オリンパス・ペンライトE-PL2【第4回】

作画の幅が広がって使い勝手も向上したアートフィルター

Reported by 北村智史


 E-PL2の魅力のひとつは、アートフィルターの使い勝手がよくなったこと。オリンパスのほかのカメラにもアートフィルターは搭載されているのだけれど、基本的にアートフィルターモード(モードダイヤルのART位置)での利用となる。露出モードはプログラムAE固定で、ホワイトバランスは原則オートになってしまう。

 もちろん、プログラムシフトはできるし、露出補正も可能。ホワイトバランスだってオート固定なんてけちくさくはない。ただし、ほかのアートフィルターに切り替えると、プログラムシフトはリセットされるし、ホワイトバランスもオートに戻ってしまう。そのあたりがちょっと不便なのである。

 で、E-PL2はというと、従来の仕上がりモードを発展させたピクチャーモードを搭載していて、その中にアートフィルターも入っている。ようは、VIVIDやNATURALなどと同じようにアートフィルターを選べるようになっているのである。だから、絞り優先AEやシャッター優先AE、マニュアル露出でアートフィルターを使うことができる。当然、ホワイトバランスも自由に選べるし、アートフィルターを切り替えても設定がオートに戻ったりなんかしない。

従来の仕上がりモードとアートフィルターがピクチャーモードに統合されているのは、E-5とE-PL2の2台だけ
ライブコントロールでピクチャーモード設定時の画面。左下の露出モード表示を見るとわかるように絞り優先AEでもアートフィルターが使える

 まあ、初心者にとっては、アートフィルターモードのほうが失敗しにくくていいかもしれないが、カメラの操作に慣れている人間には何かの拍子に設定が勝手に変わってしまうのはうれしくない。なので、ピクチャーモードはとてもありがたいのだが、これを搭載しているのは現時点では一眼レフカメラのE-5とこのE-PL2の2機種だけなのだ。

 アートフィルターのバリエーションやアートエフェクトを重ねて適用できることも大きい。E-PL2のアートフィルターは6種類で、これは“全部乗せ”のE-5よりも少ないが、バリエーションとエフェクトの合わせ技も含めると、トータルで22種類にもなる。個人的にはクロスプロセスとかジェントルセピアとかがないのはいまいちだけれど、お気に入りのドラマチックトーンが入っているし、22種類もあればけっこう楽しめる。多すぎて迷うってのもあるけれど、E-PL2だけの特典であるのは間違いない。

アートフィルターにバリエーションが増えて、さらにアートエフェクトが加えられるようになり、全部で22種類の効果が得られる

 それに、アートLVモードという機能もある。カスタムメニューの中にあるこの機能は、それほど目立つものではないが、アートフィルターの使い勝手を大きく左右する縁の下の力持ち的機能だと思う。

 アートLVモードはmode1とmode2の切り替え式で、初期設定の前者は、従来と同じ表示方法となる。アートフィルターの効果をきちんと見せてくれるモードで、処理の重いトイフォトやジオラマあたりはコマ落ちのパラパラしたライブビュー映像になってしまう。これだと、カメラの向きを変えたりズーミングしたときに、ライブビュー映像が着いてきてくれないものだから、つい行きすぎたり足りなかったりすることが多くなる。撮りたいときにパッと撮れない、素早い操作がやれないのは、気の長い方なら我慢できるかもしれないが、個人的にはストレスでしかない。

アートLVモードの設定画面。初期設定のmode1は効果優先でパラパラ表示になるもの

 一方のmode2はというと、シャッターボタンを半押ししているあいだだけアートフィルターの効果が弱くなる。半押ししていないときは、アートフィルターの効果を優先するのでパラパラなライブビューになるが、半押しすると効果が弱くなる分処理が軽くなって、ライブビュー映像がなめらかになる。被写体が見やすくなるし、フレーミングも安定する。動く被写体を追うのも楽になる、というわけだ。

新しいmode2は、半押ししたときだけ効果を弱めることで、画面表示をスムーズにしてくれる。動く被写体をねらいたいときに有利

 それに慣れてしまうとmode2のありがたみもついつい忘れてしまうが、先日某一眼レフカメラの作例撮りをやって、パラパラなライブビューがストレスたっぷりだったのを痛感してから、よけいにE-PL2が素晴らしく思えるようになった次第である。

  • 作例のサムネイルをクリックすると、リサイズなし・補正なしの撮影画像をダウンロード後、800×600ピクセル前後の縮小画像を表示します。その後、クリックした箇所をピクセル等倍で表示します。
古びた建物なんかはポップアートで撮ると、うんとレトロ感が出てくれる。でも、ポップアートIIは地味めなのでちょっと難しい。E-PL2 / M.ZUIKO DIGITAL ED 9-18mm F4-5.6 / 絞り優先AE / ポップアートI / 4,032×2,688 / 1/800秒 / F8 / -0.3EV / ISO200 / WB:オート / 13mm(26mm相当)ラフモノクロームなどの4種類にはフレーム効果が付けられる。これもけっこうお気に入り。画角が狭くなるのは惜しいけど。E-PL2 / M.ZUIKO DIGITAL ED 9-18mm F4-5.6 / 絞り優先AE / ラフモノクロームI + フレーム効果 / 4,032×2,688 / 1/800秒 / F8 / -0.3EV / ISO200 / WB:オート / 9mm(18mm相当)
遠くからでもはっきりわかる「買います」の看板はインパクト大。でも、何を買うのかは近づかないとわからない。E-PL2 / M.ZUIKO DIGITAL ED 9-18mm F4-5.6 / 絞り優先AE / ラフモノクロームI + フレーム効果 / 4,032×2,688 / 1/800秒 / F8 / -0.3EV / ISO200 / WB:オート / 12mm(24mm相当)派手なものを派手に撮るのもポップアート。とりあえず、いろんなものを買い取ってくれるらしいです。E-PL2 / M.ZUIKO DIGITAL ED 9-18mm F4-5.6 / 絞り優先AE / ポップアートI / 4,032×2,688 / 1/640秒 / F8 / 0EV / ISO200 / WB:オート / 9mm(18mm相当)
ほんとはかなり薄暗いのだけれど、ものすごいシャドー部の持ち上げ方で不思議な雰囲気が出るのが面白い。E-PL2 / M.ZUIKO DIGITAL ED 9-18mm F4-5.6 / 絞り優先AE / ドラマチックトーン + フレーム効果 / 4,032×2,688 / 1/40秒 / F6.3 / -0.3EV / ISO200 / WB:オート / 9mm(18mm相当)E-PL2は縦位置検知がないのでジオラマは画面の左右がボケる。もうひとつ納得できない部分ではある。E-PL2 / M.ZUIKO DIGITAL ED 9-18mm F4-5.6 / 絞り優先AE / ジオラマ / 4,032×2,688 / 1/640秒 / F6.3 / -0.3EV / ISO200 / WB:オート / 11mm(22mm相当)
何となくだけれど、ジオラマには変な苦手意識みたいなのがあって、うまく決まらないことが多い。E-PL2 / M.ZUIKO DIGITAL ED 9-18mm F4-5.6 / 絞り優先AE / ジオラマ / 4,032×2,688 / 1/500秒 / F6.3 / 0EV / ISO200 / WB:オート / 14mm(28mm相当)トイフォトとフレーム効果の組み合わせは大のお気に入りで、個人的にデフォルトにしてたりする。E-PL2 / M.ZUIKO DIGITAL ED 9-18mm F4-5.6 / 絞り優先AE / トイフォト I + フレーム効果 / 4,032×2,688 / 1/60秒 / F8 / 0EV / ISO200 / WB:オート / 9mm(18mm相当)
古い堰が残っていたのを撮ってみた。調べてみたら昭和初期につくられた農業用水の取水堰とのこと。E-PL2 / M.ZUIKO DIGITAL ED 9-18mm F4-5.6 / 絞り優先AE / ファンタジックフォーカス / 4,032×2,688 / 1/125秒 / F8 / 0EV / ISO200 / WB:オート / 9mm(18mm相当)ポップアートIIは発色が控えめ。なので、Iでピカピカ感がきついと思ったらIIにプラス補正がよかったりする。E-PL2 / M.ZUIKO DIGITAL ED 9-18mm F4-5.6 / 絞り優先AE / ポップアートII + ソフトフォーカス効果 / 4,032×2,688 / 1/320秒 / F8 / 0.7EV / ISO200 / WB:オート / 11mm(22mm相当)
暖色系のトイフォトIII。たそがれっぽい風情が出せる。昼過ぎなんですけどね。E-PL2 / M.ZUIKO DIGITAL ED 9-18mm F4-5.6 / 絞り優先AE / トイフォトIII / 4,032×2,688 / 1/640秒 / F8 / 0EV / ISO200 / WB:オート / 18mm(36mm相当)こちらのトイフォトIIは寒色系。青空を強調するのにはいいかも。E-PL2 / M.ZUIKO DIGITAL ED 9-18mm F4-5.6 / 絞り優先AE / トイフォトII / 4,032×2,688 / 1/800秒 / F8 / -0.7EV / ISO200 / WB:オート / 9mm(18mm相当)
普通に撮ったらすごく地味なシーンなのだけれど、ドラマチックトーンだと面白い画になる。E-PL2 / M.ZUIKO DIGITAL ED 9-18mm F4-5.6 / 絞り優先AE / ドラマチックトーン / 4,032×2,688 / 1/50秒 / F8 / -1EV / ISO200 / WB:オート / 10mm(20mm相当)ファンタジックフォーカスは、くどすぎないボケ具合が魅力。バリエーションもエフェクトもないけど。E-PL2 / M.ZUIKO DIGITAL ED 9-18mm F4-5.6 / 絞り優先AE / ファンタジックフォーカス / 4,032×2,688 / 1/800秒 / F8 / 0.3EV / ISO200 / WB:オート / 14mm(28mm相当)
コントラストが弱めのラフモノクロームIIは暗部の階調がもう少し出て欲しいときに便利。E-PL2 / M.ZUIKO DIGITAL ED 9-18mm F4-5.6 / 絞り優先AE / ラフモノクロームII / 4,032×2,688 / 1/50秒 / F8 / -0.3EV / ISO200 / WB:オート / 9mm(18mm相当)普段なら間違いなく撮らないシーンなのに、なぜかシャッターを切ってしまうのがドラマチックトーン。E-PL2 / M.ZUIKO DIGITAL ED 9-18mm F4-5.6 / 絞り優先AE / ドラマチックトーン + フレーム効果 / 4,032×2,688 / 1/50秒 / F8 / 0EV / ISO200 / WB:オート / 9mm(18mm相当)


北村智史
北村智史(きたむら さとし)1962年、滋賀県生まれ。国立某大学中退後、上京。某カメラ量販店に勤めるもバブル崩壊でリストラ。道端で途方に暮れているところを某カメラ誌の編集長に拾われ、編集業と並行してメカ記事等の執筆に携わる。1997年からはライター専業。2011年、東京の夏の暑さに負けて涼しい地方に移住。地味に再開したブログはこちら

2011/4/19 00:00