カシオEXILIM EX-H20Gの「ハイブリッドGPS」を試す

Reported by 本誌:鈴木誠

 カシオが11月26日に発売する「EXILIM EX-H20G」の試作機をお借りできたため、GPS関連の機能を紹介する。なお、画面表示などの仕様は変更の可能性がある。

EX-H20G(シルバー)

 EX-H20Gは、GPSの位置情報にモーションセンサーの動き検出を組み合わせる「ハイブリッドGPS」の採用により、GPSの電波を受信できない場所でも自律測位を可能とするコンパクトデジタルカメラ。本体内に地図データと撮影スポットの情報も内蔵し、これまでPCでなければ難しかった「地図+写真」の楽しみをカメラ単体でも味わえるのが最大のポイントだ。

 加えて35mm判換算24-240mm相当の10倍ズームレンズや、約600枚を撮影可能なバッテリー寿命など、まさにオールインワンの旅カメラといった印象だ。店頭予想価格は4万円前後。カラーはシルバーとブラックを用意する。

本体上部にGPSユニットを搭載カメラ本体に地図データを内蔵した
レンズは24-240mm相当の10倍ズーム。15倍相当となる超解像ズームも利用可能

 10倍ズームレンズの搭載や長寿命のバッテリーといったトピックは、2009年7月発売の「EXILIM Hi-ZOOM EX-H10」から継承。外観のイメージやボタン配置もEX-H10を踏襲した。本体サイズはGPSユニットの搭載で厚みと高さが多少増しているものの、本体重量は8g増にとどまっている。液晶モニターは3型23万ドットから46万ドットに変更。屋外での視認性も高まっているように感じた。

一発起動の「地図ボタン」を装備

 EX-H20Gは、本体上面に「現在位置ボタン」と「地図ボタン」を備える。このうち地図ボタンは、撮影/再生のモードボタンのように電源オフの状態から地図モードを一発起動できる。地図データは世界約140都市と、日本12都市の詳細地図を収録した。

 地図モードには「撮影スポットモード」と「ユーザー画像モード」2画面が存在し、本体上面の「地図ボタン」で起動および表示切り替えを行なう。撮影スポットモードには、世界の著名観光地の写真を約1万点収録している。

 地図表示は方向ボタンで任意にスクロールでき、ズームレバーで広域・詳細も変更できる。また、地図ボタンの左隣にある「現在地ボタン」を押すと、画面の中心が現在位置に移動する。いずれの操作もレスポンスがよく、地図のスクロールはカーナビを操作しているような感覚だった。

現在地ボタン(左)と地図ボタン(右)を備える撮影スポットモードで東京都千代田区周辺を表示。屋内で画面を撮影したため、現在地を示す人型のマークがGPS電波の受信不可を意味するグレーになっている
撮影スポットモードを最も広域にしたところ。縮尺はズームレバーで操作する地域によって異なるが、都市部はより詳細に見られる。地名は英語表記も選べるため、日本を旅する英語圏のユーザーにも向きそうだ
撮影スポットモードの再生画面。通常の再生画面と同じ感覚で操作できる。ズームレバーの操作で拡大やサムネイル表示も可能

 ユーザー画像モードでは、撮影画像の撮影地とカメラが向いていた方向を青い丸で示す。また、EX-H20Gは電源オフ時にも10分間隔で移動軌跡を記録する機能を利用でき、赤く小さな点でユーザー画像モードの地図上に表示する。移動軌跡は7日分を保存し、新しいものから1日、2日、3日、7日分を選んで表示できる。

ユーザー画像モード。右に撮影画像が並ぶ。青い円が撮影地と方向を表す撮影した向きも自動記録する
電源オフ時の移動軌跡を表示したところログの表示期間を選択可能。ログデータを取り出す方法は見つからなかった
位置情報はExifに記録するためPCでも利用可能。Google Earthのマップ上に撮影画像を並べてみた

 どちらの地図モードでも、画面上の丸いレーダーの範囲内にある写真を画面右側にリスト表示する。SETボタンを押すと赤もしくは青いカーソルで囲まれた画像を再生する。表示の順番は、レーダーの中心点から近い順(時計回り)としている。

 右下に表示している距離表示は、レーダーの中心点からの直線距離だ。画像リスト内のカーソルを移動したい場合は、設定メニューで該当機能を有効化したうえで「BS」ボタンを押しながらカメラ本体を前後約20度に傾ける。

 電源オフ時も測位するとなると、消費電力も気になるところだ。試作機をGPS機能オンの状態で5日間ほど持ち歩いてみたが、残量表示はフルのままだった。撮影枚数が20枚ほどだったこともあると思うが、測位による電池残量への影響は想像以上に少なそうだ。カシオでは、カメラの状況に応じた測位タイミングや電力制御を行なうことにより、少ない消費電力で位置情報の測位を可能にしたとしている。

「地名スタンプ」も可能に

 本機は約100万件の地名データベースも収録しており、撮影画像に地名をひもづけられる。再生画面において緯度や経度に加え、具体的な地名を表示することができるのだ。

 地名をひもづける手順は、撮影画面で左右ボタンを押すといくつか表示される候補の地名(施設などの名前もある)の中から目的の地名を選択した状態で撮影する。候補には県名、国名なども表示され、具体的な地名の代わりに利用できる。撮影日を画像に書き込むタイムスタンプと同様に、JPEG画像そのものに地名を書き込む「地名スタンプ」も利用可能だ。

 また、再生画面の「地点情報消去」から緯度経度と地名を個別に削除することもできる。撮影画像をインターネット上にアップロードする際、不用意に位置情報を公開してしまわないために便利な機能だろう。

再生画面の詳細データ表示で緯度経度情報を確認できる地名スタンプの箇所を拡大したところ
地名スタンプのオンオフはメニューから設定地名と緯度経度を個別に消せる。地名スタンプは画像に直接書き込むため消せない

新たな旅カメラを定義づける一品

 従来のGPS搭載コンパクトデジカメで利用できた機能は、主に撮影画像に位置情報やランドマーク名を付加するものだった。単体のGPSロガーを併用するよりは手軽にGPSの醍醐味を味わえたが、いずれにしろ地図上に写真を並べる楽しみは、あくまでPCとの連携を前提としていた。

 そこに登場したEX-H20Gは、撮影画像を背面の液晶モニターで他人に見せるのと同じ感覚で、「地図+写真」の楽しさまで共有できるようにした。本機が目指す姿は、いわゆる“旅カメラ”というジャンルにおいて1つの完成系とも言えるのではないだろうか。

【2010年10月28日】「移動軌跡は14日分を保存し、新しいものから1日、2日、3日、7日分を選んで表示できる」との記述を「移動軌跡は7日分を保存し、新しいものから1日、2日、3日、7日分を選んで表示できる」に修正しました。





本誌:鈴木誠

2010/10/28 00:00