キヤノン「270EX II」

“リモートレリーズボタン”で手軽なワイヤレス撮影に対応

 キヤノンのクリップオンストロボで最も小型の「270EX」が、「270EXII」にリニューアルした。小型軽量はほぼそのままに、リモートレリーズボタンやスレーブ機能をあらたに搭載。今回は「EOS 7D」との組み合わせで新機能を試してみた。

EOS 7Dに装着した270EX II

 270EXは、小型で安価ながらバウンス撮影に対応したモデルとして注目されたモデル。今回の新機能追加でより幅広いライティングが可能になり、ストロボ撮影のおもしろさを手軽に体験できるようになった。実勢価格は1万6,000円前後だ。

リモートレリーズボタンとは?

 今回の最も大きなアップデートは、リモートレリーズボタンの搭載だろう。これは、いわばリモートレリーズをストロボに取り込んだもので、ストロボのレリーズボタンにより離れた場所からカメラのシャッターを切ることができる機能だ。

側面に「リモートレリーズボタン」を新搭載。Canonロゴの上には、ワイヤレス受光部とリモコン送信部を備える

 と、これだけでは単なるレリーズボタンと同じだが、シャッターを切る際に手に持った270EX IIを発光させることができるのだ。そのため、ブツ撮りなどでさまざまな位置からストロボ光を当ててより良い作品を撮影することができる。

 使い方は簡単で、あらかじめ内蔵ストロボのワイヤレス機能を「マスター」に設定し、カメラのドライブモードは「リモコン撮影」にしておく。270EX IIの電源スイッチを「スレーブ」にすれば準備は完了だ。カメラに向かって270EX IIのレリーズボタンを押すと、2秒後にシャッターが切れる。この2秒のうちに、照射したい場所に270EX IIを移動させるのがコツだ。このときの信号の流れは、270EX IIのレリーズボタンを押す→[赤外線]→EOS 7D→[内蔵ストロボ発光]→270EX IIのスレーブセンサー、ということだ。そのため、撮影の瞬間は270EX IIの向きはほとんどどこでも発光する。内蔵ストロボの光が壁などに反射して270EX IIに届くためだ。

チャージランプが背面の中央に移動して見やすくなった。電源スイッチにスレーブポジションを新設

 ところで、内蔵ストロボの光をスレーブ信号として利用するために、直射光も幾らかは混ざる。この場合、カメラで発光比率を設定可能なので、内蔵ストロボの光が最も少なくなる設定である「内蔵ストロボ:スレーブストロボ=1:8」とすれば比較的直射光の影響が少なく撮影できる。

 今回ブツ撮りを想定していろいろな位置から撮影してみたが、内蔵ストロボやホットシューに付けたクリップオンストロボのバウンスなどでは得られない、なかなかドラマチックな陰影を得ることができた。スレーブ機能のあるストロボであれば、机などにおいて同様の撮影は可能だが、レリーズボタンを備えた270EX IIならストロボの位置を自由に変えながら短時間でさまざまなバリエーションを得ることが可能だ。

・270EX IIを手持ちで場所を動かしながら撮影した際のバリエーション例

  • 作例のサムネイルをクリックすると、リサイズなし補正なしの撮影画像をダウンロード後、長辺800ピクセル前後の縮小画像を表示します。その後、クリックした箇所をピクセル等倍で表示します。
EOS 7Dの内蔵ストロボのみで撮影(比較用)

 スレーブ機能については改めて説明するまでもないが、内蔵ストロボの光を受けて270EX IIが発光するものだ。今回270EX IIには、専用スタンドが付属している(270EXは付属していなかった)。これを使えば、テーブルなど被写体の近辺に置くこともできるし、三脚穴があるので雲台に装着すれば自由な角度にセッティングできる。なおスレーブ機能を使うには、ワイヤレスマスター発光に対応したEOS 7D、EOS 60D、EOS Kiss X5の内蔵ストロボまたは、カメラに装着した580EX IIと組み合わせる必要がある。

今回から専用のスタンドが付属する。裏面には三脚穴が付く
スタンドを使えば、スレーブストロボとして任意の場所に置いてバウンス撮影などができる
左はEOS 7Dの内蔵ストロボのみで撮影。背後にきつい影が発生している。一方の右は、被写体の右後方に270EX IIを設置してスレーブ発光(上90度にバウンス)させた。+2段の調光補正を行なったところ、適度な陰影のすっきりした仕上りになった
電源は単3電池×2本スイッチなどの部材は増えたが、アルカリ乾電池込みで“200gを切る軽さ”は維持した

 270EX IIのバウンス機構などは前モデルと同様なので、そちらのレビュー記事を参照されたい。

最大照射角は28mm(35mmフルサイズ時)または18mm(APS-Cサイズ時)に対応。このときのガイドナンバーは22(ISO100・m)発光部を引き出すとガイドナンバーが27(同)になる。このときは照射角50mm(35mmフルサイズ時)または32mm(APS-Cサイズ時)以上となる
バウンス機構の動き。左から60度、75度、90度

・270EX(右)との比較

・320EX(中)および580EX II(右)との比較

収納時の状態手前から270EX II、320EX、580EX II

まとめ

 内蔵ストロボは光量が少なく直射しかできないのが欠点。それを補うのがクリップオンストロボだが、今回の270EX IIは単なるストロボだけではなく、この価格にしてリモートレリーズボタンまで付いているのが嬉しい。

 例えばネットオークションに出品する写真をいつもと違った格好良い写りにすることもできそうだし、もちろんポートレイト撮影などでも活用できるだろう。クリップオンストロボが気になるが、大きなストロボは持ち歩きたくないという人などは一考してみてはいかがだろうか。




(本誌:武石修)

2011/6/1 00:00