気になるデジカメ長期リアルタイムレポート
OLYMPUS OM-D E-M5【第2回】
春の花々を撮る
2012年4月27日 15:00
前回のレポートではロケ先の北海道に届いたOM-D E-M5の開封の儀から、雪降る中でのいきなりの実戦投入までのお話をお届けした。開封から1時間も経たないうちに雪まみれになったOM-D E-M5の姿に、各方面から届いた反応はちょっと「にやり」とさせられるものであった。
さて、その数日後には私は雪深い北海道をカーフェリーで発ったわけだが、約24時間後に到着した東京はすっかりと春の陽気に包まれていた。すこし遅れ気味であったという桜の花もちょうど満開を迎えており、すっかり気分は春爛漫だ。日本人に生まれたからには桜の季節には桜を撮らぬわけにはいかず、当然、今年の桜はOM-Dで撮るでしょ!! ということで今回のレポートのテーマが決まった次第である。とはいっても春の彩りは桜だけではないので、今回は「OM-D E-M5で春の花々を撮る」をテーマにお届けすることにしよう。
花の撮影はアングル命
ここで少し花の撮影での大切なポイントをお話ししたい。花の撮影でまず大切なポイントは、どの位置・角度から花を捉えるのかということだ。ポピーや菜の花のように低い位置に咲く花の場合では、花を上から撮るのか下から撮るのかで大きく印象が変わる。花が向いている「お顔」の方向をちゃんと見極めてあげることも大事だ。そもそも花は受粉してくれる虫たちを魅了するために美しく咲いているのだから、その「お顔」を美しく撮るのが礼儀だと私は思っている。
また、桜の花のように高い木に咲く花では、基本的には下から仰ぐように撮るわけだが、木の全体を捉えるのか、枝に近づき花にクローズアップするのかによって主題が変わってくる。全体を捉えるならば木のシルエットを大事にしてバランス良く捉えたい。また枝の花に近づくならば、花同士の重なり具合や花弁の形状に注視して、より引き立つように撮るようにすると良いだろう。
このようにアングルにこだわりながらの撮影では、いかに自在にカメラを取り回せるかが重要となる。OM-D E-M5では大きなライブビューモニターとEVFの双方による自在な撮影スタイルが効果的だ。とくに低い位置の花をローアングルで撮影する際には、チルト式で上に向けられるモニターがこの上なく便利だ。
コントラストの高い有機ELモニターを採用している点も、屋外の明るい場所での画像の見やすさに貢献している。ライブビューモニターの弱点ともいえる「明るい屋外での見にくさ」はOM-D E-M5では大きく改善されているのだ。
ただし、OM-D E-M5のモニター可動範囲は上80度と下50度に限られる。同じくオリンパスのE-5に採用されているバリアングルモニターのように横方向への回転ができないのだ。E-5ユーザーとしては、縦位置撮影でのバリアングルモニターの便利さに慣れているだけに、非常に残念な点だ。
EVFで適切な露出コントロールを
次に大切なポイントは、適切な露出を与えることだ。実は花の撮影で一番難しいのが明るさのコントロールにある。多くの場合、カメラのAEまかせで撮影すると花が暗くなってしまいがち。その原因として挙げられのが背景の明るさだ。
たとえば桜のように背景が明るい空である場合は、その明るさにカメラのAEが引っ張られてしまい肝心の花が暗くなってしまう。また、背景がさほど明るくないシチュエーションにおいても、花の色をきれいに出すには若干明るめに露出を決めてあげると良い結果になることが多い。
ただし必要以上に明るくしてしまうとハイライト部が白トビしてしまう恐れもある。このような微妙な露出コントロールを行なう際には、周囲の明るさの影響を受けにくいEVFでの確認が向いている。背面モニターでは周囲の明るさによって映し出される画像の明るさが異なって見えてしまうため、正しい判断を下すのが難しいのだ。その点、EVFならしっかりと画像を確認することができる。
さらに光学式ファインダーとの決定的な違いは、設定された露出値でのシミュレーションが常時行なえることだ。撮影前に明るさを確認できてしまうのだから、露出を模索するために何度もシャッターを切るといったこともなくなるだろう。
より自然な仕上がりになったi-Finish
さて、最後に重要なポイントとして挙げたいのは花の色味コントロールだ。花の色の鮮やかさは、いつの世も人の目を魅了する自然の芸術といえるだろう。その花の色を印象のままに捉えるには、デジタルカメラ特有の「色調コントロール」をしっかりと行なう必要があるのだ。
OM-D E-M5には同じくオリンパスのEシステムやPENシリーズと同様の色調モードが用意されている。もちろん色味はそれぞれ撮影者の好みによるところが大きくこれが正解というものはない。ただ今回のように、春の花を捉える際には少し彩度も気分も上げていきたいところだ。そこで、今回は色調モードのなかから「Vivid」「i-Finish」を中心に選択して撮影を行なった。
ここで注目したいのは「i-Finish」による仕上がりだ。この「i-Finish」はPENシリーズのE-P2に初めて搭載された色調仕上げモードであり、以来PENシリーズおよびEシステムに搭載されてきたものである。この「i-Finish」という仕上げは「人間が美しいと思われる彩度やコントラストを再現するモード」とオリンパスが提唱しているものだ。
たしかにこのモードで撮影された画像では「青い空」「赤い夕陽」などが強調された印象の仕上がりとなることが多い。だが往々にして強調が強く出てしまう傾向もあり、正直なところ使用する機会はあまり多くなかった。
だが今回、OM-D E-M5の「i-Finish」モードで撮影した画像を確認したところ、それまでの印象に較べてかなり自然な仕上がりとなっているようなのだ。しかも単に効果を抑えたのではなく、やはり「青い空」は印象的な青となっている。そこで花を撮る際にいくつか「i-Finish」モードにて撮影したところ、なかなか良い仕上がりとなった。つまり、かなり“使える”モードになっていると言えるだろう。
予想以上に使えるAF-TRとAFポイント縮小技
さて最後は、花の撮影におけるピント合わせの方法について少しTips的なお話を。今回OM-D E-M5で花の撮影をしていて気がついたのだが、風で揺れる花のピント合わせにはAF-C+TRによる追尾AFがなかなか有効なのである。
一般的に動く被写体を追いかけてAFを合わせ続けてくれるAF-Cは、AFポイントから外れてしまうとアウトフォーカスになってしまい、一度外れた被写体を再び追いかけることは難しい。そこで画面フレーム内で移動する被写体を自在に追いかけてくれるトラッキング機能を利用することで、風で揺れる花も外す事無くAFで追尾してくれるのでは? と思いつき早速試してみたところ、これが実にしっかりと追尾してくれたのだ。
AF-C+TRはカメラのカタログや説明書ではスポーツ撮影などに向くと書かれていることが多いのだが、実はこのようなシーンでも結構便利な機能なのである。
もうひとつ、AFポイントの話。通常、OM-D E-M5のAFは35点のAFエリアによって画面を分割されている。しかしこの35点AFエリアではひとつのAFポイントが大きく、微妙なAFポイントの指定には向かない場合がある。そのような場合には、拡大枠AF機能を使用してAFポイントの大きさを狭めることができる。これにより花の雄しべ一点にフォーカスを合わせるといったこともできるようになるのだ。
今回は花の撮影をテーマに気がついたことをお話しさせていただいた。これらはOM-D E-M5に限った話ではないが、直感的かつ細かいコントロールが可能なOM-D E-M5だからこそ、こだわりのある花の撮影にトライしていただきたいと思い取り上げたものだ。
次回以降も具体的な撮影に沿う形でOM-D E-M5の長期レポートをご用意させていただきたいと思っている。もし「こんなことやってみて!」というご要望があれば、 私のTwitterアカウント にリクエストをいただければ幸いだ(ぜんぶは無理だけど、出来るだけ応えていきたいです!)。
【2012年4月27日】記事初出時、E-5とE-M5のi-Finish比較作例のうち、E-M5の作例が記事末の自由作例と入れ替わっていたため修正しました。