オリンパスM.ZUIKO DIGITAL ED 75mm F1.8

交換レンズ実写ギャラリー
Reported by 礒村浩一

E-M5 / M.ZUIKO DIGITAL ED 75mm F1.8 / 約7.4MB / 3,456×4,608 / 1/200秒 / F1.8 / -0.7EV / ISO800 / 75mm

上質な楽しみ方を提案するハイグレードレンズ

 オリンパスから発売された「M.ZUIKO DIGITAL ED 75mm F1.8」は、35mm判換算で150mm相当の画角となるマイクロフォーサーズ用の大口径中望遠レンズである。9群10枚のレンズ構成のうち、ED(特殊低分散)レンズ3枚、HR(高屈折率)レンズ3枚を使用して軸状色収差、球面収差を抑えたハイグレードレンズだ。この記事の執筆時における実勢価格は約10万円と、マイクロフォーサーズ用のレンズとしては高価な部類に入る。

 鏡筒は高級感のあるシルバーの金属外装。幅の広いフォーカスリングのローレットパターンがデザイン上のアクセントにもなっている。質量は305gと、手にすると金属の触感とともに心地よい重さを感じる。OM-D E-M5に装着すると多少大柄に見えるが、実際に構えるとレンズ鏡筒の太さもちょうど良く、ウエイトバランスも良い。フォーカスリングのトルクも程よい重さで、マニュアルフォーカス時にピントのピークを勢いで過ぎてしまうようなことはない。

 同レンズには、オプションとして専用フードの「LH-61F」が用意されている(実勢価格約9,000円)。レンズと同じくシルバー仕上げで、一体感のあるデザインだ。ただしフードを装着するとレンズ全長が長くなり、その太さと相まってE-M5にはかなり大ぶりな印象となる。ただしフード内壁には内壁反射防止のための起毛処理がなされており、遮光効果は高い。ハレーションカットのためには常時装着しておきたいところだ。なお、レンズへの取り付けは一般的なねじ込みや切り込み合わせではなく、鏡筒前部にフードをかぶせて固定ネジで締め付ける方式となっている。

ボディが小さいため大柄なレンズに見えるが、手に馴染むサイズオプションのレンズフード「LH-61F」を装着したところ

 もうひとつオプション品として、専用レンズキャップの「LC-61」も発売されている(実勢価格約5,000円)。こちらもシルバーカラーとなっており、レンズ先端にかぶせて使用するタイプだ。ちなみにこのキャップを装着するためには専用フードは外さなければいけない(逆付け時も装着不可)。撮影時の見た目にこだわりたいユーザー向けの製品といえるだろう。フード先端にかぶせることができるキャップであれば、より実用的だったのではないだろうか。

かぶせ式の専用レンズキャップ「LC-61」を装着

ぼけ方の検証

 M.ZUIKO DIGITAL ED 75mm F1.8は、開放F1.8の浅い被写界深度による大きなぼけを得ることができるレンズだ。そこでカメラを固定して、絞り値を変化させながら同じ被写体を撮影し、ぼけ方の変化を検証してみた。

 被写体の花から最短撮影距離である0.84mに近い位置にカメラを三脚で設置。花の雄しべにピントを合わせ、絞り値を変化させながら撮影を行なった。

 撮影した画像を見ると、開放のF1.8では雄しべの先端にしかピントがこないほど浅い被写界深度となり、背景も輪郭が溶け込むように大きくぼける。明るいレンズの開放絞り時に発生しやすいハロによるコントラストの低下はほとんど見られない。

 次に絞って撮影した画像を見ると、F4あたりで花弁全体にピントが合うようになり、F8前後で背景の葉の輪郭が整ってくる。F16から最大絞りのF22まで絞り込んだ画像では、花から葉まで全体が輪郭がはっきりとしている。ただしF22では回折による画質低下が見られ、画像全体の解像感の低下に繋がっているようだ。撮影結果を見る限り、この撮影条件ではF5.6~F8あたりがいちばん解像力が優れる結果となった。

共通設定:E-M5 / M.ZUIKO DIGITAL ED 75mm F1.8 / 4,608×3,456 / +0.3EV / ISO200 / 75mm

F1.8F2
F2.8F4
F5.6F8
F11F16
F22

ポートレートレンズとしての検証

 一般的に、明るい開放F値を持つ中望遠レンズは“ポートレート向き”と呼ばれることが多い。実際にオリンパスでもこのレンズを「ハイグレードポートレートレンズ」と位置づけているようだ。そこで実際に人物撮影で検証してみることにした。

 なお、撮影時は小雨の降る曇天だったため、カメラのISO感度は400に設定している。仕上がり設定は「Portrait」で統一した。

バストアップ、開放絞りF1.8での撮影。AFにてモデルの左目にフォーカスした。フォーカスの合っている目の周辺、睫毛、および髪の毛の解像力は非常に優れている。髪に付いた小雨の水滴までもしっかりと解像している。肌の肌理も自然だ。徐々にアウトフォーカスとなる右目へのぼけ方もとても自然。ぼけに溶けてこんでいく毛先にも雑味がなく好印象といえる。被写体との距離が近いバストアップ撮影であるだけに背景は大きくぼけ、そこにあるべきものがすべて溶け合っている。人物を浮かび上がらせるための背景処理には非常に有効だ。E-M5 / M.ZUIKO DIGITAL ED 75mm F1.8 / 約6.6MB / 3,456×4,608 / 1/320秒 / F1.8 / +1EV / ISO400 / 75mm
上半身。同じくF1.8で左目にフォーカス。被写体から少し離れた分、顔全体に平均してフォーカスが合っている。それでいて斜めに向いた体の手前と奥がアウトフォーカスとなることで、人物に立体感が生まれている。フォーカスがあっている箇所の髪の質感や浴衣の帯の衣目がしっかりと描写されているからこそアウトフォーカスが活きてくるのだ。また背景にある植え込みのぼけが、きれいなグリーントーンとなり人物を浮き上がらせる。E-M5 / M.ZUIKO DIGITAL ED 75mm F1.8 / 約7.8MB / 3,456×4,608 / 1/320秒 / F1.8 / +1.3EV / ISO400 / 75mm
上半身カットと同じ場所にて引きの画。同じく開放絞りF1.8。AFにてモデルの顔にフォーカスして撮影。モデルの全身にほぼフォーカスが合う。レンズの実焦点距離は75mmだが、実際の画角は150mm相当となるため、被写体からは想定以上に離れての撮影となる。それだけに背景もぼけにくく輪郭がはっきりしてきた。それまでの溶けるようなぼけ方から、二重ぼけのようなぼけ方に変化したことによりすこし雑味が出てきた。E-M5 / M.ZUIKO DIGITAL ED 75mm F1.8 / 約7.7MB / 3,456×4,608 / 1/250秒 / F1.8 / +0.7EV / ISO400 / 75mm
最短撮影距離までモデルに近づきF3.5で撮影。目元にフォーカス。開放絞りでの撮影のようなエッジの立った描写ではないが、全体に安定した描写となる。できることならばもう少し最短撮影距離を縮めて欲しいところだ。その点では同じくオリンパスのM.ZUIKO DIGITAL 45mm F1.8の方が撮影倍率は高いので、若干ではあるがよりクローズアップした撮影が可能だ。E-M5 / M.ZUIKO DIGITAL ED 75mm F1.8 / 約9.4MB / 4,608×3,456 / 1/125秒 / F3.5 / +0.7EV / ISO400 / 75mm

モデル:夏弥 
ブログ:Beautiful Summer

自然物・人工物の撮影

 ポートレートレンズを謳うM.ZUIKO DIGITAL ED 75mm F1.8だが、もちろんそれ以外の被写体においても特徴あるレンズとして使用できる。以下に実際に撮影した画像を掲載するが、浅い被写界深度を活かした撮影では自然物・人工物を問わず印象的な写真になり、とても気持ちよく撮影を進められた。EVFが優れているE-M5では、マニュアルフォーカスでの撮影を堪能することもできる。

 また35mm判換算150mm相当は、遠・中・近距離にあるそれぞれの被写体を印象的に切り取ることのできる画角でもある。これらの特徴を活かすことができれば、日常的に使用するズームレンズに加え、更にハイグレードな撮影の楽しみ方を教えてくれるレンズとして魅力を発揮してくれるだろう。

  • 作例のサムネイルをクリックすると、リサイズなし・補正なしの撮影画像をダウンロード後、800×600ピクセル前後の縮小画像を表示します。その後、クリックした箇所をピクセル等倍で表示します。

E-M5 / M.ZUIKO DIGITAL ED 75mm F1.8 / 約8.0MB / 3,456×4,608 / 1/40秒 / F4 / +0.3EV / ISO200 / 75mmE-M5 / M.ZUIKO DIGITAL ED 75mm F1.8 / 約9.1MB / 4,608×3,456 / 1/40秒 / F1.8 / -0.7EV / ISO400 / 75mm
E-M5 / M.ZUIKO DIGITAL ED 75mm F1.8 / 約8.2MB / 4,608×3,456 / 1/60秒 / F1.8 / -0.7EV / ISO400 / 75mmE-M5 / M.ZUIKO DIGITAL ED 75mm F1.8 / 約9.5MB / 4,608×3,456 / 1/50秒 / F3.2 / -0.7EV / ISO800 / 75mm
E-M5 / M.ZUIKO DIGITAL ED 75mm F1.8 / 約8.6MB / 3,456×4,608 / 1/160秒 / F2.8 / -0.3EV / ISO800 / 75mmE-M5 / M.ZUIKO DIGITAL ED 75mm F1.8 / 約9.4MB / 3,456×4,608 / 1/500秒 / F1.8 / -0.3EV / ISO400 / 75mm
E-M5 / M.ZUIKO DIGITAL ED 75mm F1.8 / 約6.1MB / 3,456×4,608 / 1/1,250秒 / F1.8 / -0.3EV / ISO200 / 75mmE-M5 / M.ZUIKO DIGITAL ED 75mm F1.8 / 約7.7MB / 3,456×4,608 / 1/4,000秒 / F1.8 / 0EV / ISO200 / 75mm
E-M5 / M.ZUIKO DIGITAL ED 75mm F1.8 / 約6.8MB / 3,456×4,608 / 1/800秒 / F1.8 / 0EV / ISO200 / 75mmE-M5 / M.ZUIKO DIGITAL ED 75mm F1.8 / 約6.0MB / 3,456×4,608 / 1/1,600秒 / F1.8 / +0.7EV / ISO200 / 75mm
E-M5 / M.ZUIKO DIGITAL ED 75mm F1.8 / 約9.2MB / 3,456×4,608 / 1/640秒 / F4 / +0.3EV / ISO200 / 75mmE-M5 / M.ZUIKO DIGITAL ED 75mm F1.8 / 約7.3MB / 3,456×4,608 / 1/500秒 / F4 / +0.7EV / ISO200 / 75mm
E-M5 / M.ZUIKO DIGITAL ED 75mm F1.8 / 約7.2MB / 3,456×4,608 / 1/50秒 / F1.8 / 0EV / ISO200 / 75mmE-M5 / M.ZUIKO DIGITAL ED 75mm F1.8 / 約5.8MB / 3,456×4,608 / 1/200秒 / F1.8 / +1.7EV / ISO250 / 75mm
E-M5 / M.ZUIKO DIGITAL ED 75mm F1.8 / 約6.9MB / 3,456×4,608 / 1/640秒 / F1.8 / +1EV / ISO800 / 75mmE-M5 / M.ZUIKO DIGITAL ED 75mm F1.8 / 約5.9MB / 3,456×4,608 / 1/800秒 / F1.8 / +1.3EV / ISO800 / 75mm
E-M5 / M.ZUIKO DIGITAL ED 75mm F1.8 / 約7.3MB / 4,608×3,456 / 1/1,600秒 / F1.8 / +1.3EV / ISO800 / 75mmE-M5 / M.ZUIKO DIGITAL ED 75mm F1.8 / 約6.1MB / 3,456×4,608 / 1/400秒 / F1.8 / +0.3EV / ISO800 / 75mm








礒村浩一
(いそむらこういち)1967年福岡県生まれ。東京写真専門学校(現ビジュアルアーツ)卒。広告プロダクションを経たのちに独立。人物ポートレートから商品、建築、舞台、風景など幅広く撮影。撮影に関するセミナーやワークショップの講師としても全国に赴く。近著「マイクロフォーサーズレンズ完全ガイド(玄光社)」「今すぐ使えるかんたんmini オリンパスOM-D E-M10基本&応用撮影ガイド(技術評論社)」Webサイトはisopy.jp Twitter ID:k_isopy

2012/7/17 00:00