交換レンズレビュー
NIKKOR Z 135mm f/1.8 S Plena
こだわったのは“丸ボケの丸さ” 解像力にも不満なしの大口径中望遠レンズ
2023年12月6日 07:00
ニコンから発売された大口径単焦点レンズ「NIKKOR Z 135mm f/1.8 S Plena」。“空間が満たされている”というラテン語に由来する「Plena」(プレナ)という名称が与えられている点からも、このレンズへの期待と自信が伺えます。高い画質性能はもちろん、大口径ながら画面周辺の丸ボケの形状は今までにない美しさを表現してくれるレンズです。
外観・操作性
金属製の外装はマットな質感に仕上げられ、とても高級感があります。大口径望遠レンズということもあってか、カメラに装着してみるとずしりとした重みを感じます。
ピントリングは程よい重みがあり、滑らかな動きでストレスを感じることはありません。そのピントリングの手前にはコントロールリングを装備。このリングで絞り値や露出補正値をレンズ側で変更することもできます。
また、レンズの先端側にはレンズ脱着時に掴みやすいように滑り止めのゴムが配置されています。
最短撮影距離は0.82mで最大撮影倍率は0.2倍です。マクロレンズのようなクローズアップはできませんが、アサガオを画面にすっぽり収められるぐらいです。綺麗にぼかした背景を入れつつ花をクローズアップするにはちょうどいい倍率でしょう。
ボケ
円形絞りを採用したレンズは多く見られますが、本レンズもその例に倣っています。しかも、点光源をボカしたときに出るいわゆる「円ボケ」または「丸ボケ」(まるボケ)が、絞り開放時の画面の隅でも形を変えず真円に近いまま。これがこのレンズ最大の特徴といえるでしょう。
大口径レンズほど周辺のボケの形状がレモン型になるものですが(いわゆる口径食)、このレンズだと画面全体に渡り、自然な円ボケを作り出すことができます。
丸ボケは木漏れ日や水面の反射、葉のテカリ、イルミネーションのような点光源をぼかすことで現れます。このボケを背景に入れることで、画面にキラキラと輝くような華やかさを感じさせることができます。これがまさに“空間を満たす”「Plena」という名前につながっていくのかと想像します。
ボケ自体の滑らかさにも特筆すべきものがあります。丸ボケ以外の画質も良く、特にシャープ感はかなりものです。
作例
最短撮影距離付近で撮影した、少し大ぶりなアサガオ。F4.0まで絞っているのですが、花芯の先端部の細かな解像力に驚きました。マクロレンズのようなクローズアップはできませんが、これぐらいの大きさに花を撮れるのなら十分でしょう。
丸ボケの美しい形状が売りのレンズですが、普通にボカしたときもとろけるような滑らかさです。レンズの持つボケ描写と花と背景を選ぶことで、優しい色彩のグラデーションが生まれました。お気に入りのカットです。
画面周辺の丸ボケがレモン型になりやすいという、一般的な大口径レンズの難点をクリアしたのがこのレンズの特徴です。背景の木漏れ日のボケを見てわかる通り、絞り開放でも丸いボケになっています。
丸ボケは前ボケにも現れます。花畑の中央部分にピントを合わせると、背景はもちろん、手前の花もボカすことができます。このように中距離まで離れても、大きなボケが作れるのは大口径望遠レンズの魅力ですね。
花に虫がやってきたところを捉えました。夕日に当たって細かい毛や翅が輝いています。
AFは静かにすっと合う感じ。厳しい条件でも迷うことが少なく優秀です。例えば大きな前ボケ越しに奥の花を狙う時や、夜の明るい背景を前にシルエットの被写体にしてピントを合わせるときなどでも大丈夫でした。逆光でも安定感があります。
背後の丸ボケもほんのり夕日の色に染まっています。逆光なのでフレアが出やすいシーンですが、自然なコントラストがあり、細部までシャープに解像されていますね。
街の灯りを背景にして、植物の葉をクローズアップしました。葉に光が当たらず暗かったのですが、AFでもピントが合ったので助かりました。木漏れ日のボケとは違って、ライトの点光源のボケはくっきりとした輪郭が出ています。暗い場所でも感度を抑えることができるのも大口径レンズの利点です。
まとめ
とにかく、きれいな形の丸ボケに驚かされました。もちろん実際の撮影は丸ボケ一辺倒にはなりませんが、解像感や階調表現にも優れており、大口径レンズとしての魅力も高いレンズです。
今回は花を中心に撮影しましたが、ポートレートはもちろん、スナップ撮影などでも理想的なボケが得られることでしょう。他に類をみないボケの美しさを誇るレンズで、作品を生みだす楽しさを味わってください。