Leofoto FIELD REPORT 三脚のある美しい写真

特別な“改造三脚”で心静かに自然風景を表現する

辰野清さんがプロデュースする風景撮影に特化した三脚「LS-364CTK+LH-47TK」

朝の逆光でミズバショウが輝く様子に圧倒させられた。センターポールを省いたLSシリーズはローポジションへ素早く移行できるので、突然の光芒にも対応できた
FUJIFILM GFX 50S/GF45-100mmF4 R LM OIS/45mm(36mm相当)/絞り優先AE(F22、1/20秒、-1.7EV)/ISO 400/WB:オート

卓越した画面構成により、時に力強く、時に厳かな風景写真を描き出す辰野清さん。風景と心静かに向き合い、画面を組み立てていく過程において、三脚は絶対に欠かせない。

そんな重要機材をより理想的な形にするために、辰野さんのプロデュースによって「LS-364C」(三脚)と「LH-47」(雲台)をベースにあらゆるカスタマイズが施された特別な三脚「LS-364CTK+LH-47TK」が、この春に発売される。辰野さんのこだわりが詰まった三脚の魅力を、ご本人に語ってもらった。

辰野清

1959年生まれ、長野県在住。第11回前田真三賞受賞。写真集『凛の瞬』『余韻』、著書『超実践的フィルターブック』など。豊かな構成力と詩情あふれる作風で日本の風景表現の物語性を追求している。

※本企画は『デジタルカメラマガジン2023年5月号』より転載・加筆したものです。

カスタムされた三脚で心ゆくまで風景と対峙する

風景写真における三脚は、シャッター速度という制約を取り払い、思いを意のままに描ける道具だ。より感情的に伝える風景表現に一歩近づける。さらには三脚にカメラをセットし心静かに自然と対峙することで、ある種のヒーリング効果も得られる。もちろん構成を丁寧にまとめられるのは最大の利点だ。

私にとって手持ち撮影では得られない表現の幅とそれによる心のゆとりは三脚があってのこと。その重要な機材が自分の理想の形であってほしいという願望は、写真表現者なら誰もが思い描くのではなかろうか。

今春発売されたLS-364CTKは撮影現場での実用性を重視し、私の思う使い勝手の良さのみで開発された三脚だ。つまり、風景写真家のわがままな注文をストレートに反映していただいた“改造三脚”である。

既成のLS-364Cがベースではあるが、同じパーツは36mm径のカーボン脚部くらいで、それ以外は新設計のパーツを組み込んだほとんど別物の仕様だ。

LS-364CTK+LH-47TK+UC-05+AM-5JP
価格(税込):13万2,000円(傘ホルダーUC-05+AM-5JP付き)、11万2,200円(三脚+雲台のみ)/全伸長:2,030mm/伸長:1,713mm/収納高:690mm/最低高:220mm/段数:4段/最大脚径:36mm/耐荷重:20kg/質量:2,620g

※数量限定で、傘ホルダーセット(UC-05+AM-5JP)がセットになったものと三脚+雲台のみのモデルが販売されます。後日、三脚・雲台・傘ホルダーセットの単品も販売予定です

風景写真家のわがままなこだわりを詰め込んだ限定三脚

では、LS-364CTKの主だった改造点を1つずつ紹介したい。まずは特製アンブレラホルダーの標準装備が挙げられる。用品メーカー各社のアンブレラホルダーは固定力や強度が弱いものが多く、私は長年傘立てを自作して使ってきた。その自作アイデアをもとに一から設計をしていただいた。軽量で自由に動くのはもちろん、ロック力はホルダー部を持って三脚を振り回せるくらい強い。

マジックアームAM-5の固定力を向上させたモデルに、傘の柄をロックできる機構を付けたホルダーを組み合わせたアイテムが搭載される。着脱可能なアンブレラホルダーが標準装備された業界初の三脚だ
傘の装着例。なお、傘は付属していない
降り続く雨に渓流脇の森が緑盛を謳っていた。雨天の撮影では傘立てが必須。雨による機材トラブルを避けるためにも付属のアンブレラホルダーは強い味方だ
FUJIFILM GFX 50S/GF45-100mmF4 R LM OIS WR/78mm(62mm相当)/絞り優先AE(F22、2.5秒、-0.7EV)/ISO 400/WB:オート

脚の接合部でもある台座パーツは、アンブレラホルダーの接合部でもあるので強度を持たせ厚みを加えた新設計。固定用の六角レンチも収納できるようにデザインされている。

台座の強度アップが図られていて安定感が増している
収納式の六角レンチでいつでも三脚のメンテナンスやパーツ類の着脱が行える
脚部の付け根には辰野さんのサインが刻印されている

さらにLS-364Cよりパイプ1本あたりの長さを約4cmずつ長くして伸長1,713mmを確保。カメラ装着時のファインダーの位置は1,800mm前後になるので、傾斜地では使いやすいはずだ。

また5段ではなく4段仕様にこだわったのは現場での機動性を重視したため。開脚改造を最初から施してあり通常より脚角が2度ほど広がる。風による不安定さも解消され、カメラブレ対策にも役立つだろう。

LS-364Cより伸長が150mm長く、開脚角度も23度から25度に拡大。通常は1本だけのウレタングリップも2本に装着され、カラーもブラックで統一感を出している

さらに自由雲台LH-47TKもカスタムしている。メインロックノブにはLH-55用の大きなロックノブを移植してもらった。これで同じ力でもさらに強い力で固定できる。

通常は別売のシリコンカバーも標準装備なので、冬期も滑りづらく手に優しい。限りなく風景写真に特化した三脚だが、ぜひ現場でそのこだわりを体感してほしい。

大型ノブを採用した雲台は、重量機材搭載時もしっかりと固定できる。カラーは深みのある特注のシルバー。すべてのノブにシリコンカバーが装着されている。上にギア雲台G2を搭載して機動力と緻密さを両立させるのが辰野流だ
静寂を映す芽吹きの山池。水面の水平を出すのは難しいが、自由雲台にギア雲台G2を搭載すると、上下左右の精緻なこだわりを正確に決められておすすめだ
FUJIFILM GFX 50S/GF100-200mmF5.6 R LM OIS WR/158mm(125mm相当)/絞り優先AE(F11、1/10秒、-0.7EV)/ISO 400/WB:太陽光

制作協力:株式会社ワイドトレード

辰野清