【新製品レビュー】オリンパスSZ-30MR(特殊機能編)
オリンパスのコンパクトデジタルカメラは、「Tough」、「Smart」、「Creative」といった3つのキーワードに沿ったラインナップを揃えている。例えばToughなら「TG-810」、「TG-610」、「TG-310」。Smartなら「VR-320」、「VG-140」、「VR-110」。そしてCreativeは「XZ-1」、「SZ-20」、「SP-800UZ」などだ。
数多いラインナップの中で、「SZ-30MR」だけに搭載されているのが、画像処理エンジン「Dual TruePicⅢ+」。Dualの名が示す通り、TruePicⅢ+が2系統搭載されているという贅沢なもので、それを活かした機能が「マルチレコーディング」である。前回の基本性能編で簡単に紹介した「フォト・イン・ムービー」のように、フルHD動画の撮影中に1,600万画素の静止画を同時に記録できたり、特殊効果などを施した画像と通常の画像が同時に撮影できたり、といったことが行なえる。
各種のマルチレコーディング(マルチレックとも呼ぶ)撮影は、モードダイヤルを「MR」に設定したうえで、ファンクションメニュー操作で撮影機能を選択する。
ではマルチレコーディング機能を順に見ていこう。
- 作例のサムネイルをクリックすると、リサイズなし・補正なしの撮影画像をダウンロード後、800×600ピクセル前後の縮小画像を表示します。その後、クリックした箇所をピクセル等倍で表示します。
■マルチフレーム
画像とその一部を切り出した画像。それらを同時に記録できるのが「マルチフレーム」である。つまり、ワイドとズームの両方を一度に記録するもので、記録画像をそれぞれオリンパスでは「ワイド」と「アップ」という名称で説明している。フル画素のワイドに対し、アップは500万画素以下の「L」と300万画素以下の「S」から選択できる。また、マルチフレームは、静止画だけでなく動画(720p以下)でも利用できる。
モードダイヤル「MR」時のファンクションメニューで「FRAME」を選択 |
アップにする範囲を2種類から選べる。これはL | こちらはS |
アップの位置は手動で設定できる。さらに被写体を自動追尾することで、アップにする位置をリアルタイムで変えることも可能である。自動追尾の方が構図が変わっても主要被写体をアップにできて便利かと思ったが、使ってみると、狙った場所からずれることも結構あった。
追尾設定時。枠内中央のAFターゲットマークにアップで撮りたい被写体を合わせ、OKボタンを押すと追尾が始まる。フレームサイズはL | こちらは手動で設定している状態。フレームサイズサイズは同じくL |
小さめの被写体が遠くにあるので、600mm相当でも大きさがいまいち……そういうときにもマルチフレームが威力を発揮する。
マルチフレーム:ワイド / SZ-30MR / 約6.5MB / 4,608×3,456 / 1/200秒 / F6.9 / 0.0EV / ISO400 / WB:晴天 / 108mm | マルチフレーム:アップ(フレームサイズL) / SZ-30MR / 約1.6MB / 2,560×1,920 / 1/200秒 / F6.9 / 0.0EV / ISO400 / WB:晴天 / 108mm |
■マルチサイズ
マルチサイズは、画像サイズ(画素数)の違う静止画や動画撮影を2つ同時記録するもの。静止画の場合、メインが200万画素以上、サブが100万画素からVGA(640×480ピクセル)・QVGA(320×240ピクセル)から選択する。動画の場合は、メインのサイズは1080p(1,980×1,080ピクセル)/ノーマルか720p(1,280×720ピクセル)の設定になり、サブは640×320ピクセルか320×180ピクセルになる。
もちろん、撮影後にパソコンでリサイズすることも可能だが、最初から「メインとサブ、どちらのサイズも必要」とわかっている場合なら、その作業の手間が省けるマルチサイズ機能は重宝するだろう。プリントや観賞用はメインサイズで、メール添付やブログ用はサブサイズといったときだ。
マルチサイズで選べる小さい方のサイズは、静止画では100万画素まで。動画は360pまでとなる。ちなみに、動画の方の選択肢は360pと180pの2つなのだが、ファンクションメニュー上には、その2つが合わせ鏡のように3つ表示される。この表示スタイルは、ほかの項目(選択肢が2つの項目)にもあてはまる。
マルチサイズの説明。 | 同時記録の静止画サイズを指定できる |
マルチサイズ(フル画素) / SZ-30MR / 約7.2MB / 4,608×3,456 / 1/80秒 / F3 / 0.0EV / ISO80 / WB:オート / 4.5mm | マルチサイズ(VGA) / SZ-30MR / 約7.2MB / 640×480 / 1/80秒 / F39 / 0.0EV / ISO80 / WB:オート / 4.5mm |
■マジックフィルター+オリジナル
独特な演出(フィルター効果)を加えた写真が撮影できる「マジックフィルター」。これは従来機種にも「ポップ」、「ピンホール」、「フィッシュアイ」、「スケッチ」、「ウェディング」、「ロック」が搭載されていたが、SZ-30MRには新たに「水彩」と「クリスタル」を加えた計8種類のマジックフィルターが搭載されている。一部を除くマジックフィルターは、静止画だけでなく動画記録時でも使用できる。
さらに、マルチレコーディングにより可能になったのが、マジックフィルターのオンオフの両方を同時撮影できる「マジックフィルター+オリジナル」である。マジックフィルターと同様、静止画と動画の両方で使用できるが、「クリスタル」、「ウェディング」、「フィッシュアイ」は動画撮影には使用できない。
マルチレコーディングモードでマジックフィルター+オリジナルを選択 | マジックフィルターを選択 |
なお、モードダイヤル上には、マジックフィルター単独のモードもあるので、マジックフィルターオフの写真が必要ない場合は、こちらのモードを選択してもいいだろう。ただし、マジックフィルターが適用された画像をあとから通常の写真のように加工するのは極めて難しい。ということで、ボク自身は保険の意味も込めて、「マジックフィルター+オリジナル」で撮影することが多かった。
マジックフィルター+オリジナルで撮影した画像は、再生時にグループ画像として表示される。ズームレバー操作で1枚ずつ展開して表示でき、通常の画像と同様、撮影情報を表示させることも可能だ。 |
■回想フォト
「回想フォト」は、シャッターボタンを押した(静止画を撮影した)瞬間の前後数秒間が、自動的に動画としても記録される機能である。記録時間はファンクションメニューで設定でき、シャッターボタンを押す前は7秒、5秒、3秒から選択できる。シャッターボタンを押した後の記録時間は3秒、または0秒となっている。
なお、ほかのマルチレコーディング機能と違い、モードダイヤルから「MR」(マルチレコーディング)を選ぶのではなく、専用の「回想フォト」ポジションに合わせる。
回想フォトは、静止画撮影時の前後の時間を自動的に動画で記録する機能 | レリーズ前後の動画記録時間を指定できる |
記録可能な動画サイズは、VGA(640×480ピクセル)か360p(640×320ピクセル)。撮影した動画をカメラ再生すると、シャッターボタンを押した瞬間、サンプリングされた後付けのシャッター音がなると同時に、画面全体が白くなる。ただしパソコンで動画を再生すると、画面全体が白くなることはない。
静止画を撮影する際、その前後の映像を気にすることはないだろう。だから、回想フォトの動画をチェックすると、シャッター直前のズーム動作が写っていたり、見苦しくブレていたりする。シャッターの前後に動画を意識するのも良いが、あくまでも静止画のオマケのようなモノだから、そんなに気を使わなく良いだろう。
- 動画作例のサムネイルをクリックすると、未編集の撮影動画をダウンロードします。再生についてのお問い合わせは受けかねます。ご了承ください。
回想フォトで記録された動画。回想フォト / SP-30MR / 640×480 / 5.2MB / H.264 |
回想フォトで記録された静止画。回想フォト / SZ-30MR / 約6.7MB / 4,608×3,456 / 1/400秒 / F5.3 / 0.0EV / ISO80 / WB:オート / 22.9mm |
■高速連写
裏面照射型CMOSセンサーを搭載しているモデルらしく、高速連写も得意とする。「連写1」、「連写2」、「高速連写」の3モードが搭載されている。
「連写1」は約1.7コマ/秒なのでパっとしないが、「連写2」は約7コマ/秒と速い。どちらもフル画素1,600万で撮影が可能だ。
ただし、「連写2」で撮影できるのは最大で約5コマ。つまり、シャッターを押してから1秒に満たない時間で、連写が終了してしまうのである。だから、この連写モードで動く被写体をタイミング良く撮影するのは、けっこう難しい。
その点、さらに高速な「高速連写」だと、約15コマ/秒の速度で最大で約70コマもの連写が可能。これなら、シャッターを押してから4秒以上も撮影できるので、動く被写体に対して余裕を持って撮影に望めるだろう。
約7コマ/秒の連写2 | 高速連写は約15コマ/秒。ただし記録画素数は500万以下 |
だが、「高速連写」の画像サイズは500万画素以下に制限され、画質的にもかなり粗っぽくなってしまう。「高速連写」はコマ速や連写枚数の満足度が高いだけに、その画質面での不満が実に惜しい。また、感度の手動設定ができないなど、連写2よりも自由度が低い。サンプルも被写体がぶれてしまった。
さらに特殊なのが、「オート分割連写」である。これは、シャッターを押し続けている間、最大で16コマを均等に記録する機能。恥ずかしながら、最初聞いたときはピンとこなかった。実際に撮影することで、ようやくその意味が理解できた。
シャッターを押し続ける時間が短かいとコマとコマの間隔(時間経過)が短くなり、時間が長くなるとコマとコマの間隔も長くなる。つまり、前者の方が、より高速で連写した結果が得られるのである。一般的に、チャンスの瞬間(時間)が短いほど、わずかなシャッターのタイミングのズレも失敗につながってくる。そう考えると、この機能は理に適っているといえるだろう。
オート分割連写。シャッターボタンを押している時間にあわせて連写速度を変える機能 |
■パノラマ撮影、3Dフォト
特殊機能といえば、最近はカメラを振るだけで自動的にパノラマ写真が作れる機能が思い浮かぶ。その先駆けはソニーの「スイングパノラマ」だが、現在ではカシオや富士フイルムのカメラなどにも搭載されている。
SZ-30MRにも同様の機能として、「ひとふりパノラマ」が搭載されている。モードダイヤルをパノラマモードに合わせて、カメラを振る方向を選び、矢印方向に向かってゆっくり振っていく。このあたりの仕様や作法も、他社の同様機能とそう変わりはない(振る速度の加減は違うが)。
さらに、ほかのパノラマ撮影モードも搭載されている。撮影後に表示されるガイド枠を目安にして構図を決めて3コマ撮影し、それからカメラ合成がおこなわれる「マニュアル」モード。そして、撮影した画像をパソコン用ソフトウェア(付属のCD-ROMからインストール)で合成してパノラマ写真に仕上がる「PC」モードである。
ひとふりパノラマには、撮影方法として「オート」、「マニュアル」、「PC」が用意されている |
だが、ガイド枠を目安に撮影するのは意外と難しい。半透明のガイド枠が見えにくかったり、レンズのアングルやパースの関係で、ガイド枠の像と実像がうまく重ならなかったり……というケースがけっこう多いのだ。ボク個人としては、画質的には少し不満もあるが「やっぱり、ひとふりパノラマの方が簡単で使いやすいなぁ」という印象を受けた。
立体的に見える写真が撮れる「3Dフォト」も、最近のカメラらしい特殊機能といえるだろう。「3D撮影って何だか難しそう……」という先入観もあるが、実際の撮影方法はいたって簡単。モードダイヤルを「3D」に設定して、シャッターを押した後にカメラを横にスライドさせるだけである(2枚目を撮影する方法は、オートとマニュアルの2種類がある)。撮影データとしては、3D用のデータ(MPOファイル)と、JPEGの両方が記録される。当然撮影した「3Dフォト」は、SZ-30MR本体では立体的に見ることができない。3D対応のテレビやパソコンなどで観賞する必要がある。
一見すると自然だが、上手くつながっていない箇所もある。ひとふりパノラマ / SZ-30MR / 約1.2MB / 4656x720 / 1/320秒 / F3 / +0.3EV / ISO80 / WB:オート / 4.5mm |
■まとめ
以上のようにSZ-30MRは、ほかのカメラとはひと味違う“マルチプレーヤーぶり”が特徴である。
いずれも画像処理エンジンを2つ搭載しているおかげなのだが、それが災いしてか、バッテリーの持ちは芳しくない。今回は午後から撮影を開始という日が多かったのだが(もちろん、フル充電の状態で)、そのすべての日で日没を待たずしてバッテリーが空になってしまった。
前編(基本性能編)で「バッテリーの容量不足を感じてしまう」と述べたが、充電式バッテリー「LI-50B」の容量自体は、このクラス(スリムタイプのバッテリー)としては特に少ない訳ではない。だが、光学24倍ズームを駆動させ、画像処理エンジンをダブルで稼動させるSZ-30MR用のバッテリーとしては非力に感じるのである。
ということで、このSZ-30MRの機能を存分に楽しむためには予備バッテリーが欠かせない。最低でも1個、できれば2個の予備バッテリーが欲しくなる。
ストロボやグリップ部の出っ張りが、やや“一眼レフカメラっぽい”が、手のひらにすっぽり収まるようなコンパクト&軽量ボディ。そんなカメラに、広角25mmから超望遠600mm相当をカバーする光学24倍ズームレンズを搭載しているのだから、画角的にはかなり満足度が高い。
しかも、静止画もフルHD動画も、予想以上にクォリティが高く、手ブレ補正の精度が高い為か、超望遠撮影時の手ブレもあまり目立たなかった。
気軽に高倍率ズーム撮影を楽しみたいけど、写真や動画のクォリティにはこだわりたい。SZ-30MRは、そんな欲張りな人にもオススメの高機能&高性能コンパクトモデルである。
2011/6/3 00:00