デジカメドレスアップ主義:フルサイズ機にはオールドズームがよく似合う

キヤノンEOS 5D Mark II + フォクトレンダー ズーマー36-82mm F2.8
Reported by澤村徹

  • ボディ:キヤノンEOS 5D Mark II
  • レンズ:フォクトレンダー ズーマー36-82mm F2.8
  • マウントアダプター:レイクオール DKL-EOS
  • ストラップ:ロベル 帆布カメラストラップ(一眼レフ用)
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 マイクロフォーサーズが登場する以前、オールドレンズのベースボディはキヤノンEOSが人気だった。一眼レフとしてはフランジバックが44mmと短く、M42マウントを筆頭に、Y/Cマウント、ライカRマウント、エキザクタマウントなど、人気の高いオールドレンズが楽しめたからだ。ではマイクロフォーサーズやNEXが登場した今、EOSのベースボディとしての価値は薄れてしまったのか。いや、けっしてそうではない。対応マウントの数ではマイクロフォーサーズとNEXにかなわないが、EOSの35mmフルサイズ機なら往年の名レンズを本来の画角で楽しめる。今回はこのメリットを享受するため、オールドズームレンズを組み合わせてみた。

 このズーマー36-82mm F2.8は、1960年に登場したスチル用レンズ初のズームレンズだ。フォクトレンダーは1959年に一眼レフカメラ「ベッサマチック」をリリースしており、それに合わせて開発された大口径標準ズームである。世界初にしてF2.8の通しというスペックからも、同社の力の入れようが伝わってくる。加えて注目すべきは、その独特の鏡胴スタイルだ。まるで重火器のような鏡胴は、現代のズームレンズと一線を画している。何しろスチル用初のズームレンズなのだから、デザインのお手本が乏しいだけに、このスタイルは純然たる機能美ともいえるだろう。なお、ズーマー36-82mm F2.8は当初デッケルマウントで登場し、その後エキザクタマウントやM42マウントでリリースされている。デッケルマウントはカメラ側(EOS装着時はマウントアダプター側)で絞り制御する必要があるため、EOSと組み合わせる際はM42マウントのものがハンドリングしやすいだろう。

このレンズを付けるだけで、現代的なEOSがクラシックスタイルに変貌する。このギャップがおもしろいデッケルマウントのレンズは、マウントアダプター側の絞り機構で絞り調整を行なう
最短撮影距離は1.3mだ。実際に使ってみると、寄り切れないという印象は否めないところだピント合わせをした後、中央のリングを前後に動かしてズーミングする。この操作スタイルは使いやすい

 ストラップは帆布製のワイドストラップを合わせてみた。これはロベルと6SHiKiのダブルネームの製品だ。6SHiKiは岡山県の帆布メーカーで、繊細かつ緻密な折り込みと耐久性に定評がある。使い始めは硬くゴワゴワしているが、使い込むと装着時の身体のラインにそってなじんでくる。帆布は約5cmの幅広タイプなので、今回のように重量のあるシステムでも安心して携行できるだろう。なお、取り付け部はレザーベルト式だが、オプションで二重リングやワックスコードを追加できる。

レイクオールのDKL-EOSマウントアダプターは2万8,350円。絞り機構を組み込んでいるので高めの価格設定だフィルター径は77mmだ。ピントリング操作で前玉ごと回転するため、フードを付けるなら丸型がよいだろう
ロベルの帆布カメラストラップは7,875円。黒、青、白のカラーバリエーションを用意するロベルと6SHiKiのダブルネームタグが縫いつけてある。取り付け部はヌメ革を使っている

 ズームレンズは構造が複雑なため、単焦点レンズの描写にはかなわない。ズーマー36-82mm F2.8は黎明期のズームレンズということもあり、かなり収差が目立つことを覚悟しておこう。まず歪曲収差が顕著で、特に糸巻き型歪曲の目立つシーンが多い。開放からF4にかけては、望遠域でも周辺光量落ちが発生する。その反面、発色とコントラストは全域で安定しており、歴史に名を刻むズームレンズの本領を感じさせる。収差がきつい点は否めないが、不思議と絵心を刺激する描写だ。なお、作例はRAWモードで撮影し、Lightroomでストレート現像している。

  • 作例のサムネイルをクリックすると、リサイズなしのRAW現像画像(JPEG)を別ウィンドウで表示します。
EOS 5D Mark II / ズーマー36-82mm F2.8 / 5,616×3,744 / 1/640秒 / F2.8 / -0.67EV / ISO100 / WB:オート / 36-82mmEOS 5D Mark II / ズーマー36-82mm F2.8 / 5,616×3,744 / 1/30秒 / F5.6 / -1EV / ISO200 / WB:オート / 36-82mm
EOS 5D Mark II / ズーマー36-82mm F2.8 / 5,616×3,744 / 1/320秒 / F4 / 0.67EV / ISO100 / WB:オート / 36-82mmEOS 5D Mark II / ズーマー36-82mm F2.8 / 5,616×3,744 / 1/640秒 / F8 / 0EV / ISO100 / WB:オート / 36-82mm
EOS 5D Mark II / ズーマー36-82mm F2.8 / 5,616×3,744 / 1/1,250秒 / F2.8 / 0EV / ISO100 / WB:オート / 36-82mmEOS 5D Mark II / ズーマー36-82mm F2.8 / 5,616×3,744 / 1/125秒 / F2.8 / 0EV / ISO200 / WB:オート / 36-82mm


(さわむらてつ)1968年生まれ。法政大学経済学部卒業。ライター、写真家。デジカメドレスアップ、オールドレンズ撮影など、こだわり派向けのカメラホビーを提唱する。2008年より写真家活動を開始し、デジタル赤外線撮影による作品を発表。玄光社「オールドレンズ・ライフ」シリーズをはじめ、オールドレンズ関連書籍を多数執筆。http://metalmickey.jp

2010/11/24 00:00