ソニー「CLM-V55」

~5型ワイドの画面の外部液晶モニター

 ソニーから5型ワイド液晶パネルを備えた外付け液晶モニター「CLM-V55」が登場する。こうした製品はこれまでもあったが、CLM-V55はピントを合わせやすくする「ピーキング機能」などを搭載しながらも4万2,000円と比較的低価格になっているのが特徴だ。今回は、動画撮影における使い勝手などを試してみた。

α55に装着した「CLM-V55」。3月10日発売

 カメラの背面液晶モニターは大きくても3型程度。手持ちの際は顔に近づけられるのでよいが、三脚に装着時して動画を撮ろうとするとどうしても顔から離れがちで画面が見づらくなってしまうのが現状だ。

 そうしたこともあり、デジタル一眼レフカメラで動画撮影が可能になって以降、外付け液晶モニターを活用するプロやハイアマチュアを見かけることも多くなった。ただ、これまで外付け液晶モニターは業務向けで高価なものが多かった。

 その点、今回ソニーがリリースしたCLM-V55は比較的安価な民生という位置づけ。端子類も一般のカメラユーザーが使うであろう最小限にとどめたほか、メニューなどもシンプルで操作も簡単になっており好感が持てる。

 セットの内容は本体、シューアダプターが2種類、フード、HDMIケーブル、収納ポーチなど。バッテリーや充電器は別売になっている。対応バッテリーは「NP-FM500H」、「NP-QM71D」、「NP-QM91D」となっている。オプションのACアダプターでも駆動可能だ。

 液晶パネルは800×480ドット。入力はType AのHDMI端子のみなので、HDMI端子付のライブビュー可能なデジタルカメラでの使用が前提になる。1,080i、1,080p、720p、480i、480pなどの入力に対応している。なお、この記事で「HDMIスルー出力を搭載する」と記載していたが、実際にはスルー出力端子は無いのでご注意いただきたい。本体にモノラルスピーカーとヘッドホン出力端子(3.5mm)も備えている。

α55のライブビューを表示したところ
HDMI入力端子とヘッドホン出力端子を備える約45cmのHDMIケーブルが付属する
背面のバッテリー取り付け部バッテリーを装着したところ

大きく見やすい画面

 今回は数機種のレンズ交換式デジタルカメラと組み合わせてみたが、まずは純正となるレンズ交換式デジタルカメラ「α55」で試した。

 ホットシューにCLM-V55を装着して使う場合は、あらかじめホットシューアダプターを取り付けておく。本体には三脚穴もあるので、三脚や1/4インチネジのアームなどに装着することもできる。

シューアダプターはαシュー用(左)と一般的なタイプ(右)が付属角度や向きを調節できる
αシュータイプはレバーロックが可能

 必要に応じて付属のフードを装着しておく。このフードは折り畳み式で、非使用時は液晶モニターの保護を兼ねる。屋外での視認性はさほど悪いわけではないが、グレアパネルを採用しているために映り込みはそれなりに発生する。角度によっては、フードを付けていても映り込む場合があった。ノングレアにできる透明なシールのようなものをオプションで用意してあると良かったかもしれない。

付属の折り畳み式フードバネ入りで自動的に展開する

 ホットシューに装着し、HDMIケーブルを接続すれば準備は完了。電源ボタンを押すと数秒で起動して画面が出る。α55の3型もデジタルカメラでは大きい方だが、やはり5型ワイドは少し離れても見やすい。画面も115万ドットとあって、緻密で綺麗だ。

α55に装着したところ。向きを自在に変えられる

 動画撮影時はもちろんだが、ライブビューでの静止画撮影でも使い出があるだろう。液晶モニターの向きは自在に動かせるのでマクロ撮影などでも重宝しそうだ。

 本機のさまざまな表示や設定の機能は本体右側にあるダイヤルですべて行なう。ダイヤルは“押し込むと決定”ができるタイプで使いやすい。

操作は側面のダイヤルで行なう。上は電源スイッチ背面にはモノラルのスピーカを備えている
CLM-V55は下部に三脚穴を備えているため、カメラから離して三脚にセッティングすることもできる。長いHDMIケーブルを用意すれば、ある程度離れてライブビューを見ることも可能だα55の液晶モニター(3型)と比較したところ。大きい分、多少画面から離れても見やすい
本体のみの重量運用時の重量(本体、フード、シューアダプター、バッテリー)

 本機はモノラルスピーカーとヘッドホン出力が付いており、HDMIの音声を聞くことができる。ただし、今回試した機種はどれも録画中はHDMIに音声が出ておらず、モニターはできなかった。なお、いずれも再生時には録音された音を聞くことができた。

ピーキング表示でピントのヤマが確実にわかる

 本機の大きな特徴が「ピーキング機能」だ。ピントのあった部分の輪郭が赤色で表示されるため、ピントが合っている位置が直感的にわかる。この機能はCLM-V55自体が持っているため、どんなカメラでもピーキング表示はできる。MFでピントあわせをする場合には、非常に助かる機能だ。

 この機能はコントラストが急峻に大きく変化する部分を検出しているようで、ピントが合っていてもコントラストに大きな差がない人の肌部分などにはピーキング表示が出ない。また、同じ理由で画面上の文字類も「ピントが合っている」と判断されてしまい、赤色の輪郭が出る。なお、ピーキング表示時は画面がモノクロになる。

操作ダイヤルを押すと右側にメニューのアイコンが出る「PEAK」を選択してピーキング表示を行なったところ

 ピーキング機能は、これまで業務用や放送用のビデオカメラで主に搭載されていた機能だ。そのため、一般ユーザーが使える製品はほとんど無かったと思われるが、CLM-V55ではそうしたプロ向け技術の恩恵に与れるのが嬉しい。

 フォーカスリングを回しながらピーキング表示の画面を見ると、ピントが合っている場所の動きに合わせて赤い部分が移動する。動画を撮影しながらピント位置を移動させる「フォーカス送り」といった撮影をする場合には有効だ。ゆっくりとフォーカスを送れば、ピントのあった部分で止めることができる。ピーキング表示がないと、ピントが合ったところで正確に止めることはなかなか難しい。

ピーキング表示の様子

 

 ピント合わせに関しては、「ピクセル等倍拡大」も便利な機能だ。画面全体のうち800×480ピクセルを切り出して等倍に表示する機能で、超望遠レンズや大口径レンズなどで特に正確にピントを合わせる場合に重宝する。

等倍表示の例。右は通常の表示で、左が等倍表示

 さらに動画撮影を意識した機能として「TV表示範囲」(マーカー表示)機能もある。ブラウン管テレビや古いタイプの薄型テレビだと撮影した範囲よりもやや狭い範囲しか映らないため、あらかじめ画面の少し内側に枠を表示して必要な被写体が画面から出てしまうのを防げるものだ。16:9と4:3のそれぞれで90%と80%の範囲にマーカーを設定できるので、再生する環境に合わせて活用したい。

TV表示範囲の選択画面。4種類がある
16:9で90%の位置16:9で80%の位置
4:3で90%の位置4:3で80%の位置

ソニー製以外のカメラでも試してみた

 ここからは、編集部で用意できたソニー製以外のレンズ交換式デジタルカメラで試した様子をお伝えする。

 キヤノン「EOS 5D Mark II」は録画時のHDMI出力が480pになってしまい、CLM-V55の画面中に小さく映る結果になった。ピーキング機能などは利用できるが、カメラ本体の液晶モニター(3型)よりもやや大きい程度でしか映らないのが惜しいところだ。なお、再生時は16:9のフルスクリーンで見ることができる。

ライブビューを表示したところカメラの「INFO」ボタンを数回押して情報表示をなくすと大きく映るが、上下の黒帯が消えない。左上の「1080i」はCLM-V55にある入力切替え時の表示機能
録画を開始すると、480pになってしまいフルスクリーンにはならない再生時はフルスクリーンとなる

 一方、同じくキヤノンの「EOS 7D」は録画時もHDMI出力は1,080i。だが、HDMI出力をセンサーのアスペクト比である3:2で行なっているようで、CLM-V55の画面では上下の黒帯を含んで表示されてしまうことがわかった。EOS 5D Mark IIよりは大きく表示できるが、TV表示範囲のマーカーは位置が合わず使用できない。こちらも再生時は16:9のフルスクリーンで視聴できる。

録画時も1,080iになり、EOS 5D Mark IIよりは大きく映るが上下の黒帯はそのまま。90%のTV表示範囲を出してみたが、当然合わない再生時はこちらもフルスクリーンにできる

 ペンタックス「K-5」も試してみたが、録画中は画面情報を含んだ映像がHDMIに出力されており、やはりフルスクリーンにはならなかった。再生時はキヤノン同様フルスクリーンにできた。

情報表示を消すことができず、フルスクリーンにはならなかった再生時はフルスクリーン表示が可能

 そのほかオリンパスの「E-PL1」とパナソニックの「LUMIX DMC-GF2」でも試してみたところ、両機種とも再生時しかHDMIには信号が出ず、CLM-V55の画面にはなにも映らなかった。

 なお今回は手配ができなかったが、パナソニックの「LUMIX DMC-GH2」は録画時もHDMI出力が可能とのことだ。パナソニックのWebサイトには、「撮影中の映像を大画面で確認できるので、構図やピントなど細かな部分までチェックしながら撮影を進められます。撮影中の映像を大画面で確認できるので、構図やピントなど細かな部分までチェックしながら撮影を進められます」とある。

まとめ

 動画の場合、実用的速度のAFが可能なレンズ交換式デジタルカメラもあるが、より作品としての動画を撮影する場合にはどうしてもMFが必要になってくる。ピント位置を自在に動かすことは、動画撮影ならではの醍醐味の1つだろう。

 カメラによってHDMI出力の仕様がばらばらなので注意する必要があるが、α55やNEX-VG10では快適に使用できると思う。動画のクォリティを高めたいユーザーは検討してみてはいかがだろうか。




(本誌:武石修)

2011/3/8 00:00