オリンパスE-620【第3回】

シグマ50mm F1.4 EX DG HSMを使ってみた

Reported by 北村智史


 フォーサーズの公式サイトのコンテンツのひとつに、「マッチングシミュレーション」というものがあり、フォーサーズ、またはマイクロフォーサーズのボディとレンズの組み合わせがどんな外観になるかが確認できる。シンプルな内容なのだが、やってみると案外に楽しい。普段、メーカーのサイトで見られるのはレンズの単体の画像だけで、カメラに装着した状態のはあまりないし、あっても自分の好みのボディとは限らない。だから、好き勝手にボディとレンズを選べるだけでけっこう面白いのである。

 ちなみに、ボディはオリンパス、パナソニック、ライカ、レンズはオリンパス(OMレンズも若干ある)、パナソニック(ライカDレンズを含む)、シグマのが揃っていて、マイクロフォーサーズのボディにアダプター併用でフォーサーズのレンズを組み合わせることもできる(原稿執筆時点では、パナソニックのDMC-GF1と2本の新レンズはまだデータが登録されていなかった)。

 で、E-620にいろんなレンズを取っかえ引っかえしていて目を引いたのが、シグマの50mm F1.4 EX DG HSMである。ご存じ、最新設計の大口径標準レンズである。これをE-620に装着した映像に、思いっきりはまってしまったのである。

 もう、見た目からして明らかなノーズヘビー。ものすごくバランス悪そうである。なにしろ、重さは530g(フォーサーズマウントのはフランジバックが短い関係で、ほかのマウントのレンズよりも少し重い)。電池とメディア込みのE-620ボディとほぼ同じである。ダブルズームキットに同梱の2本のズームを足しても440gなのに、こっちは1本で530g。ずっしりである。

 軽快さが売りのE-620に、こんなに重いレンズを付けるのって、なんだかバチアタリな気もしてしまう。組み合わせとしてありえないという人もいそうだが、個人的にはこういうのはかなり好きだったりする。それに、数字としてはOMボディにズイコー100mm F2を付けたのと同じようなもの。そう思えば十分に許容範囲ではないか。うんうん。いけるいける。

 で、いっちゃったわけである。実際にE-620に装着してみると、やっぱりでかい。重い。いつものダブルズームのつもりでいると、レンズ側がぐっと沈む。E-620の取り柄は、持ち上げるときに「よいしょ」と口にせずにすむところなのに、このレンズ付けたとたんに「よいしょ」のオンパレードである。

 とは言っても、持ちづらいと感じるようなほどではない。左手でレンズを支えるようにして持てば平気。その上、ファインダー像の明るさときたら、ダブルズームのF値に慣れた目にはまぶしいくらい。ボケの大きさも格別で、フォーカスリングを回すとピントが合った部分がふわっと溶けていく。ファインダー像を見ているだけでわくわくしてしまう。

 写りも素敵である。絞り開放では少々アマさもあるが、1段絞ればきゅっとシマリが出てきて、ピクセル等倍で見ても不満のないシャープ感のある描写になる。解像力のピークはF5.6付近だが、ボケの大きさとの兼ね合いを考えると、F2からF2.8あたりで使うのが一番おいしいのではないかと思う。

 ボケも素直できれい。口径にたっぷり余裕があるものだから、画面の周辺部でもボケの形がラグビーボール型にならないのもいい。点光源のボケを見ると、たぶん個体差だろうけどF2あたりでちょっと形がいびつなのと、渦巻ボケ(これは非球面レンズの弊害のひとつ)が気になると言えば気になるが、個人的には許せる部分。

 まあ、多少欠点があったにしても、35mmフィルムカメラ換算100mm相当の中望遠で、しかも開放F1.4の明るさなのだ。文句を言ったらバチが当たる。それよりも欠点が目立たない撮り方を心がけましょう、と思うんである。



  • 作例のサムネイルをクリックすると、リサイズなし・補正なしの撮影画像(JPEG)を別ウィンドウで表示します。

●絞りによる画質とボケの変化

 絞り開放だと少し球面収差が残っているせいでアマさが出るが、周辺光量の低下はまったく気にならない。1段絞るとぐっと引き締まった画面になり、F2.8からは画面全体でキレのいい描写となる。

F1.4
E-620 / 50mm F1.4 EX DG HSM / 4,032×3,024 / 1/800秒 / ISO200 / WB:オート
F2
E-620 / 50mm F1.4 EX DG HSM / 4,032×3,024 / 1/400秒 / ISO200 / WB:オート
F2.8
E-620 / 50mm F1.4 EX DG HSM / 4,032×3,024 / 1/200秒 / ISO200 / WB:オート
F4
E-620 / 50mm F1.4 EX DG HSM / 4,032×3,024 / 1/100秒 / ISO200 / WB:オート
F5.6
E-620 / 50mm F1.4 EX DG HSM / 4,032×3,024 / 1/50秒 / ISO200 / WB:オート
F8
E-620 / 50mm F1.4 EX DG HSM / 4,032×3,024 / 1/25秒 / ISO200 / WB:オート
F11
E-620 / 50mm F1.4 EX DG HSM / 4,032×3,024 / 1/13秒 / ISO200 / WB:オート
F16
E-620 / 50mm F1.4 EX DG HSM / 4,032×3,024 / 1/6秒 / ISO200 / WB:オート
 

 


9枚羽根の円形絞りを採用しているが、F2での点光源ボケは少々いびつ。渦巻ボケもちょっと気になるところではある
E-620 / 50mm F1.4 EX DG HSM / 4,032×3,024 / 1/15秒 / F2 / +0.3EV / ISO200 / WB:オート
大口径レンズ+ボディ内手ブレ補正の威力は満点。高感度に弱みを持つフォーサーズだけに、感度を低く抑えられるのはありがたい
E-620 / 50mm F1.4 EX DG HSM / 4,032×3,024 / 1/8秒 / F2 / +0.7EV / ISO200 / WB:オート
暗いせいでAFでは合焦できず。と言って、絞り開放付近ではMFでのピント合わせもかなりシビア。10コマ以上撮って、及第点はこの1コマだけ
E-620 / 50mm F1.4 EX DG HSM / 4,032×3,024 / 1/10秒 / F1.6 / +1.7EV / ISO200 / WB:晴天
お台場の青梅地区と台場地区を結ぶテレポートブリッジの主塔。てっぺんの柵を見ると、ちょっぴり倍率色収差が出ているのがわかる
E-620 / 50mm F1.4 EX DG HSM / 4,032×3,024 / 1/800秒 / F2.8 / +2.0EV / ISO100 / WB:オート
オートホワイトバランスで撮ったせいでかなり弱まってしまっているが、白熱灯らしい温かみとレンガの表情がいい感じ
E-620 / 50mm F1.4 EX DG HSM / 4,032×3,024 / 1/60秒 / F2 / +1.0EV / ISO200 / WB:オート
「自由の炎」という名前のオブジェ。下のほうは落書きだらけで切ない
E-620 / 50mm F1.4 EX DG HSM / 4,032×3,024 / 1/1250秒 / F2.8 / +1.7EV / ISO200 / WB:オート
ウッドデッキに設置されていたベンチも木製。円弧型というのが面白い
E-620 / 50mm F1.4 EX DG HSM / 4,032×3,024 / 1/250秒 / F2.8 / -0.3EV / ISO200 / WB:晴天
最大撮影倍率は1:7.4。35mmフィルムカメラ換算だと約0.27倍相当。フォーサーズだと近接能力もアップするので楽しい
E-620 / 50mm F1.4 EX DG HSM / 4,032×3,024 / 1/125秒 / F2.8 / ISO200 / WB:オート
お台場海浜公園に展示されている船の碇の鎖。腐食してかなりボロボロになってしまっているのも味のうち
E-620 / 50mm F1.4 EX DG HSM / 4,032×3,024 / 1/200秒 / F2.8 / ISO200 / WB:オート
アームの部分は曲がってるし傘も歪んでいる。なにをどうやったらこうなるのかも謎だが、この条件で+3EV補正というのも不思議である
E-620 / 50mm F1.4 EX DG HSM / 4,032×3,024 / 1/400秒 / F2.8 / +3.0EV / ISO200 / WB:晴天
ED 14-42mm F3.5-5.6とかの小・軽・暗ズームのボケなさに慣れてると、これくらいボケるレンズはそれだけで楽しい
E-620 / 50mm F1.4 EX DG HSM / 4,032×3,024 / 1/320秒 / F2.2 / ISO200 / WB:晴天
積み重ねられたイスの背もたれの部分。パチパチやってたら、知らない人が隣で同じのを撮っててヘンテコなシチュエーションになってた
E-620 / 50mm F1.4 EX DG HSM / 4,032×3,024 / 1/500秒 / F2.5 / ISO200 / WB:晴天
F1.4の明るさがあると感度を上げなくても手持ちで夜景が撮れてしまう。レンズは重くなったけど、三脚がない分身軽な撮影が楽しめた
E-620 / 50mm F1.4 EX DG HSM / 4,032×3,024 / 1/15秒 / F1.4 / ISO200 / WB:オート
地面すれすれのローアングルからライブビュー撮影。残念ながらコントラスト検出AFには対応していない。拡大表示MFでピントを合わせた
E-620 / 50mm F1.4 EX DG HSM / 4,032×3,024 / 1/10秒 / F1.4 / ISO400 / WB:晴天


北村智史
北村智史(きたむら さとし)1962年、滋賀県生まれ。国立某大学中退後、上京。某カメラ量販店に勤めるもバブル崩壊でリストラ。道端で途方に暮れているところを某カメラ誌の編集長に拾われ、編集業と並行してメカ記事等の執筆に携わる。1997年からはライター専業。2011年、東京の夏の暑さに負けて涼しい地方に移住。地味に再開したブログはこちら

2009/10/6 13:40