カシオEX-ZR10の「HDRアート」を試す
カシオが2010年11月に発売した「HIGH SPEED EXILIM EX-ZR10」は独自のHDR機能「HDRアート」を初めて搭載した機種だ。今回は、同一シーンを撮り比べてHDRアートの魅力に迫りたい。
HIGH SPEED EXILIM EX-ZR10 |
HDR画像については改めて説明するまでもないと思うが、“ハイダイナミックレンジ画像”のことで通常の写真よりもダイナミックレンジを拡大した画像のことだ。ほかのメーカーのカメラでも同様のダイナミックレンジ拡張機能は搭載しているが、EX-ZR10は一般的なHDR撮影をさらに発展させた「HDRアート」機能を搭載している。
HDRアートは、ダイナミックレンジが非常に広いため絵画のような非現実的な写真に仕上げることができる。これまで、こうした画像を作るには、露出を変えた複数を写真をパソコンで合成処理をしなければならず敷居が高かった。EX-ZR10では、ハイスピード撮影により1度のシャッターで簡単にこのような画像を得ることができる。
HDRアートはシーンモードを選ぶ「ベストショット」の中に入っている。EX-ZR10の場合、本体上面の「HS」ボタンを押すとハイスピード撮影を活用したシーンモードが出る。その中にHDRアートもあるので、通常撮影とHDRアートをすぐに切替えることができる。
本体上部のHSボタンを押すとHDRやHDRアートが選べる画面が出る。AUTOボタンを押せばすぐにオートモードに戻すことができる | HSボタンを押したところ |
作例を見ると、HDRではかなり暗部が持ち上がってダイナミックレンジの広がりを実感できる。こうした描写が好みであれば常用しても良いほどだ。また、このHDRは夜景撮影でより被写体をきらびやかにする効果もあった。一方、HDRアートは彩度とコントラストが強く、肉眼で見たのとは大きく異なる描写が面白い。
なお、連写ん\と重ね合わせ処理を行なうHDRとHDRアートは画角がやや狭くなり、撮影後の処理が3秒程度発生する。さらに画素数がフル画素(1,210万画素)ではなく約1,000万画素に限定される。こうしたウィークポイントもあるが、最新のデジタル技術をスペックだけでなく、表現方法への提案として用意しカシオの考えは興味深い。自分の感性に合うなら、ぜひ楽しみたい機能だ。
2011 International CESでは国内発売未定ながら、HDRアートを搭載する機種として「TRYX」(左)や「HIGH SPEED EXILIM EX-ZR100」などが発表された |
なお、カシオでは11日に写真をHDRアートや絵画のように変換できるWebサービス「IMAGING SQUARE」を開始している。変換サービスは無料で利用できるので試してみては如何だろうか。
■実写サンプル
※作例のサムネイルをクリックすると、リサイズなしの撮影画像をダウンロード後、800×600ピクセル前後の縮小画像を表示します。その後、クリックした箇所をピクセル等倍で表示します。縦位置の作例は非破壊で回転させています。
●通常撮影、HDR、HDRアートの比較
被写体はほぼ順光の条件とあって、HDRではさほど大きな違いが出ていない。HDRアートでは彫像がより克明な描写になり、彩度の上昇と併せて写真と絵画の中間の様な印象を受ける |
半逆光の被写体。HDRでは噴水の影だった部分の明るさがかなり持ち上がっている。HDRアートでは全体に色が濃くなり噴水の模様も浮き出ている |
これも半逆光気味の被写体。通常撮影ではバイクの部分が暗くなっているが、HDRでは照明を当てたかのように明るくなった。HDRアートになると、バイクの金属部分がより金属感を帯びるようだ。 |
ほぼ逆光のため通常撮影では鐘楼と手前の建物内が暗くなっている。HDRでは暗くなっていた部分が一気に明るくなった。HDRでは彩度が濃くなるため抜けが良くなったように見える。空にもグラデーションができてドラマチックになった。 |
ネオンのある夜景。通常撮影ではネオン部分が白トビする一方、樹木などは暗く写っている。HDRではネオンのディテールが戻り樹木もある程度明るく写った。ただHDRでは、暗部を持ち上げたことによるノイズのようなものも見られる。HDRでは彩度が上がり描写が絵画調になることからノイズもさほど目立たなく感じる |
●HDRアート
2011/1/17 00:00