特別企画
写真画質はSC-PX1Vだけじゃない! もう1つのフラッグシップA3ノビプリンター
写真家・小林淳がエプソン「EW-M973A3T」を選ぶ理由
2021年3月19日 17:00
写真家がプリンターを選ぶ際、A3ノビのラージフォーマットに対応しているかが、1つの大きな基準となる。従来、A3ノビの写真画質というと、ハイエンド機であるプロセレクションSC-PX1Vが真っ先に候補に挙がっていた。
しかし、写真愛好家にとってうれしい、新たな選択肢となる機種が登場した。エプソンEW-M973A3Tは、A3ノビサイズの用紙に対応しながらもスキャンとコピー機能を搭載した良いとこどりの複合機タイプ。写真家のみならずハイアマチュアユーザーにぴったりの本機の魅力を写真家・小林淳が紹介する。(編集部)
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岐阜県生まれ。一級建築士として働きながら、家族の記録と地元の魅力を伝えるためにカメラを持つ。近年では行政との共催で写真展を開催。東京カメラ部201910選
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理由1:最新インクが美しい作品プリントを実現
EW-M973A3Tで使用するのはエプソン最新のClearChrome K2 Plusインク。顔料のマットブラック、染料のフォトブラック、グレー、シアン、マゼンタ、イエローの6色による鮮やかな色彩再現が写真を美しい作品に仕上げてくれる。
理由2:エコタンク(70ml大容量)搭載でランニングコストを大幅シェイプ!
L判プリントは1枚約7.6円、A4モノクロ文書は約0.7円というハイコストパフォーマンスを誇るプリンター。インク代に縛られることなくプリント作業が行えるので、色みの調整を追い込んだり、仕上がり別に何通りかプリントしたりして後から最高の1枚をチョイスするなど、写真家の制作スタイルに寄り添ってくれる。
理由3:Wi-Fi対応で事務作業もこなせるA3ノビ複合機
建築士という仕事柄、書類などをスキャンしてPDFデータとしてパソコンに取り込み、先方にメールなどで共有したいシーンはよくある。在宅勤務やテレワークの機会が増えている中で、スキャン機能を搭載した複合機は、自宅に必需品だと感じている。
写真用紙クリスピア<高光沢>:鮮やかに美しく豊富な色彩情報
光沢用紙のプリントを手に取って率直に感じたのは、これまで使用していたColorioシリーズよりワンランク上の仕上がりのプリント作品が制作できるということ。
この「彩色千輪菊」と呼ばれる花火はその名のとおり、彩り豊かで写真家に人気の花火だ。夜であり、さらに光の情報量が多い花火の写真は、ハイライト部分とシャドウ部分の描写が重要になる。
EW-M973A3Tでプリントしてみると、花火や都市夜景のハイライト部分が鮮やかな色彩で表現できており、夜空や街の暗部は引き締めつつも黒つぶれせず、階調をしっかりと表現することができているので奥行きのある1枚に仕上げることができた。
花火部分の赤や青などの彩度の高い色彩は、一般的にこってりとした仕上がりになりがちだが、EW-M973A3Tの場合は輝きのある発色となり、繊細でシャープに表現されたことにも驚いた。これは染料インクの発色の良さと写真用紙クリスピア<高光沢>の高い光沢性で表現できたものだ。
染料5色インクが実現する鮮やかで豊かな色再現
特にグリーンの発色が良く、桜の花の優しくほのかなピンク色の発色がとても上品。桜の花や線路脇の生える草に良い光が当たっているが、それらのディテールは細かく繊細に表現している。高画素データのポテンシャルを十分に引き出してくれるインクだと言える。
Velvet Fine Art Paper:黒の締まりが浮かび上がらせる奥行き感
経験上、モノクロ写真をアート紙に表現するのは非常に難易度が高く、これまでは特に暗部の表現に苦戦してきた。モノクロ写真のプリントは暗部の階調が最も重要となるが、EW-M973A3Tは深くてコクがある黒色を出力し、繊細でなめらかな階調を表現してくれた。これは顔料のマットブラックインクによる効果が大きい。
上の作品は、廃墟のような雰囲気のビルの前を人が歩くシーンを正面から撮影したもの。平面的な構図の中に立体感が生まれたのは、暗部が引き締まって階調豊かに黒色が再現されているから。光の当たっている部分と影の部分に注目してみると、まるで3D画像をみているかと思うほどだ。
モノクロ写真とVelvet Fine Art Paperの相性も抜群で、より落ち着いたトーンでシックな仕上がりが大変気に入っている。長年苦戦してきたモノクロの悩みが解決され、自分のプリントテクニックがワンランクアップしたように感じた。
顔料ブラックと染料グレーが再現する黒の締まり
黒つぶれが起きやすいシャドウ部の階調表現に注目してみると、当たっている光の強さによって変化するグラデーションが忠実に再現できていることに驚く。よく、モノクロ写真は階調で見せると言うが、文句ない階調再現が画面の中に立体感を生み出してくれている。