メルセデス・ベンツのレンタカーで北海道を巡る!

写真家・萩原俊哉、初めてのメルセデスで風景撮影の旅に出発

積丹、小樽、美瑛……北の大地をGLA180で駆ける!

まだ入梅前のとある日、一通のメールが届いた。その内容とは「メルセデス・ベンツで北海道取材をしませんか?」というもの。なに、北海道取材! それもメルセデス・ベンツで!! しばらくして正式に取材することが決まり、意気揚々と北海道に乗り込むことになったのは6月上旬のことだった。

いつもなら北海道へはフェリーで渡航するのだが、今回は飛行機でのアクセスだ。軽井沢始発の新幹線に乗り込み、新千歳空港に降り立ったのは午前11時を回ったころ。今回の取材は、北海道へ渡って撮影をすることはもちろんだが、メルセデス・ベンツに乗って北海道内を運転する楽しみがある。

輸入車ディーラーのヤナセがニッポンレンタカーと期間限定でコラボレートしている「ヤナセ プレミアムカー レンタル」サービスにより、広大な北海道をメルセデス・ベンツで走ることができる。北海道エリア(離島を除く)でレンタルできるのはGLA180とC180アバンギャルドの2車種。まず、ニッポンレンタカー千歳空港 営業所で借りたのはGLA180だ。

なにを隠そう、メルセデス・ベンツを運転するのは生まれて初めて。コックピットに身を委ね、シフトはコラムレバー操作であることなど、いくつかのメルセデス・ベンツならではの操作法を聞いてからスタートボタンを押す。エンジン始動とともにメーターの針がMAXまでいったん振り切れるとスタンバイ状態となる。ウインカーをつけアクセルを軽く踏み込むと、いよいよ北海道取材の始まりだ。

樽前ガロー

まず最初に向かった撮影地は樽前ガロー。以前から行ってみたいと考えていた場所で、新千歳空港からも近い。

GLA180のハンドルを握って道央自動車道をしばらく南下する。高速走行時の安定性はさすがメルセデス・ベンツだ。260km/hまで刻まれているメーターがなんとも頼もしい。国道36号線をそれて樽前ガローの案内表示に従い車を走らせると、ほどなく樽前ガロー橋に到着。橋の上から見ると、切り立つ岸壁の奥底に渓流が見えた。

しかし、周囲に降りることができるようなルートが見当たらない。そこで、上流のガロー橋まで行ってみることにした。再び車を走らせると道路はダートに変わる。細かな凹凸はあるが、そこはコンパクトSUV、しっかりと路面をつかみ取ってくれる。しばらくしてガロー橋に到着。その橋の袂から伸びるルートを見つけて下ってみると、なるほどこの風景だ。

切り立つ岸壁と苔がとても美しい樽前ガロー。渓流の奥行きを表現するため、撮影ポジションはぎりぎり岸際を選んでいる。

ニコンD810/AF-S NIKKOR 16-35mm f/4G ED VR/16mm/絞り優先AE(F11、2.5秒、-1.0EV)/ISO 100/WB:太陽光(B1)/HDR(3EV、弱め)

この日の天候は曇りだったが、このような光の差し込まない渓流ではむしろ好都合だ。フラットな光がシャドウ部分まで回り込み岩肌のディテールをほどよく再現してくれる。しかし、いかんせんこの樽前ガローは深いうえに狭い。上空を入れると輝度差が強すぎて白とびと黒つぶれを起こしてしまう。階調補正機能でも明暗差は埋まらない。そのようなシーンではHDR撮影が効果的だ。

階調補正機能だけではシャドウからハイライトまで十分な階調が得られない。そこでHDR撮影とふつうに撮影したものを比べてみた。

通常撮影:ニコンD810/AF-S NIKKOR 16-35mm f/4G ED VR/16mm/絞り優先AE(F11、2.5秒、-1.0EV)/ISO 100/WB:太陽光(B1)
HDR撮影:ニコンD810/AF-S NIKKOR 16-35mm f/4G ED VR/16mm/絞り優先AE(F11、2秒、-1.0EV)/ISO 100/WB:太陽光(B1)/HDR(3EV、弱め)

上の写真は岩壁上の樹々が白とびを起こしているうえに、岩肌のディテールも十分再現されていない。一方、HDR撮影した下の写真はシャドウからハイライトまで再現することができている。このようなシチュエーションでは、HDR撮影は高い効果が得られる。

積丹半島

樽前ガローでの撮影を終え、次の目的地である積丹半島へ向かう。再び道央自動車道に戻り北上を開始。スピードが乗ってきたところでディストロニック・プラスを作動させる。レーダー探知により前車に接近したら自動的に車間距離を保ち、十分な車間距離が得られたら、あらかじめ設定した速度で自動走行してくれる。

メルセデス・ベンツのアルゴリズムがよいのか、自分の運転スタイルにマッチする車間距離が心地よい。さらにレーンキーピングアシストにより車線を逸脱した際には警告してくれるなど至れり尽くせりだ。

とかく北海道は移動距離が長いので、こういう装備はなによりありがたい。快適な高速道路走行から一般道へ入り、神威岬の駐車場に到着したのは午後5時前。そこからは徒歩で神威岬の先端に向かう。

神威岬までの道。駐車場から徒歩15分くらいで岬の先端に到着する。残念ながら青空には恵まれなかったが、味わいのある霧が出迎えてくれた。

ニコンD810/AF-S NIKKOR 24-70mm f/2.8E ED VR/24mm/絞り優先AE(F11、1/5秒、-0.7EV)/ISO 100/WB:太陽光(B1)/C-PLフィルター

積丹半島の海の色合いは積丹ブルーと呼ばれるほどの美しさだ。しかしこの日は残念ながら霧がかった曇り空。曇り空の白が水面に反射して積丹ブルーの鮮やかな色合いが表現できない。

そこでND32フィルターとPLフィルターを重ねて装着。不要な反射を取り除いたうえでスローシャッター速度を選択し、水面のざわめきを抑え込む。そのうえでRAW現像時の調整によって水の透明感を引き出したものが次の写真だ。

前景に陸地の岩を入れることで海に浮かぶ神威岩と対比させて遠近感を強調している。快晴時の積丹ブルーとまではいかないが、ほどほどに再現できたように思う。

ニコンD810/AF-S NIKKOR 24-70mm f/2.8E ED VR/26mm/絞り優先AE(F11、1/2秒、-0.7EV)/ISO 100/WB:太陽光(B1)/ND32、C-PLフィルター

ローソク岩

午後6時に撮影を切り上げ、初日の宿泊地である小樽に向かう。実は積丹半島に向かう際に見つけていたのだが、時間があれば立ち寄ろうと考えていた場所があった。ローソク岩だ。

以前にも撮影したことがある場所なのだが、この重苦しいまでの曇天と、青みの強い時間に撮影すると印象的に表現できるだろうと考えて立ち寄ることにした。

海の静けさを表現したいと考え、ND16フィルターとC-PLフィルターを装着し、10秒の露光時間をかけている。ホワイトバランスに太陽光を選んでいるのは日没後の深みのある青々とした色合いを表現するためだ。重苦しい雰囲気を加えるために若干暗めの露出を選んでいる。

ニコンD810/AF-S NIKKOR 70-200mm f/2.8G ED VR II/110mm/絞り優先AE(F11、10秒)/ISO 64/WB:太陽光(B1)/ND16、C-PLフィルター

小樽運河

小樽の街に近づくころにはすっかり光が落ちてしまった。夜景を撮るときは少し空に青みが残っているくらいのほうが良いのだが、アレコレ欲張っても仕方がない。とはいえ、少しでも青みの残る時間に撮影をするため、ホテルのチェックインは後回しにして小樽運河へと向かった。

次の写真は小樽運河の定番中の定番ともいえる橋の上から撮影したものだ。ポイントはホワイトバランスと街灯から伸びる光条の引き出しかた。

光条とは、強い光源を入れたときにそこから放射状に伸びて見える光の線のこと。絞りを絞ることで引き出すことができる。そこでF8まで絞って街灯の光条を引き出している。

ニコンD810/AF-S NIKKOR 24-70mm f/2.8E ED VR/38mm/絞り優先AE(F8、8秒)/ISO 200/WB:電球

ホワイトバランスは写真の色味を変化させるものだが、夜景撮影ではコレといって決まりがあるわけではない。好みのホワイトバランスを使って表現すればよいのだが、おおむね空に青みが加わるほうが「夜」らしさを演出できる。そこで、多くの場合「温白色蛍光灯」(カメラによって名称は異なる)あるいは「電球」を選ぶとよいだろう。

しばらく撮影をしていたときに、街灯を前ボケに選んで撮影できないだろうかと考えた。だが適度な位置に街灯を見つけることができない。そこで多重露光で表現したものが次の写真だ。

上の写真の画面左側に見える街灯を200mmでぼかして撮影し、そのまま画面右側に見える倉庫にレンズを向けて撮影している。

ニコンD810/AF-S NIKKOR 70-200mm f/2.8G ED VR II/110mm/絞り優先AE(F11、10秒)/ISO 64/WB:温白色蛍光灯/2コマ(加算平均)

夢中になって撮影していたが、さすがに夜も更けてきた。翌日の撮影のことも考慮して宿へと向かうことにしたが、そのまえに夕食。小樽といえばなんといっても寿司だ。美味しい寿司に舌鼓をうち、メルセデス・ベンツでめぐる北海道取材の初日を終えた。

富良野

2日目は朝6時に出発。この日の目的地は富良野・美瑛だ。まずはファーム富田。三笠ICで降りて山道を進み、富良野に近づくころには青空も見えはじめていた。

ファーム富田に隣接する町営駐車場に車を止めて機材を背負って花畑へと向かう。そういえば以前、彩りの畑でマナーの問題で三脚使用が禁止になったはず。そこで三脚は車に置いて手持ちで撮影することにした。

手持ちの撮影では手ブレに最大限に気を配る必要がある。シャッター速度の低下には十分な注意が必要だ。

カメラボディやレンズの手ブレ補正機能をオンにすることはもちろんだが、必要ならISO感度を上げるが、その際にオートISO感度を選択しておくと撮影のテンポを崩すことなく撮影できる。

ニコンD810/AF-S NIKKOR 70-200mm f/2.8G ED VR II/112mm/絞り優先AE(F2.8、1/2,500秒、+0.7EV)/ISOオート(ISO 100)/WB:太陽光(B1)

ところで、花畑を撮影するときどのような高さで撮影しているだろうか? 実はこの取材時点(6月上旬)ではまだ一部の花畑で花が咲いている状態だった。その花畑をふつうに立った状態(=アイレベル)で撮影したものが次の写真だ。

ニコンD810/AF-S NIKKOR 24-70mm f/2.8E ED VR/36mm/絞り優先AE(F11、1/40秒)/ISOオート(ISO 250)/WB:太陽光(B1)/C-PLフィルター

画面中央の土がむき出しになっている部分にも花が咲いていれば、この高さでも全く問題ない。しかし、いかんせんこの状態では花のボリューム感が感じられない。そこで、しゃがみこむような低い位置(=ローレベル)で撮影したカットが次の写真だ。両者を比較すれば、花畑のボリューム感や遠近感が大きく異なることがおわかりいただけると思う。ほんの些細なことだが、ぐんと表現が変わるので覚えておくと良いだろう。

ニコンD810/AF-S NIKKOR 24-70mm f/2.8E ED VR/36mm/絞り優先AE(F11、1/40秒)/ISOオート(ISO 100)/WB:太陽光(B1)/C-PLフィルター

どちらのカットも同じ場所、同じ焦点距離で撮影しており、違いは高さだけ。下の写真は低い位置でカメラを構えることで、画面中央に見えていた土の部分の面積が減少し、さらに手前の花に近づいているので遠近感が増している。

美瑛

ファーム富田を後にして向かったのは美瑛だ。言わずとしれたパッチワークの丘がどこまでも連なる町。北海道取材では必ず訪れる場所でもある。まずはいわゆる有名どころから。

次の写真はマイルドセブンの丘と呼ばれる場所だ。手前に植えられているのは麦で、7月には色づき収穫されることだろう。

ここで意識したのは手前の畑のラインだ。麦畑だけだと凡庸な印象になったため、撮影ポジションを移動して手前にラインを入れることでアクセントにしている。遠近感も加わり、一石二鳥だ。

ニコンD810/AF-S NIKKOR 24-70mm f/2.8E ED VR/44mm/絞り優先AE(F8、1/3秒)/ISO 100/WB:太陽光(B1)/C-PLフィルター

次に向かったのは赤い屋根の家。植えられたばかりの作物のラインがとても印象的だ。

手前に美しいラインがくるよう撮影ポジションを選んでいる。おりしも天候は下り坂。空は雲に覆われてきた。家の赤い屋根も雲の反射によって赤い色合いに見えない。そこで、PLフィルターを使って余分な反射を取り除いて赤い色合いを出している。

ニコンD810/AF-S NIKKOR 70-200mm f/2.8G ED VR II/105mm/絞り優先AE(F8、1/60秒)/ISO 100/WB:太陽光(B1)/C-PLフィルター

美瑛での撮影では有名どころにも行くが、どちらかというと途中で惹かれたシーンにレンズを向けることのほうが多い。国道から脇道に逸れて、後続車に配慮しながら気に入った場所で車を駐車スペースに止めて撮影する。車を寄せる際にも障害物に接近するとアラームが鳴ってくれるのでなにかと安心だ。

畑のラインと林のリズム感に惹かれてレンズを向けたものだ。多めに畑のラインを取り入れているが、林の存在感は十分だ。

ニコンD810/AF-S NIKKOR 70-200mm f/2.8G ED VR II/90mm/絞り優先AE(F11、1/100秒)/ISO 100/WB:太陽光(B1)/C-PLフィルター

被写体を探しながら走行していたときに、以前、とある駐車スペースの脇で咲いていたルピナスを撮影したことを思いだした。その場所に向かったところ案の定ルピナスが咲いていた。しかも以前よりも数が多くなっているようだ。

せっかく美瑛で出会ったルピナスなのだから、ただ花を写すだけではもったいない。どこまでも連なる美瑛の丘の傍らで咲く姿をしっかりと風景的な表現として取り込むことにした。

背景の丘との重なりを意識しながら撮影ポジションを探っている。また、アイレベルで撮影すると、背景の丘とルピナスの間に電柱や民家などの余計なものが入り込んでしまうため、それを隠す低めの位置を選んでいる。

ニコンD810/AF-S NIKKOR 70-200mm f/2.8G ED VR II/140mm/絞り優先AE(F2.8、1/200秒)/ISO 100/WB:太陽光(B1)/C-PLフィルター

さて、ここで一旦車両交換のために旭川空港のニッポンレンタカーへと向かう。操作やフィーリングに慣れたGLA180ともここでお別れだ。次に配車していただいたのはC180アバンギャルド。この続きはまた次回に。

協力:株式会社ヤナセ

萩原俊哉

(はぎはらとしや)1964年山梨県甲府市生まれ。浅間山北麓の広大な風景に魅せられ、2008年に本格的に嬬恋村に移住。カメラグランプリ選考委員 ニコンカレッジ講師 日本風景写真家協会(JSPA)会員
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