デジカメアイテム丼

旧ソビエト時代のレンズが手軽に楽しめる

ギズモン「Industar-61 L/D 55mm f/2.8 for ミラーレス」

この度ギズモンから旧ソビエト時代のレンズ「Industar(インダスター)-61 L/D 55mm f/2.8 for ミラーレス」が発売された。レンズ自体は以前から流通しているが、ミラーレスカメラ用のマウントアダプターがセットになっているのが特徴。

このレンズはL39マウントで、キヤノンEF-M、ソニーE、富士フイルムX、マイクロフォーサーズ、Nikon 1の各マウントアダプターがそれぞれ付属する。

紙の筒に入っているのも面白い
内容。レンズキャップやギズモンロゴ入りのポーチも付属
現代のレンズに慣れている我々から見ると、ややチープに見える。金属製だが約130gと軽量で、“ずっしり感”は無い

ミラーレスカメラですぐに使えるパッケージになっているということと、(一応新品の)交換レンズとしては破格の税込6,980円とあってか、最初の入荷分は発売日に完売。現在も予約が集中しているとのことだ。

このレンズはもともと、FED-5という旧ソビエト時代のレンジファインダーカメラの標準レンズだったものだ。今回デッドストック品から程度の良い物を選び、整備して販売している。

LUMIX DMC-GH3に装着したところ

チープな作りだが、むしろそれを楽しみたい

早速開封してみたところ、金属製というのに高級感は今ひとつ。絞り指標や距離指標の文字は彫り込みだが塗装にムラがあったり、フォーカスリングのトルクもやや重いところと軽いところがあり、一定では無い……などなど、仕上げのアバウトさは見て取れる。

しかしながら、旧ソビエト時代のデッドストック品が販売されるということだけでもファンにはありがたく、大目に見たいところ。もちろん実用上の問題は無い。

レンズは3分4枚のテッサー型。先端には40.5mmのネジが切ってあり、フィルターやフードも装着できる
キリル文字が旧ソビエト製であることを物語る
マウント側。やや汚れが付いていたりしたが、マウントアダプターへの装着はスムーズだった
絞り羽根は6枚。写真は最小絞りのF16にしたところ

マウントアダプターは現代の製品らしく、特に気になるところは無かった。また、レンズの装着もスムーズに行えた。

付属のマウントアダプター(レンズ側)
マウントアダプターのボディー側
マウントアダプターをカメラに装着したところ
L39マウントはスクリューマウントのため、そのままだと距離指標が上には来ない
そこで付属の六角レンチでマウントアダプターの位置を回転させる
その結果、きちんと距離指標が真上に来た

カメラ側の設定で気をつけるのは「レンズなしレリーズ」(パナソニックの場合)をONにしておくことくらいだ。撮影モードは絞り優先(A)モードにしておけば、鏡胴の絞り値で撮影できる。

思ったより良く写る!

今回はマイクロフォーサーズ用をLUMIX DMC-GH3で試した。35mm判換算で110mm相当の中望遠レンズになる。描写はオールドレンズによくある柔らかさがあり、コントラストも現代のレンズに比べればやや落ちるが、予想よりも良く写るという印象だ。ただし流石に逆光には弱く、大幅なコントラスト低下が見られた。この辺りは、レンズの味として楽しむのが良さそうだ。

距離指標。最短撮影距離は1mと長めだ

レンズとしてのウィークポイントを挙げるならば、約1mという長めの最短撮影距離だろう。撮影中、もう少し寄れればと思う場面が多々あった。

なお、このレンズはピントリングがマウント側ギリギリに有るため、本来のL39マウントのカメラでは回しにくいとされる。だがマウントアダプターを使えばその分、前方に移動するので回しやすかった
・作例のサムネイルをクリックすると、リサイズなし、補正なしの撮影画像をダウンロード後、800×600ピクセル前後の縮小画像を表示します。その後、クリックした箇所をピクセル等倍で表示します。
・縦位置で撮影した写真のみ、無劣化での回転処理を施しています。
佇む野鳥を2mほどの距離から狙った。絞り開放だが、目立つ周辺減光は無いようだ。DMC-GH3 / 1/2,000秒 / F2.8 / 0EV / ISO200 / 絞り優先AE / 55mm
本来は鮮やかな朱色だが、ややおとなしく描写された。DMC-GH3 / 1/4,000秒 / F2.8 / -1EV / ISO200 / 絞り優先AE / 55mm
やや逆光での撮影。フレアが発生し、よく見るとゴーストも出ている。DMC-GH3 / 1/2,000秒 / F2.8 / +0.3EV / ISO200 / 絞り優先AE / 55mm
F5.6で離れた場所を狙った。2段ほど絞ればくっきり写る。DMC-GH3 / 1/1,000秒 / F5.6 / 0EV / ISO200 / 絞り優先AE / 55mm
最短撮影距離の約1mで撮影。もう少し寄りたい所だ。DMC-GH3 / 1/4,000秒 / F2.8 / 0EV / ISO200 / 絞り優先AE / 55mm
ボケは比較的、綺麗な方と思う。DMC-GH3 / 1/4,000秒 / F2.8 / -1EV / ISO200 / 絞り優先AE / 55mm
後のススキにピントを合わせているが、1本1本描写されている。前ボケ(岩)も素直なようだ。DMC-GH3 / 1/1,300秒 / F2.8 / 0EV / ISO200 / 絞り優先AE / 55mm
点光源のボケは、外周のリングが強く描写されるタイプのようだ。DMC-GH3 / 1/3,200秒 / F2.8 / -0.3EV / ISO200 / 絞り優先AE / 55mm
しっとりとした、どこか懐かしい写りが楽しめる。DMC-GH3 / 1/4,000秒 / F4 / -1EV / ISO200 / 絞り優先AE / 55mm

オールドレンズ入門に最適

マウントアダプターを使ってオールドレンズを楽しむことは、すっかり市民権を得ていると言えるだろう。しかし、これから始めたい人にはやや敷居の高さがあるかもしれない。

今回のパッケージは価格も手ごろで、そうしたオールドレンズ入門者にはうってつけだろう。L39マウントのレンズは各社が数多く生産、中古市場で大量に流通している。マウントアダプターが手に入れば、そうした様々なレンズを楽しむ入り口にもなることだろう。

本誌:武石修