デジカメアイテム丼
セコニックのタッチパネル露出計「ライトマスタープロL-478D」徹底活用
基本的な使い方からダイナミックレンジを見極める「露出プロファイル」まで
Reported by上田晃司(2013/7/11 11:59)
みなさんは単体露出計をお使いだろうか。露出を的確に知るため、フィルムカメラ時代にはアマチュアでも単体露出計を使う撮影者が多かった。しかし、撮った画像をすぐに確認できるデジタルカメラの時代になり、使わなくなった方も多い。
確かに、一般的なデジタルカメラには内蔵露出計が備わっており、カメラが自動で露出を判断してくれる。さらに、撮影した画像を確認して暗ければマイナス補正、明るければプラス補正をして再度撮影することで、ある程度イメージ通りになる。
しかし内蔵露出計は、フレミーングや画角を変えるたびに、露出もコロコロと変わる。そのため同じ被写体でも明るめと適正、暗めが混在することになる。さらに、逆光での撮影では背景の明るさに影響を受けやすく、アンダーになりやすい。
一方単体露出計を使うと、背景の明るさに影響を受けないので、主被写体の明るさのみを測れる。その数値を基にすると、被写体の明るさを変えずに複数のカットを撮影可能だ。明るさが揃っていると、写真をセレクトする際、構図や被写体の動きや表情などに集中してセレクトできる。そのため、現在でも撮影ジャンルによっては、プロの現場では単体露出計は欠かせないアイテムとなっている。
今回は、露出計の老舗であるセコニック(SEKONIC)のライトマスタープロ L-478D(以下L-478D)を使ってポートレート撮影での利用方法をご紹介しよう。
ストロボ光と環境光の「成分比」も表示
L-478Dの特徴のひとつは、カラー液晶タッチパネルを採用したことだ。そのため、スマートフォンの様な視認性と操作感を備えている。
2つ目は露出プロファイル機能。これを使えば、使用カメラのダイナミックレンジをL-478Dに登録できるため、ハイライト部、シャドー部が表示可能か一目瞭然になる。ライティングを考える際の参考になるので便利だ。
3つ目は、絞り値とシャッタースピードを設定することで、ISO感度を表示してくれるTF優先測定。また、動画撮影に役立つHDシネカメラモードなど、デジタル時代らしい機能も見られる。
測光方式は入射測光(光球、平板)はもちろんのこと、オプションのビューファインダー5°を装着することでスポット測光が可能。また、露出全体の光量に対するフラッシュ光の割合も%で表示できる。NDフィルターなどの補正値が予め登録されているも便利。補正量を計算しなくても良いからだ。
まずは露出計の使い方をご紹介しよう。自然光や定常光で撮影する場合は、太陽マークのTかF、TFのいずれかを選択する。それぞれの機能は次の通り。撮影用途に合わせて使うと良いだろう。
- T:シャッタースピードとISO感度を入力→F値が算出される
- F:F値とISO感度を入力→シャッタースピードが算出される
- TF:シャッタースピードとF値を入力→ISO感度が算出される
入射光を測定する場合の基本的な露出の測り方は、光球をカメラ側に向けたまま、被写体の前に光球をかざす。サイド光などで撮影する場合は、被写体の左右の光も測っておこう。レフ板を使って撮影する際は、レフ板を反射させた状態で露出を計る。
そうして得られた各数値を、マニュアルモードのカメラに設定する。簡単なので迷うことはないだろう。
撮影時に外部ストロボや大型ストロボを使用する際は、測定モードをストロボモード(稲妻マークのアイコン)にする必要がある。コード無しで使用する場合は、ただの稲妻マークを押そう。Cが付いた稲妻マークは、大型ストロボに使用するシンクロコードを使う場合。こうした瞬間光の露出が分かるのも、単体露出計のよさだ。
またL-478Dには、「成分比表示」という便利な機能がある。露出全体の光量に対するストロボ光の割合をパーセンテージで表示してくれるものだ。これを使うと、ミックス光などで、どの程度被写体に環境光が影響しているかが一目で分かる。例えば室内では、タングステン光がどれくらい影響しているか、屋外では外光がどれくらい影響しているかが一目瞭然。この機能を活かせば、ミックス光を避けることもできるし、逆に活かすこともできる。
自分のカメラのダイナミックレンジを把握できる
それでは、L-478Dの注目機能の1つ、露出プロファイルの登録方法をご紹介しよう。まず、露出プロファイルターゲット、露出プロファイルターゲットII、X-Rite社のColor Checkerを用意する。
そして、露出にムラがないか測定し、標準露出を基準に-3EV、±0EV、+3EVの写真3枚を撮影する。L-478Dでも入射光と反射光(18%グレーで測光)の露出を計っておく。
いよいよ付属ソフトData Transfer Softwareを使用して、露出プロファイルを生成する。まず、先ほど測った入射光と反射光の情報を入力する。
そして、±3EVで撮影した画像を選択。このときターゲットの四隅にある+印を指定すると、露光域スケールが±10EVで表示される。自分のカメラのダイナミックレンジが一目瞭然だ。
あとは、生成した露出プロファイルをL-478Dに転送するだけ。L-478Dのメニューから作成したプロファイルを選択すれば、カメラの再現域(ダイナミックレンジ)が画面内に表示される。
再現域の見方は、緑が写真を綺麗に印刷できる範囲。オレンジは許容領域でギリギリ表現可能。赤は範囲外で白とびや黒つぶれをしてしまう。この露出プロファイルを見ながらライティングをしたり、撮影するポジションを決めたりできるので便利。モデル撮影には欠かせない便利なツールといえる。
入射測光とスポット測光を応用すれば、カッコイイ日中シンクロも簡単にできてしまう。まず、スポットで空の明るさを数カ所計り、アベレージ機能を使用して平均の明るさを表示する。そして、標準露出よりも約2EV暗くなるようにカメラの設定をする。
次に入射測光を使いモデルに当たるストロボの光量を調整する。モデルは背景よりも約2EV明るくなるように調整している。その際に外光がモデルにどの程度影響しているかも把握しておく。
以上、L-478Dの魅力とポートレート撮影での使い方をご紹介した。単体露出は難しいと思っていた方も、単体露出を知らなかった方にも単体露出計の魅力が伝わったはずだ。L-478Dにカメラのプロファイルを登録することで、カメラの性能を最大限に活かした撮影も可能になる上、カメラの性能を知ることができる。これから本格的に露出にこだわって撮影したい人にはオススメできるアイテムだ。
(協力:株式会社セコニック)