特別企画
コンタックスGレンズのAF対応アダプターを試す
ソニーNEX-6で実写検証
2013年8月8日 12:00
テックアートからAF対応のコンタックスGマウントアダプターが登場した。ソニーNEXシリーズに本製品を装着すると、コンタックスGレンズがAF動作する。コンタックスGはそもそもAFレンジファインダーカメラだが、マウントアダプター経由で使う際は、当然のごとくMF操作による撮影だった。そのコンタックスGレンズをAFで使えるというのだから、オールドレンズファンにとって今夏最大級のサプライズといえるだろう。
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このTA-GE1Bは、台座部分にマイコンとマイクロモーターを搭載している。電子接点からNEXボディ側の信号を読み取り、それに応じてマイクロモーターでピント調整用のシャフトを回転させるわけだ。ソニーNEXシリーズは、マルチ、中央重点、フレキシブルスポットといったAFモードを搭載しているが、TA-GE1Bはどのモードでも使用できる。顔検出機能も動作可能だ。ただし、AFモードによって合焦精度が異なり、メーカーはフレキシブルスポットの中央点での撮影を推奨している。
実際に試用したところ、メーカーの推奨通り、フレキシブルスポットの中央点がもっとも堅実なAF動作だった。なお、電源はカメラボディから供給され、TA-GE1Bのために別途バッテリーを用意する必要はない。
使用できるレンズは、ビオゴン T* 28mm F2.8、プラナー T* 35mm F2、プラナー T* 45mm F2、ゾナー T* 90mm F2.8が制約なく使用できる。ホロゴン T* 16mm F8は装着不可で、ビオゴン T* 21mm F2.8は内部干渉に注意すれば使用可能。バリオゾナー T* 35-70mm F3.5-5.6は駆動する個体と駆動しない個体があるという。全レンズ対応ではないものの、主要なコンタックスGレンズはサポートしている。
AFのパフォーマンスについて見ていこう。純正レンズと異なり、AF動作はゆっくりとしたものだ。はじめに大きく前後に焦点が動き、その後小刻みに調整して合焦する。速写性は求められないが、コンタックスGレンズがNEXでAF動作している姿に、いちオールドレンズファンとして感動をおぼえる。
テックアート代表のKpliang氏は生粋のコンタックスファンで、ヤシコンマウントのツァイスレンズを長らく愛用していたという。NEXシリーズの登場を契機にコンタックスGのツァイスレンズを楽しむようになったものの、AFレンズを本来の姿で使いたいという思いが強まり、AF対応コンタックスGマウントアダプターの開発に着手したそうだ。コンタックスへの情熱が、世界初のプロダクトを生み出す原動力になったわけだ。
合焦速度は使用するレンズによって異なる。メーカーによると、ビオゴン T* 21mm F2.8=プラナー T* 35mm F2>ビオゴン T* 28mm F2.8=プラナー T* 45mm F2>ゾナー T* 90mm F2.8という順番になる。また、絞りを絞り込むとAF精度が落ちるため、基本的には開放でのAF操作がお薦めだ。利便性重視のAF対応マウントアダプターとはいうものの、少なからず使いこなしを要するだろう。
一方、本製品は電子接点付きのマウントアダプターだけあって、Exifにレンズ情報を反映できる。まず、レンズの焦点距離がExifに記載でき、絞り値も入力可能だ。絞り値はボディ側で設定したF値が反映されるので、ボディとレンズでF値を手動シンクロさせておけば、撮影時のF値をExifで確認できるようになる。これはTA-GE1Bの密かなアドバンテージだ。
本製品はMF操作も可能だ。側面に小さなダイヤルがあり、これを回してピント調節する。実のところ、世界初のコンタックスGマウントアダプターが、この手の小さなダイヤルによるピント調整機能を搭載していた。ダイヤルが硬く、その上何回転も回す必要があり、指先を赤くしながらピント合わせしたものだ。最初期からコンタックスGマウントアダプターを使っていた人にとっては、何とも苦い記憶が甦る。
幸いなことに、TA-GE1Bのダイヤルは動きが軽く、焦点を大きく動かすことも、また微調整することもスムーズな操作感だ。MF時は拡大表示とピーキングに対応し、操作感は既存のコンタックスGマウントアダプターと同等である。なお、NEX側で絞り値をF25に設定してシャッターを切ると、AF/MFの切り替えが可能だ。
さて、TA-GE1Bは実絞りのAF撮影という少々めずらしいスタイルになる。このとき重要となるのがシャッター半押しAELの選択だ。NEXボディでシャッター半押しAELが有効になっている場合は、レンズとボディの絞り値を一致させて撮影すると適正露出が得られる。レンズの絞りだけを操作すると、露出が暴れるので注意しよう。
シャッター半押しAELを無効化した場合は、ボディの絞りを開放F値にして、レンズ側の絞りで実絞り撮影する。どちらを選ぶかは好みによるところが大きいが、筆者はひとつの被写体を絞りを1段ずつ変えて撮ることが多いので、シャッター半押しAELを無効化して撮影した。
手順としては、ボディの絞り値をレンズの開放F値にセットした上で、(1)レンズの絞りを開放にし、(2)シャッター半押しでピントを合わせ、(3)シャッター半押しのままレンズの絞りを絞り込み、(4)シャッターを押し込んで撮影する、といった流れだ。絞りを変えるたびに(1)〜(4)をくり返す。
シャッター半押しの前にレンズの絞りを開放にしているのは、開放状態でないとAF精度が落ちてしまうからだ。MFの実絞り撮影とくらべて少々手間がかかるが、慣れで対処できる部分だろう。
Biogon T* 21mm F2.8
メーカーによると、TA-GE1B使用時にもっとも合焦速度が速いレンズだ。広角で被写界深度が深いこともあり、手堅く実用的なスピードでピントが合う。ピントを外すことが皆無とはいえないが、今回試したコンタックスGレンズのなかではもっとも安定して撮影できた。なお、本レンズは後玉両サイドのレンズガードが長く、NEXボディ内で干渉のリスクがある。取り付けはマウントアダプターを先に装着し、その上でレンズを取り付けよう。取り外す際も先にレンズ単体をマウントアダプターから外す必要がある。
Planar T* 45mm F2
メーカー情報ではAFパフォーマンスは中程度のレンズだ。AFランプは大半のシーンで点灯するのだが、所有するPlanar T* 45mm F2は前ピンになる場面が多かった。F4〜F5.6まで絞ると、ようやく被写界深度内にメインの被写体が入ってくるといった感じだ。そのぶんを見越してAF撮影していたが、後半はさすがに音を上げ、MFに切り替えてしまった。なお、本製品はAF微調整システムを搭載しており、前ピン後ピンの微調整が可能だ。
Sonnar T* 90mm F2.8
コンタックスGマウントの中望遠レンズで、TA-GE1BでのAFパフォーマンスはプラナー T* 45mm F2より下位とされている。実際に撮影してみると、合焦ランプが点灯しないシーンがやや多く感じられた。ただし。合焦ランプが点灯さえすれば、開放からほぼジャストで狙った場所にピントが合う。前ピンになる場面も見受けられたが、合焦精度という点ではプラナー T* 45mm F2よりも堅実だった。
まとめ
TA-GE1Bは、前述のように装着したレンズによってAFパフォーマンスが異なる。総じて言えば、ホビーユースであればそれなりに楽しめるAFパフォーマンスだ。ただし、本格的に作品撮りに取り組むとなると、ストレスを感じる場面があるだろう。AF速度は目をつむるとして、合焦精度はワンランク上の水準を望みたい。メーカーの代表者によると、信号解析でソニーのサポートがあれば、より高精度なAF動作が見込めるという。今後のアップデートに期待したい。
一方、製品の小型化は大成功といえるだろう。MF用コンタックスGマウントアダプターとさほど変らぬ外観に、マイクロモーターとマイコンを組み込んでいる。重量も取り立てて重いという印象はなく、ハンドリングは既存のマウントアダプターと同様だ。電源はカメラ本体から供給され、マイクロモーターを駆動させるため、通常の撮影よりはバッテリーの消費が激しい。ただし、カメラを電源オフにした際はバッテリー消費しない設計になっており、常用できる製品化を目指した姿勢は評価したい。
なお、TA-GE1Bは設定用絞り値を使って様々なセッティングが可能だ。AF/MFの切り替え、前ピン後ピンの微調整、NEX-5向けの互換モードといった機能は、絞り値を特定のF値にセットして操作する。同製品を日本で取り扱う焦点工房のTA-GE1Bは日本語のマニュアルが付属し、これらの使い方が詳細に説明してある。マウントアダプターは取り扱い説明書すら付属しないものが大半だが、多機能タイプの製品だけに日本語マニュアルの存在はありがたい。