室内だが、窓からの柔らかい光が綺麗なシチュエーション

ここに夕暮れの低い太陽をイメージした光をストロボで加える。使用するのはB10X Plusの1灯。やはり自然光と合わせるように窓側に位置を取り、高さは低めにセット。加えて、背景の壁にはストロボを効かせたくないのでバーンドアを装着してストロボの照射範囲をコントロールしている。

ここでポイントとなるのが影。ここではバーンドアの使用と合わせて、被写体と背景との距離を少し離し気味にして人物の影が背景に落ちないようにした。加えて自然光の露出も少し抑えることで人物を際立たせつつ、光の存在を強く感じさせる写真になった。

撮影状況
完成(1灯ライティング)

自然光に対しての露出を控えめに、右サイドからのストロボ一灯。バーンドアの装着で照射範囲をコントロールしているが、その照射範囲のエッジの部分にちょうど人物が入るような絶妙なライティングでもある。

「思い切って光を絞ってみるのも面白そうですね。やってみますね」とSHUNさん。スタジオに備え付けのカポック(白と黒の2面作りで、遮蔽やレフ板として使う大きなついたて)をスリットになるようにセット。

モデリングライトを頼りに帯状の光を作り出す。先ほどまで使用していたバーンドアは外してストロボはプレーンな状態に。そして影の中に浮かぶ光と人物。光の存在にくわえて、シチュエーションやストーリーを想像させる写真になった。

撮影状況
モデリングライトの光量が、従来モデルから30パーセントアップしているB10Xシリーズ。このような撮影ではモデリングライトの明るさアップは特にうれしいポイント。バーンドアは外しているので、帯状の光が天井部分まで素直に伸びているのがわかる
完成(カポック使用)
SHUNさんは「自然光との馴染み」という表現を使うが、ここまでドラマチックな光の演出の元でも、ストロボの光であることを感じさせない自然な雰囲気。クリップオンストロボで頑張っても、なかなかこういう仕上がりにはならない

撮影例4:3灯を駆使して、室内に屋外の日差しを作る

スタジオ内の“家の玄関”をイメージしたセットでの一コマ。ストロボ3灯を使い、屋内でありながらまるで屋外で撮影しているかのように演出する。

撮影状況
3灯の構成

ストロボ①(Profoto B10X Plus) :左側の壁に向けてバウンスさせ、曇り空のような柔らかい光を作る。

ストロボ②(Profoto B10X) :ドアや窓枠の立体感を浮き立たせるように、壁に対して浅い角度で出来るだけ高く遠くにセットし、影の効果も狙う。

ストロボ③(Profoto A10) :壁やドアを照らさない位置で、正面に向けて発光。人物を上部後方から逆光で直射するイメージ。

ストロボ①/②の効果
ストロボ①:Profoto B10X Plus
ストロボ②:Profoto B10X

ストロボ①と②の組み合わせは、撮影例2の条件を2灯で作るのに近い。ストロボ①は、撮影例2の自然光の状態、そこへ、陰影を作るためにストロボ②を合わせる。この2灯で撮影したものが、以下の「ストロボ①+②」だ。

ストロボ①+②

光と影で工夫を加えた背景に人物。これはこれで悪くはないのだが、もう1灯使えるということでさらにもう一工夫。

「ライティングを馴染ませる効果を狙って、あえて逆光でフレアを取り込むという使い方をしてみましょうか」

ということで、③のストロボとしてクリップオンタイプのA10を、壁を直接照らさない位置からカメラ側へ向けて逆光配置。

同時に、モデルの後方上部からの直射と、天井への強いバウンスがトップライトとして働く効果も狙う。結果、狙い通りの写真に仕上がった。逆光を拾ってのフレアはカットする事もできるのだが、当初の狙い通りに効果として生かしてみた。

ストロボ①+②+③

あえて逆光を拾ってフレアを効果として狙う。①②の2灯の作例と比べてみてほしい。どちらが正解かではなく、どちらもアリなのがライティングで光を操る楽しさかもしれない。

まとめ

今回、SHUNさんの撮影を取材して感じたのは、撮影のスムーズさだ。本格的なモノブロックストロボでありながら、バッテリー式で電源コードなど配線に煩わされることもない。コンパクトで軽量なことと相まってセッティングがスパスパと音を立てるかのように決まっていく。

「SHUNさんさすがだなぁ」という感じだが、クリップオンとモノブロックの違いについて伺うと「モノブロックのほうが断然楽で綺麗に撮れるんですよ。ライティングを身につけたかったら、モノブロックですね」とキッパリ。

ただ同時に、今回の撮影で「モノブロックなら何でも綺麗に撮れるかと言えば、それも違うかも」とも感じた。モノブロックストロボは、スタジオ用ストロボの血統だけあって、ソフトボックスやリフレクターなどのアクセサリーも駆使しての撮影に強みがあるのだが、今回はそのままシンプルに使うパターンが多かった。そのままダイレクトに使っても普通に綺麗に撮れるというのは、Profotoのモノブロックだからかもしれない。

10cmほどの発光部でこの配光の素直さは、ちょっと想像を超えていた。もちろん光量の余裕やリサイクルタイムの短さと相まって、発光が安定しているといった要素も大きいのだが、光そのものの素性の良さが「楽に綺麗に撮れる」理由としては大きいのではないか。

クリップオンストロボからのステップアップはもとより、クリップオンで四苦八苦する前に、素直にモノブロックを手にするというのも一つの王道かもしれない。

モデル:vivi
ヘアメイク:中田真代

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まつうらやすし