おもしろ写真工房
「レンズのないカメラ」を試す!
絞りだけでも写真は写るのか?
Reported by上原ゼンジ(2014/1/16 08:00)
ちょっと前の話だが、ネットで「レンズのないカメラ」の記事をみかけたことがあった。そのカメラの仕組みはよくわからないが、レンズなしの絞りだけで撮影する実験をしてみた。さらに自作の絞りを使った撮影にもチャレンジ。
レンズレスカメラの研究をしているのはベル研究所だ。理屈は全然分からないが、“レンズなしで写る”という部分に引っかかった私は、とりあえず一眼レフのレンズを外し、レンズなしで撮影をしてみた。結果、像は全然写らないですね(笑)。でもたとえばディスプレイに黄色を映して撮影すれば、黄色く写るし、赤い画面を表示すれば赤く写る。まあ、ぼわっと色は感知するにしてもセンサーに光が到達するまでに光が混じってしまって、きちんとした像にはならないということなんでしょう。
だとしたら、センサーまで光を導いてやったらどうなるだろう? たとえば黒いストローを束ねてセンサーまで突っ込むとか、あるいはグラスファイバーを突っ込むとか。そうしたら多少イメージの記録ができるかもしれない。ただしそんなことをしたらセンサーを傷つけてしまったりしそうで、あまり気乗りのしない実験ではある。
あとはレンズを外した穴を小さくする方法だ。ピンホールにすればはっきり写ることはわかっているが、はっきり写らなくても構わなければ、“ただの穴”でもイメージは写るはず。いったいどれくらいの穴であれば写るのだろうか?
とりあえず身近な穴を空ける道具と言えば穴あきパンチがある。黒い紙にパンチで穴を空けてみて試してみた。それが下のような写真。いちおう写ってますね。おめでとうございます。
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でももう少し小さい方がはっきりするかな。しかしはっきりを求め過ぎても面白くない。せっかくただの「ホールカメラ」なんだから「ピンホールカメラ」にしてしまってももったいない。
別に「ピンホールカメラ」に恨みはないんだけど、デジタルでのピンホールカメラにはあまり魅力を感じていない。ピンホールカメラは印画紙を使ったりというアナログな部分と組み合わせることによって、より魅力的になるという気がする。それに以前試した時に、センサーのゴミがかなり目立ち、ちょっと引いてしまったのだ。ピンホールカメラというのは絞りをすごく絞ったのと同じ状態なので、通常は目立たないようなセンサー上の小さなホコリを顕在化させてしまうのだ。
このホールカメラでは穴の大きさがポイントになるが、簡単に穴の大きさを変える方法としてカメラの絞りを使ってみることにした。用意したのは「虹彩絞りユニット/muk i30mm」(エムユーケイ カメラサービス横浜関内)という製品。これは絞りだけが販売されてるんだけど、絞り羽根の枚数が多くて(12枚)、きれいな円形になるというのがポイント。何に使うための製品かよくわからないけど、こういう実験目的だといろいろ遊べそう。
ただ、この絞りをボディに付けただけではホコリが侵入してしまうので、一応ガラスのフィルターの上に装着する。それにしてもレンズなしで絞りだけで撮影するというのは男らしくていいな。なんか念写しているようでもある。このレンズなしの絞りだけで撮影する方法というのは写真の歴史の中であったのだろうか? なければ勝手に「アイリスカメラ」(虹彩写真機)と名付けてみたいんだけど、どんなもんでしょうか?
宙玉で丸くボカしたい
絞りの実験をしたついでに、もう1つ試したかった実験をしてみた。それは宙玉(そらたま)にきれいな円の絞りを付けて撮影してみること。宙玉というのは、ひじょうに近いところにピントを合わせるので、玉の周囲のバックは必ずけっこうボケることになる。
その時に画面内に光る部分があれば丸いボケになるが、そこには絞りの形が反映されるので、絞り羽根の数が少ないとカクカクしたボケになってしまう。絞りを開ければいいのだが、あまり開けすぎると玉の輪郭もボケてしまうのだ。
そこで丸い穴のワッシャーを使って撮影をしてみた。ワッシャーを使ったのは丈夫できれいな穴だからだ。
宙玉を使った撮影では、絞り値で球の輪郭のくっきり度も変わってくるので、穴の大きさはけっこう重要なのだ。ただこれでちょうどいいサイズを突き詰めれば、あとはワッシャーを使った固定絞りでの撮影でもいいかもしれない。
それから、ただの円形ではなく、クラフトパンチやレースのシールなどを使っていろんな形状の絞りも作ってみた。これは想定外の描写になった。特にレースの穴で撮影した写真の奇妙な描写には何か可能性を感じる。
いろんな形のボケを作ってみる
最後は星型やハート型の絞りを作って、普通のレンズに取り付ける方法の紹介。こういうやり方は以前から知られているが、自分でやってみようとは思っていなかった。はっきり言えば写真の中にハート型のボケを入れるなどという軟弱なことをやりたいと思わなかったからだ。
でもやってみたらけっこう楽しい!。食わず嫌いはイカンな。やっぱりなぜこんなふうになるんだろう? という不思議さがあるし、きれいにボケさせるためにはそれなりに試行錯誤も必要だからだ。まあ、今後ハートボケおじさんとして突き進んでいくことにはならないと思うけど、これももう少しテストをしてみたいなという気にはなった。
この工作の不思議なことに1つは、レンズの前にこのような絞りを付けて、なぜ写りこんでしまわないのとかいうことだ。やってみてわかったのは、確かに絞りが写ってしまう場合もあるが、写り込まないようにするためには、絞りをなるべくレンズに近づけること。また広角系よりも望遠系の方が写り込みにくい。そして穴は大きいほうが写り込みにくいといったことだ。
しかし、この大きさは絞り値に相当するので、被写界深度や描写に影響を与える。という感じで、その組み合わせ方というのはなかなか難しいのだ。
ただ黒い紙に穴を空けるだけであれば、簡単に工作可能なのでぜひ試してみてほしい。最適な穴のサイズなどはレンズによっても変わってくるので、とりあえずはフリーハンドでカットしてみればいいと思います。