EOS Kiss X4を買ったら一度やってみようと心に決めていたことがあって、正直なところ、純粋混じりっ気なしのおばかネタなのだけれど(撮った写真をちらっと見ただけでもおばか加減がわかるはず)、それを今回ご紹介しようと思う。
さて、先代のEOS Kiss X3までは露出補正の幅が±2EVだったのが、EOS Kiss X4から±5EVに拡張された(EOS 7Dのほうが先ですけど)。これまでは、EOS-1D系が±3EVの範囲、EOS-1D系以外は±2EVの範囲というのがキヤノンの基本ラインだったのが、唐突に±5EVである。
±3EVあればたいていのシーンで不満も不便もないと思うが、±2EVだと、もうちょっと足りない、なんてことがたまにある。まあ、たまになんだから勘弁してやろうよ、とも思う反面、たまにだから慣れてない分、余計に腹が立つというのもある。
まあ、設計の難易度でいえば、±2段でも±8段でもたいして違いはない。パラメーターをちょこっと変えるだけでOKなはずだ。問題はユーザーインターフェイス、つまり、表示機能である。EOS Kiss X4は上面に表示パネルがないから、ファインダー内と液晶モニターの撮影機能画面の2か所をいじればいい。後者は場所柄小細工がやりやすいとはいえ、±5段ものバーグラフ表示なんかまじめにやったら幅ばっかり食って邪魔っ気間違いなしだ。
そういうわけでキヤノンがやったのは、見た目は変えない、という手法。露出補正量が±2段の範囲内では従来と同じ表示をやって、それを超えて補正した場合は、補正量のドットがバーグラフの左右端になるようハーグラフ全体がスライドするようになっている。例えば、プラス3段補正した状態では、バーグラフの右端がプラス3段、左端がマイナス1段になる、といった具合。これならバーグラフの幅を広くする必要もないし、ほかの部分への影響もないのでコスト面でもいい。とても合理的だ。
露出補正中の画面。プラス2EV補正の状態 | さらに、プラス補正。バーグラフがスライドして表示するようになっている |
で、プラス5EVまで補正すると、こうなる。うまく考えたなぁって感じの表示方法だ。 | ちなみに、AEBを併用すると、なんと最大±7EVもの補正が可能になる。いらないと思いますけど |
問題は、ファインダー内表示のほう。こちらは液晶モニターよりもずっとシンプルかつツブシの利かないデバイスである。幅を広げるのは容易ではない。スペースには限りがあるし、視認性も考えないといけない。コストの問題も無視できない。±2段のバーグラフを±3段に拡張するだけで、点けたり消したりするドットの数は6個増えることになる。±5段にするには実に18個増だ。使用頻度が高い項目(例えば、オートライティングオプティマイザの設定状況とか)なら増やす甲斐もあるかもしれないが、下手をしたらそのカメラの一生のあいだに一度も点灯しない可能性すらあるドットのために、コストをかけるのももったいない。
というのもあってのことだろう、EOS Kiss X4のファインダー内表示は±2段のまま。つまり、EOS Kiss X3などと同じ。表示の内容とかそれぞれの位置関係とかも基本的には同じである。ちなみに、EOS 7Dはそこそこにコストがかかっているようで、ファインダー内表示も上面の表示パネルもともに±3段となっている(補正範囲はEOS Kiss X4と同じく±5段)。
じゃあ、バーグラフの範囲を超えたらどうなるのかというと、矢印代わりの三角マークが点灯する。それだけ。使用説明書を見比べてみた感じでは、EOS Kiss X3のパーツにこの三角マーク×2個が追加されているだけっぽい。なので、マイナス2.3段補正もマイナス4.7段補正も表示上はまったく同じ。三角マーク1個だけである。
まあ、ニコンもバーグラフの表示範囲を超えた補正をやると、やはり三角マークだけ表示になるが、露出補正ボタンを押したときだけは数字で補正量を表示してくれる。キヤノンがそこまでのサービス精神を持ち合わせていないからなのかはわからないが(もしかしたら大人の事情ってのがあるのかもしれませんけど)、ともあれ三角マーク1個である。
もっとも、±2段以上の補正が必要なシーンはそんなにない。なので、実用的には±2段のバーグラフで用が足りないケースもあまりないはずだ。補正量にしたところで、何も±5段までなくたって十分だろう。EOS-1D系と同じ±3段でもいいし、欲ばっても±4段あれば……っていうのは考えると思う。
でももし、±3段にしたとして、そうするとあとでまた「あっちは±5段なのに、どうして?」とかチクチクいわれてもつまらないよねぇ。だったら、あっちに揃えとこうか。いらないと思うけどさぁ。みたいな会話があったかどうかは知りませんけどね。それにしたって、AEBも組み合わせると、実に最大±7EVまで補正できちゃうっていうのはどうなんだろうという気はする。
でまあ、±5段まで補正できるようになったんだから、きっちり使ってみよう、と。つまり、プラス5段補正かマイナス5段補正だけで撮ったらどうなるか試してみた次第。
先に書いてしまうけれど、マイナス5段補正のはやめにした。何枚か試したところ、どう見ても真っ暗すぎだったからだ。実画像をパソコンのモニターの画面で見る分にはなんとなく何かが写っているような気がしないでもないのだが、EOS Kiss X4の液晶モニターで見ている分にはもうただの真っ暗。オール黒つぶれ状態にしか見えなかったのである。なので、今回はプラス5段補正のみやってみた。
なんたって、純粋混じりっ気なしのおばかチャレンジである。写っているのは、画面の大半が白飛びというどオーバー写真のオンパレード。笑っちゃうぐらいに真っ白なのだ。
プラス5EV補正をすると、画面の大半は白飛び。しかも、ISO2500とかまで感度アップしないと手ブレ限界速をキープできない | 今回はISOオート時の上限感度をISO3200にした。撮った写真のだいたい1/4がISO3200になってた |
が、こんなお遊びができるのも、実はEOS Kiss X4ならでは。というのは、高感度撮影時の画質が相当によくないと、かなり仕上がりがきびしいことになるからだ。例えば、ISO100のままでプラス5段補正すると、明るい野外でもF5.6で1/10秒ぐらいになってしまう。ちょっと日陰とかに入ったら、IS(手ブレ補正機構)付きレンズだって間違いなくアウト。今回は、ISOオートで上限感度をISO3200に設定したが、撮った画像の半分はISO1000以上、1/4ぐらいがISO3200という結果である。高感度に強いEOS Kiss X4だから楽しめたというわけだ。まあ、何の役にも立ちませんけどね。
- 作例のサムネイルをクリックすると、リサイズなし・補正なしの撮影画像をダウンロード後、別ウィンドウで800×600ピクセル前後の縮小画像を表示します。その後、クリックした箇所をピクセル等倍で表示します。
2010/7/21 00:00