パナソニックLUMIX DMC-GF1でショートフィルムを撮る

Reported by近藤勇一

DMC-GF1 / LUMIX G VARIO HD 14-140mm F4-5.8 ASPH. MEGA O.I.S. / 4,000×3,000 / 1/100秒 / F4.3 / 0EV / ISO100 / WB:オート / 18mm
サムネイルをクリックすると、DMC-GF1で撮影した静止画像を開きます。(撮影:野下義光)

 パナソニックが2009年9月に発売したマイクロフォーサーズ機「LUMIX DMC-GF1」は、小型のボディでレンズ交換に対応したデジタルカメラとして登場。有効1,210万画素の4/3型Live MOSセンサー、3型約46万ドットの液晶モニター、内蔵ストロボなどを備える。

 動画の形式は720pとなるAVCHD Liteのほか、比較的PCで扱いやすいQuickTime(Motion JPEG、720p)でも記録可能となっている。従来のシリーズからマイカラーモードが進化し、「ポップ」、「レトロ」、「ピュア」、「シック」、「モノクローム」、「ダイナミックアート」、「シルエット」といった画質設定のプリセットを静止画のみならず動画にも適用可能になった。

 今回のショートフィルムで撮影と編集を担当した映像作家の近藤勇一氏と、撮影のコーディネートを行なった写真家の野下義光氏による対談も掲載した。(編集部)

【ショートフィルム】

 

※掲載したショートフィルムは、DMC-GF1で撮影したHD動画をアップルの動画編集ソフト「Final Cut Pro 6」で編集した。リサイズには、同じくアップルの合成ソフト「Shake 4.1」を使用している。今回はPCでの視聴を考慮してQuickTime形式で撮影した。本編使用カットのマイカラーは、読書シーンが「レトロ」、雪のシーンが「ピュア」、室内のシーンが「シック」、氷のシーン(室内と後半の雪のシーンのつなぎ)が「シルエット」。編集で色調整などは行なっていない。

※掲載したFLVファイルは640×360ピクセル。ビットレートは約2Mbpsとした。そのため、オリジナル映像には無かった画質の低下が見られる点をご了承いただきたい。なお、本編に使用した未加工のオリジナル動画ファイルを記事末に掲載した。

モデル:森仁奈@プロダクションノータイトル
撮影協力:プチホテル ゾンタック(長野県上田市菅平高原)

●AFは十分実用的

野下:前回のキヤノン「EOS 7D」に引き続き、ショートムービー企画の第2回目です。今回はパナソニックの「LUMIX DMC-GF1」です。DMC-GF1のマイカラーモードを使ってちょっとファンタジックな雰囲気を近藤さんに試してもらいました。DMC-GF1の第一印象はどうでしたか?

近藤:今度のカメラは小さいですねぇ。それにとても軽い。前回のEOS 7Dはレンズを着けると普段使っている業務用ビデオカメラと同程度のボリュームだったので、大きさや重さについては違和感はなかったのですが、DMC-GF1はビックリするほどの小ささと軽さです。これで普段仕事ができればとても楽ですね(笑)。

野下:パナソニックというブランドに対するイメージは?

近藤:業務用ビデオカメラは、同価格帯ではソニーも人気がありますが、私はパナソニックを長年愛用しています。DMC-GF1と業務用機にどのような技術的関連があるのかはわかりませんが、パナソニック製であることにはある種の安心感を覚えました

野下:前回のEOS 7Dはピント合わせに苦労しましたが、今回、DMC-GF1の使い勝手はいかがでしたか?

近藤:今回はDMC-GF1にピントは任せてしまったので非常に楽でしたよ。一般的なビデオカメラと同様に常にピントを合わせ続けようとする機能もありますし、それを試す意味でもあえてAF任せにしました。

野下:撮影した素材のピントはいかがでしたか?

近藤:センターフォーカスを前提として撮影していれば、これはこれで十分実用的だと思います。スパっと合うわけではなく多少合うまで間があったり、人物が動いているとちょっと迷うこともありましたが、レンズのボケ足がいいので合うまでの映像に雰囲気があります。むしろ、その適度な緩さが現場の空気感も捉えているようにも思いました。カットによっては、自分でピントを送るより味のある良い動きをしている箇所もありましたよ(笑)。AFロックもできるので要所要所で使いましたが、ピントについては大きな不満はありませんでした」

●マイカラーは後処理で作ろうとすると大変な作業

野下:では今回の企画の主旨でもあるマイカラーはいかがでしたか?

近藤:モードの数も多すぎず少なすぎず、現場で選択するにもちょうど良い数でした。しかも、それぞれが良い感じのエフェクトにまとめあげられていると思います。

野下:素で撮影した素材をソフトウェアの後処理でマイカラー風に仕上げることは可能ですか?

近藤:可能ではありますが、作業が専門的になってくるのでかなり大変ですよ。最初に、「DMC-GF1のピュア風に」などと見本があればアプローチのイメージも沸きますが、全く無の状態から色調整の無限のパラメータの組み合わせのなかからマイカラーみたいにまとまりのある色調に仕上げるのはかなり大変です。

野下:マイカラーをもっと効果的に使う方法はありますか?

近藤:マイカラーという機能名なので色補正のイメージを持ってしまいますが……確かに色補正ではありますが色を補正するという使い方のほかに現場のライティングを生かす設定を選べるという考えのもとで使い分けるとさらに表現の幅が広がるような気がします。

野下:近藤さんの業務で、DMC-GF1の有効な使い道はありそうですか?

近藤:DMC-GF1は基本的にプログラムオートでの撮影となってしまうので、クライアントの要求に細かく応えるというタイプの業務使用には向かないと思います。一応マニュアル撮影の機能もありましたが商品コンセプト上オマケ的で、決してマニュアルで使いやすいわけではありません。でも、業務使用においても特殊な状況においては非常に有効だと思いました。例えば複数の押さえのカメラが必要な時は、業務用機よりはずっと安価で画質は必要十分ですし。水中撮影など操作が難しい環境下での撮影にも有効ではないかと思いました。あるいは短時間でトリッキーな撮影をしたいときも有効だと思います。

野下:そう言えば急に思いついて、木によじ登って上から撮影してましたよね?

近藤:そうなんですよ。これが前回のEOS 7Dのようなカメラだったら、やらなかったと思います。仮に登ったとしても木の上ではマニュアル操作しきれないですし。まさにDMC-GF1の機動性が促した木登りです(笑)。木の上での手持ち撮影にも苦はありませんでした。DMC-GF1はむしろ急な思いつきや現場でのラッキーな偶然には素早く対応できますね。例えば飛行機雲が現れたり急に陽が射したりなど。マニュアルに特化したカメラだと一から十まであれこれ全部自ら設定して撮影に臨むので、予め撮る内容が定まっている場合は適していますが、イレギュラーには強くありません。でもDMC-GF1ならフルオートでもきちんと撮れますし、イメージをマイカラーでワンタッチで変化させることもできます。

野下:そういえば、DMC-GF1の機動性はタフさもありましたね。

近藤:昼間でもせいぜい5度、陽が陰るとすぐ氷点下という環境でしたが、全然問題ありませんでした。

野下:予備電池も3個用意していきましたが、結局終日1個でギリギリ持ちましたしね。

近藤:極端に過酷な環境だとどうなるかはわかりませんが、必要以上に神経質に扱わなくても済むタフさは現場的には楽ですよね。

●映画のスクリーンでも映える画質

野下:どんな人にお勧めしたいカメラですか?

近藤:業務用としては特殊な状況下で活きるサブカメラとして有効だと思いましたが、学生さんや自主映画を撮っているような方にお勧めですね。実は今回、DMC-GF1を使用していて学生時代を思い出したんです。といっても、私の時代は8mmフィルムかHi8でしたが(笑)。当時は細かい技術よりもパッション先行だったり、思いつきで無茶な撮影を試みたりしたものです。そんな青い冒険心を思い出しました。色々なイメージづくりを冒険心を持ってチャレンジするにはDMC-GF1はとても心強い存在になるのではないかと思います。欲を言えば、これでフレームレートが29.97fpsや23.98fpsにも対応してくれるとさらに嬉しいですね。

野下:ゆうばり国際ファンタスティック映画祭では常連出品者の近藤さんですが、今回のショートムービーもデジカメWatchでの配信に先駆けて舞台挨拶で追加上映されましたよね。観客の反応はいかがでしたか?

近藤:本編と同じくハイビジョンでのスクリーン上映だったのですが、上映後にDMC-GF1そのものについて尋ねてきた方もいましたよ。いままで作品そのものについて声をかけて頂く事はあったのですが、撮影機材の話題で声をかけられたのは今回が初めてです。このクラスのカメラで、これだけスクリーン映えできることに驚かれたようですね。あらためて写真のカメラで動画を撮るということへの関心の高さが窺い知れました。

野下:次回は、今回のDMC-GF1と同時並行に素材撮りをしたキヤノンの「EOS-1D Mark IVですね!

近藤:今、鋭意編集中です。次回もご覧になっていただけるとうれしいです。

【オリジナル動画】

サムネイルをクリックすると、本編で使用したカット(一部)のオリジナルファイルをダウンロードします。
DMC-GF1 / 1,280×720ピクセル / 30fps / 43秒 / 約65MB / QuickTime(Motion JPEG)形式





1969年栃木県生まれ。小学生時代に父の8ミリカメラで撮影を始め、怪獣映画監督を夢見る。しかし何故かアイドル映像制作の日々に(苦笑)。女は最強の怪獣と解釈するに至る。アイドルものを中心としたビデオ撮影・編集に加え、企業VPなどのCGを担当するほか、ショートムービーも制作し「ゆうばり国際ファンタスティック映画祭」の常連監督でもある。Webサイト「GIRAFFiLM」はこちら

2010/3/18 12:02