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レビュー:クリエイター向けデスクトップPC「DAIV KM-I7G7T」

RTX 5070 Ti搭載「NVIDIA Studio」認定のミニタワーモデル

ミラーレスカメラで本格的な動画撮影ができるようになって久しいが、「そろそろ本格的な動画編集PCが欲しい!」と考えている人もいるだろう。また、Windows 10のサポートが今年10月に終了するのを控え、これを機に古いPCの買い替えを考えている人も少なくないことと思う。

今回、そうした本格的な動画編集にも対応したマウスコンピューターのクリエイター向けデスクトップPC「DAIV KM-I7G7T」を借用したので、短時間ながら使い勝手などをレポートしたい。価格は41万9,800円からとなっている。

「GeForce RTX 5070 Ti」で4K編集もラクラク!

本機はマウスコンピューターのクリエイター向けブランドである「DAIV」シリーズの1台だ。DAIVのミニタワーとしてはハイスペックな位置付けとなっている。「NVIDIA Studio認定PC」と謳っており、クリエイターに適した性能や機能を提供するとのことだ。

DAIVミニタワーのラインナップ。濃いブルーが本機(出典:マウスコンピューター)
内部

現在の動画編集ソフトはGPUの性能が重要になっている。GPUのうちクリエイターに人気なのは、NVIDIAの「GeForce」シリーズを搭載したものだろう。多くのクリエイティブ系ソフトがNVIDIA製GPUに対応しているのに加え、クリエイティブ作業専用の「NVIDIA Studioドライバー」も用意されているからだ。

Studioドライバーはゲームなどで一般ユーザーが使うドライバーとは異なり、主要なクリエイティブソフトでの動作検証なども経た安定性重視のドライバーとなっている。

これらのソフトを使うならGeForce搭載機を選びたい(出典:マウスコンピューターWebサイト)
本機にはStudioドライバーもプリインストールされ、初回起動時に選択できる。

本機のGPUは「GeForce RTX 5070 Ti」で、GeForce 50シリーズの中では「中の上」といった位置付けだ。なおDAIVシリーズのミニタワーのうち、GeForce搭載モデルとしては本機が最上位モデルとなる。

大型グラフィックボードだが、サポートバーで補強されており、自重による変形や接触不良などを防ぐ

GeForce 50シリーズは今年登場した最新のシリーズになるが、動画編集では欠かせないエンコード/デコードの機能が向上している。新たに4:2:2フォーマットのH.264/H.265コーデックに対応したため、プロレベルの高画質フォーマットをGPUで高速に処理できるようになった。

今回はBlackmagic Designの動画編集ソフト「DaVinci Resolve Studio」を使って、ニコンのミラーレスカメラ「Z8」の動画を編集してみた。

DaVinci Resolve Studioでもしっかりグラフィックボードが認識されていた

エンコードの負荷が比較的高いH.265形式(4K、60P、4:2:0、10bit)のクリップを同時にどれくらい再生できるか試したところ、ややカクつくが編集作業ができるレベルとしては5クリップまでOKだった。30Pでよければさらに余裕が出るということだ。

5つの4Kクリップを同時に再生できた

そして、クリエイティブソフトを使う上でGPUと同じくらい重要なのがVRAM(ビデオメモリ)の容量だ。動画編集では、特に4Kなど高解像度のクリップでグレーディングや合成などの処理をすると、VRAMを多く消費する。

筆者の経験でも、VRAMが少ないと処理に非常に時間がかかったり、場合によってはエラーが出たりすることもある。その点、本機のVRAM容量は16GBあり、ほとんどの処理に対応できるだろう。今回、Z8で撮影した4Kと8Kのクリップでグレーディングやノイズリダクションなどを試したが、VRAMのエラーもなく処理できた。

8Kクリップでグレーディングを試したところ、パラメータの変更がほぼリアルタイムでプレビューに反映された
ベンチマークソフトの「Blackmagic RAW Speed Test」ではCPU、GPUとも全項目をクリアした

設置しやすいミニタワー型なのも◎

CPUはIntelの「Core Ultra 7 プロセッサー 265」。Core Ultraは同社最新のシリーズで、本機のCPUは、現行のIntel製CPUとしては上位モデルが搭載されている。CPUクーラーは水冷式で、静かなのがよい。作業中にファンやポンプの動作音はほとんど聞こえないほどだった。

CPUは水冷式を採用

メインメモリは32GBと容量も十分。メモリは最新規格のDDR5タイプを採用している。さらに必要なら64GBにカスタマイズできる。

ストレージは2TBのSSD(M.2、NVMe Gen4×4)。大きなサイズとなるクリエイティブ系ソフトをいくつかインストールしてもかなり空きはあるので、動画編集の作業用ドライブとしても使える。SSDは4TBや8TBにカスタマイズしたり、台数を増やすことも可能だ。

ストレージは読み書きとも5GB/s以上と十分な速さ

また本体には3.5インチのシャドウベイが1つあるので、大容量のHDDを追加して素材置き場にするといったことも可能。必要なら最初からHDD(最大8TB)を搭載するオプションもある。

インターフェースはUSB3.1(10Gbps)ポートをケース上面に1つ備えており、外付けSSDからの素材取り込みなどに使いやすい。そのほかUSB3.0(5Gbps)ポートを計9個、Thunderbolt 4のポートを背面に1つ備えている。このあたりもクリエイティブユースで不足はないだろう。加えてWi-Fi 6Eモジュールを内蔵しているので、配線不要でネットワークが使える。

上部のポートはスライド式のフタ付き
背面のインターフェース。Thunderbolt 4のポートも見える
グラフィックボードの出力はDisplayPort×3、HDMI×1。いずれも8K対応となる

DAIVのデスクトップPCは、一般向けタイプとしてはミニタワータイプとフルタワータイプがあり、本機はミニタワー型となる。約215×465×380mmと、一般的なフルタワーケースより一回り小さい。設置性の良さも利点だ。

パフォーマンスと安定性を兼ね備えた1台

以上ざっと見てきたが、やはり高いパフォーマンスが印象に残った。動画編集も4Kが当たり前になった今、プロキシファイルが生成不要ですぐに編集できるのはタイパの点でもありがたいもの。さらに8Kクリップもそのまま扱える点で将来性もある。

そしてPCは性能も重要だが、それも安定性があってのこと。電源ユニットには850Wと大容量のタイプを搭載しているので、高負荷時にダウンするといったことはないはずだ。また、マザーボードはASRock製、グラフィックボードはASUS製と、いずれも著名なブランドの製品が採用されていた。このあたりも安心できるポイントだろう。

底部には取り外して水洗いできる防塵フィルターを装備している

内部のシャドウベイ数など拡張性ではフルタワー型に及ばないものの、インターフェースも充実しており、動画編集を快適にしてくれるだろう。動画編集マシンを検討しているならチェックしたい1台だ。

1981年生まれ。2006年からインプレスのニュースサイト「デジカメ Watch」の編集者として、カメラ・写真業界の取材や機材レビューの執筆などを行う。2018年からフリー。