特別企画
10月13日(日)に最接近。紫金山・アトラス彗星を撮影した写真家に撮影のコツを聞いてみた
2024年10月8日 07:00
10月1日(火)未明、夜明け前の東の空に姿を現した紫金山・アトラス彗星。日本時間で最も地球に接近すると言われている10月13日(日)まで残すところ数日となった。
その彗星の姿を10月1日(火)・2日(水)に撮影した風景写真家の館野二朗氏にインタビューを行い、撮影の様子について詳しく聞いた。
大切なのは方角と時間
まず事前準備として、彗星がどの方向に現れるかを知る必要がある。国立天文台によると、最も地球に最接近する10月13日(日)以降は、18時前後の西方向の低い空に現れると予想されている。そういった事前情報から撮影場所などを選定しなくてはいけない。
今回、館野氏が撮影場所に選んだのは長野県と群馬県の県境にある渋峠だ。標高2,100m近い渋峠では、町の光や大気の影響も少なく、彗星がよりクリアに写るだろうと判断したという。標高が高いため、彗星が低い位置に現れても撮れる確率が上がるといった理由もあるそうだ。
彗星の方角についてはコンパスを使用して撮影場所をチョイス。出現時間や詳細な方角は、スマートフォンのアプリに加えて、弊社インプレスから発売されているムック本「紫金山・アトラス彗星(C/2023 A3)完全ガイド」を参考にしたという。「お互いのツールを併用するとさらに効果的です」と館野氏はアドバイスする。
スマートフォンアプリは「Star Walk 2」もしくは「Comet Book」(いずれもiOS・Android対応)を利用したという。
10月1日(火)および翌2日(水)の撮影では、彗星が現れた時間帯は午前4時30分頃だった。しかし天体現象ということもあり、決められた時間というものはないと館野氏は話す。
被写体を見つけるまでが勝負 撮影はスマートフォンでもOK
「彗星を目視するのはほぼ無理です」と話す館野氏。周囲に彗星狙いのカメラマンがいる場合は「周りがざわつくのでわかりやすいと思います」とのこと。そんな中、露出を変更していくことで彗星の尾が発見できると話す。
機材は主にミラーレスカメラの「EOS R5 Mark II」に、交換レンズは「RF 70-200mm F4 L IS USM」を使用。彗星は想像以上に大きく空に広がるため、臨機応変に対応できるズームレンズが便利だという。彗星の尾を入れつつ風景を絡めて撮影しようとすると、70mmでは画角が足りないと感じるほどの大きさだったそうだ。
「撮影のコツは、アンダー目の露出で始めることです」と館野氏は説明を続ける。
- コンパスを使用して方角を確認する
- 露出時間は4秒以下に設定する(長時間露光すると尾が消える)
- 露出を変えながら連続撮影することが重要
- F4でも見つけるのは難しいので、根気強く撮り続けることが大切
「空が明るくなると見えにくくなります。適正露出で撮ると彗星が見えないので、アンダー気味の設定が重要です」と館野氏は強調する。しかし彗星の尾を見つけることができれば、撮影自体はそこまで難しくないという。撮影可能な時間は約20分と短く、時間との勝負になる。
また、月の明るさにもそこまで影響されることはなかったとのこと。逆に写真の中のアクセントとなり、いい効果をもたらしたと話す。
スマートフォンでも撮影可能かという質問に対し、「三脚は必須ですが、長時間露光が必要ではないのでスマートフォンでも十二分に撮影できる可能性はあります。最も明るくなる時期であればなおのことですね」と答えた。
撮れるチャンスは残すところわずか
国立天文台によると、10月12日(土)以降に再度観測できるチャンスがやってくる。地球への最接近は日本時間で10月13日(日)とされている。最も観測のしやすい日程は10月16日(水)〜10月20日(日)頃としている。明るさも増すため、かすかではあるが肉眼でも見られる可能性があるという。
紫金山・アトラス彗星はゆくゆくは太陽系の外に出て行き、2度と戻らないと推測されている。10月いっぱいが撮影する最後のチャンスとなる。
館野氏は2020年7月に姿を現した「ネオワイズ彗星」を振り返り、「当時と比べてデジタルカメラの進化により、誰にでも天体写真が挑戦できるようになりました。ぜひ、この稀有な天体ショーを自分のカメラで記録してみてください」と話してくれた。
【2024年10月15日】アトラス彗星を写した写真の撮影時刻の表記が1時間前にずれていたため修正しました。お詫びして訂正します。