交換レンズレビュー
α7ユーザー待望の標準マクロレンズ
高画素機にも対応できる描写力――FE 50mm F2.8 Macro
2016年12月6日 07:00
ソニーの35mmフルサイズ対応Eマウントマクロレンズの2本目として登場したのがFE 50mm F2.8 Macroだ。これまでフルサイズ向けEマウントマクロとしては90mmのFE 90mm F2.8 Macro G OSSのみのラインナップでありやや寂しかったが、新たによりワイドで撮影できる50mmマクロが追加されたことでマクロ域の撮影可能領域がグッと広がった。
50mmといえばいわゆる標準レンズであるが、マクロの50mmはやや広角の部類であり、テーブルフォトや料理など室内の撮影で使いやすいほか、屋外でも背景まで入れ込んだ臨場感のあるマクロ撮影が可能だ。また、本レンズはしっかりした写りでありながら「非Gレンズ」のためGレンズのFE 90mm F2.8 Macro G OSSにくらべて安価であることも魅力の1つだ。
FEレンズには同じ焦点距離であるFE 50mm F1.8も存在するが、こちらは最大撮影倍率が0.14倍と近接撮影には弱く、寄って撮ることが多いなら等倍マクロから遠景まで幅広く撮影が可能なFE 50mm F2.8 Macroが使い勝手が良いだろう。
発売日 | 2016年9月24日 |
実勢価格 | 税込5万4,950円前後 |
マウント | FEマウント |
最短撮影距離 | 0.16m |
フィルター径 | 55mm |
外形寸法 | 70.8×71mm |
重量 | 約236g |
デザインと操作性
レンズ構成は非球面レンズ、EDレンズを含む7群8枚で、重量は約236gと軽量。今回使用したα7R II(約582g)とのバランスも非常に良い。
レンズ全長は71mmとコンパクトだが倍率が上がる(近接撮影になる)につれレンズ先端が伸びてくる構造となる。この際、伸びた先端部には倍率や距離表示が現れ撮影の目安に使うことも可能だ。最短撮影距離は16cmで等倍撮影時には前玉ギリギリまで寄って撮影することができる。
軽量な作りにもかかわらず、外装は剛性を感じるしっかりしたものでボディとの質感のバランスも良好。防塵防滴に配慮した作りなのもポイント。3段階のフォーカスレンジリミッターやフォーカスホールドボタンも備えるなど本格的な作りになっている。
レンズフードは付属せずオプションとしても用意されていないが、前玉はかなり奥まったところにあるため通常撮影ではフードは必要ないと感じる。もしどうしても必要な場合は55mmのフィルター用ネジの外側に62mmのネジも切ってあるため、別途62mmのねじ込み式フードを用意すれば使用できるだろう。
マクロレンズで重要なフォーカスリングは電子式で適度なトルクがあり良好だが、最短撮影距離から無限遠までMFで操作すると約1.7周も回さなければならないため大変だ。三脚を使ったシビアな撮影では厳密なピント合わせができるため良いが、通常のスナップや機動性が求められるシーンではMFの利用は現実的でないかもしれない。このようなシーンではMFでピント合わせをするよりもDMF(AF+MF)を使って撮影した方が快適だ。
AFにはDCモーターを使用しており、正確ではあるがジリジリと動き速いとは言えない。特にマクロ撮影時にピントが背景に抜けてしまうような大ボケ時には再合焦まで1秒以上かかってしまう。そのため、AF撮影時はフォーカスレンジリミッターを活用することで撮影の快適さが大幅に増すだろう。
作品
開放からシャープだ。F2.8で撮影した蝶を良く見てみると体毛の1本1本までがきっちり解像していることがわかる。
落ち葉を地面とほぼ同じ高さから絞り開放でローポジション撮影した。マクロ域ではこのように非常に浅い被写界深度と大きなぼけでスナップも楽しめる。
直径1cmにも満たない小さな花に寄って撮影した。背景のボケも緑とピンクがなめらかに混ざり合う。ただし、左上のボケた花のように強い光が当たってコントラストが高くなっている被写体のボケは人によっては少しうるさく感じることがあるかも知れない。
前ボケから後ボケまでを繋げるように小物を撮影。柔らかい光が当たっている状況なら前後ともにこのように非常に柔らかく滑らかなボケ味を楽しめる。
色鉛筆の先に最短撮影距離まで寄って撮影した。小さな鉛筆の先端もここまで大きく撮影できるだけでなく、浅い合焦面を見ると木や塗装の質感、僅かについているホコリまで実際の姿を余すことなく描写している。
夜間、道端で見つけたタンポポの綿毛にクローズアップしてみた。かなり暗い状況だったが開放F2.8と明るいためα7R IIの5軸手ブレ補正の助けも借りて手持ちで撮影できた。奥の玉ボケを見ると最外周部でやや口径食がみられるものの悪くはない。玉ボケの輪郭も綺麗だ。
太陽光が木漏れ日として直接射し込むというやや厳しい状況で撮影したが、ゴーストやフレアは発生しておらず良好な逆光耐性も有する。
遠景の解像感を見てみると、開放から非常に良く解像していた。さらに2段絞ったF5.6では驚くほどシャープに解像し、α7R IIの約4,240万画素を余すことなく引き出せる実力を持っていると感じる。
まとめ
今回FE 50mm F2.8 Macroを使って感じたのは、その優れた描写力だ。特に中央付近のキレは素晴らしく開放から自信を持って使える。非Gレンズでありながら高画素機にも十分応えてくれる妥協のない仕上がりになっており、コストパフォーマンスの高いレンズだと感じた。
フォーカスレンジリミッターやフォーカスホールドボタンなどをうまく使いながらこのレンズに慣れることが快適な操作感を得るためのポイントになる。
マクロレンズの定番と言えば90mmだが、撮影した写真はどれも「マクロっぽい」単調な仕上がりになりがちだ。しかし、珍しい50mmという焦点距離のマクロレンズは背景に写る範囲も広がり、いつものマクロ写真とは違う新鮮な印象を作りやすく、通常のスナップにも使えるなど汎用性も高い。
日常使いとしての1本だけでなく、今までのマクロレンズでマンネリしてきた人にもぜひ使ってみて欲しいレンズだ。