ペンタックスK-x【第1回】

新ファームウェアで「クロスプロセス」を試す

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筆者のK-xは手前のホワイト。今回は新旧のファームウェアを比較するため、新バージョン適用済みのK-xレッドをペンタックスから借用した

 筆者がK-xを購入した2009年12月上旬、折しもK-xのファームウェアが更新され、バージョン1.01となった。内容はクロスプロセス機能の強化と、動作安定性の向上というもの。

 そのうちクロスプロセスとは、カラーリバーサルフイルムにネガフイルム用の現像液を使う、あるいはカラーネガフイルムにリバーサルフイルム用の現像液を使って現像し、色調やコントラストを変化させる現像手法。K-xでは、色合い、コントラスト、トーンカーブといった各パラメータをランダムに変動させて撮影することで、クロスプロセスをデジタルで再現しようというわけだ。

 K-x発売後初となる今回の更新では、クロスプロセス機能に3つのプリセットが追加された。従来のバージョンでは、クロスプロセス機能のON/OFFのみ設定できたが、バージョンアップ後は色味の傾向を青・緑系、黄・橙系、赤・紫系の3パターンから選択して固定できるようになった。青・緑系を1、黄・橙系を2、赤・紫系を3と番号を割り振って分類している。

 実際に使ってみると、同じ被写体・同じ構図でも、シャッターを押す度に味わいの異なる写真が撮れる。撮影者が露出をコントロールする以外は、写りに関しては運任せと言っていい。そもそも色調や明るさ、コントラストなどが勝手に変わってしまうのだから、適正露出に設定しても最終的な写真が意図したとおりに写る保証はなく、ほぼ無意味だ。細かな解像感や収差に関する議論とは無縁なこの感覚は、「撮れた写真が自分にとって面白ければいい」という前提に立ってトイカメラを使うことに近いものを感じて小気味いい。

 プリセットを使用しない場合は「シャッフル」を選択する。その場合でも、色の傾向は前述の3系統から大きく逸脱することはない。

バージョン1.00ではONとOFFの切り替えのみだったバージョン1.01では、プリセットを選択可能になった

  • 作例のサムネイルをクリックすると、リサイズなし・補正なしの撮影画像を表示します。

バージョン1.00で撮影したクロスプロセスの作例

 K-xのファームウェアバージョン1.00では、色味のプリセットは用意されていなかった。ゆえに多彩な風合いの写真が撮れることで、予想もできない結果を楽しめた。バージョン1.01でいうところの「シャッフル」と同じ動作と思われる。

共通設定:4,288×2,848 / 1/30秒 / F9 / +1.3EV / ISO200 / マニュアル露出 / WB:ストロボ / 47.5mm

クロスプロセスON(シャッフル)
クロスプロセスON(シャッフル)
クロスプロセスON(シャッフル)
クロスプロセスOFF

 

バージョン1.00および1.01で撮影したクロスプロセスの作例

 以下では、バージョン1.00でクロスプロセスをONにした場合の作例と、バージョン1.01でクロスプロセスのプリセットを適用した場合の作例を掲載する。プリセットは青・緑系、黄・橙系、赤・紫系の3つで、それぞれ1、2、3と番号を割り振っている。これら3つのプリセットはシャッフルと比べて比較的コントラストや色調の変化がおとなしく、白飛びや黒潰れといった色飽和を起こすほどの極端な変化は見られない。パラメーターが固定されているため、露出設定さえ合わせておけば、何枚撮っても安定した色味で撮影できる。

 なおバージョン1.01の動作では、シャッフルが1.00の「クロスプロセスON」に相当する。

共通設定:3,312×4,416 / 1/8秒 / F8 / +2.7EV / ISO200 / マニュアル露出 / WB:オート / 35mm

クロスプロセスON(シャッフル)バージョン1.00
クロスプロセスON(シャッフル)バージョン1.00
左からクロスプロセス1(青・緑系色)、同2(黄・橙系色)、同3(赤・紫系色)バージョン1.01
クロスプロセスOFF

 

共通設定:4,288×2,848 / 1/13秒 / F8 / +1EV / ISO200 / マニュアル露出 / WB:オート / 55mm

クロスプロセスON(シャッフル)バージョン1.00
クロスプロセスON(シャッフル)バージョン1.00
左からクロスプロセス1(青・緑系色)、同2(黄・橙系色)、同3(赤・紫系色)バージョン1.01
クロスプロセスOFF

 

共通設定:4,288×2,848 / 1.3秒 / F8 / 0EV / ISO200 / マニュアル露出 / WB:オート / 50mm

クロスプロセスON(シャッフル)バージョン1.00
クロスプロセスON(シャッフル)バージョン1.00
下段:左からクロスプロセス1(青・緑系色)、同2(黄・橙系色)、同3(赤・紫系色)バージョン1.01
クロスプロセスOFF

 今回追加されたプリセットを使ってみると、色飽和などを起こさないよう、バランスの良いパラメーター設定になっている印象を受ける。使いどころとしては、何度もシャッターチャンスのない時などに、特定の色味でクロスプロセス機能を適用したい場合というところだろうか。ただ個人的には、偶然性を楽しむという観点からいって、シャッフルの方が面白いと思う。加えていうと、クロスプロセスはRAW+JPEGのJPEGに適用することや、RAW現像ソフトで後処理することもできない。シャッフルの場合、まさに一発勝負となるわけだ。

 なおクロスプロセス機能は、JPEG撮影と動画モードで利用可能。デジタルフィルターやディストーション補正などとの併用も可能だが、併用する場合はカメラによる画像処理時間もそれなりにかかってくるので、筆者には使いどころが難しく感じた。また、使用中はカスタムイメージやホワイトバランスなどの設定は変更できないようだ。

デジタルフィルター+クロスプロセスの作例

デジタルフィルター:トイカメラ+クロスプロセスデジタルフィルター:レトロ+クロスプロセス
デジタルフィルター:ハイコントラスト+クロスプロセスデジタルフィルター:ソフト+クロスプロセス

 なお、バージョン1.01のファームウェアには、使用バッテリー判別性能の向上も含まれている。K-xは発売当初、一部の充電池などを使用したときに、電池残量を正しく表示しない場合がある不具合が報告されていた。筆者もK-xには市販の単3ニッケル水素充電池を使用しているが、同じブランド・種類の電池であっても、使用する個体の組み合わせによってはすべて満充電でも正常に使用できないケースがあった。この点が速やかに改善されたのは大変ありがたく思う次第だ。

【2010年1月12日】使用電池の種別を訂正いたしました。





2010/1/12 12:18