デジカメドレスアップ主義:Dマウントレンズ事始め

PENTAX Q + Elgeet 1/2inch F1.9
Reported by澤村徹

  • ボディ:PENTAX Q
  • レンズ:Keystone Elgeet 1/2inch F1.9
  • マウントアダプター:muk select PENTAX Q用Dマウントアダプタ
  • 貼り革:Aki-Asahi.com Pentax Q用カラー貼り革キット
  • ストラップ:Adequate TLCS-1103
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 “ナノ一眼”と銘打ったPENTAX Qが登場し、早3カ月がたとうとしている。ガジェット好きを魅了する個性的なモデルだが、オールドレンズファンの間ではDマウントレンズのベースボディとして定着しつつあるようだ。今回はPENTAX Qをドレスアップしつつ、Dマウントレンズとの相性をレポートしてみよう。

 Dマウントとは、8mmフィルムムービーカメラのユニバーサルマウントだ。フランジバックは12.29mmで、PENTAX Qが採用するQマウントの9.2mmよりも長い。そのためマウントアダプターを介して、DマウントレンズをPENTAX Qに装着できるわけだ。また、PENTAX Qのセンサーサイズが6.2×4.6mm(1/2.3型)であるのに対し、8mmフィルム(ダブル8)は4.37×3.28mmだ。PENTAX Qのセンサーがひとまわり大きい程度なので、標準レンズと望遠レンズはケラレなしで撮影できる。広角レンズについても、四隅が多少ケラレる程度だ。PENTAX Qの35mm判換算は焦点距離5.5倍となるが、撮像素子の大きさが比較的近いため、レンズ本来の画角を感じながら撮影できる。

 今回はmuk selectのDマウントアダプターでDマウントレンズを装着してみた。DマウントレンズはCマウントレンズよりもさらにひとまわり小さいので、極小ボディのPENTAX Qに付けてもバランスがよい。ここでは標準レンズを付けているが、大柄な望遠レンズや広角レンズを付けてもさほどフロントヘビーにならずにすむ。ミニチュア感覚全開の魅惑的なセットアップだ。

Dマウントレンズのためのボディ、と言いたくなるほどの抜群のサイズ感だこのレンズはピントリングにクリック感がある。こうしたカルチャーのちがいも楽しみのうちだ
Cマウントレンズと並べると、Dマウントレンズのコンパクトぶりがよくわかるmuk selectのDマウントアダプターは4,500円。オーバーインフ気味の設計になっている

 ドレスアップ面はAki-Asahi.comの貼り革キットを用いてみた。PENTAX Qは初期状態で貼り革が貼ってあるため、これを剥がして交換することになる。これはメーカー保証外の行為になるので、自己責任で作業するようにしよう。純正の貼り革を剥がすときは、精密ドライバーの先端などで四隅を持ち上げる。両面テープがボディに残らないようにゆっくりと剥がしていこう。

 ストラップはアダクワッタの製品を合わせてみた。このストラップはPENTAX Q向けに設計されているので、狭い取り付け具に無理なく通せる。ストラップの取り付け部がやや薄造りになっているが、Dマウントレンズ付きのPENTAX Qであれば耐重性の問題はないだろう。手染めレザーを使ったビンテージ感あふれるスタイルなので、Dマウントレンズのクラシカルな雰囲気とよく似合う。

Aki-Asahi.comのPENTAX Q用貼り革キットは1,500円。表面のみの2ピース構成だリアルレザー製とビニックスレザー製を用意。バリエーションは豊富にそろっている
アダクワッタのPENTAX Q用ストラップは8,800円。1本ずつていねいに手染めしているカラーバリエーションはキャメルとブラウンの2色。ウェブ通販で購入できる

 エルジート1/2inch F1.9は、焦点距離12.5mmの標準レンズだ。アメリカ製の普及価格帯クラスの製品で、オークションサイトなら1万円前後で入手できるだろう。Cマウントのエルジートと同様に、このレンズも開放近辺ではぐるぐるボケが発生しやすい。そうはいっても開放F1.9でそれなりに被写界深度があるため、合焦部とぐるぐるボケがバランスよく同居する描き方だ。ただし、解像感は甘い印象を拭えない。これはDマウントレンズ全般にいえることだが、Cマウントレンズに比べると解像感は控えめだ。Dマウントレンズは8mmフィルム用なので、フィルムサイズに見合った品質になっているのだろう。Dマウントレンズの一般的な傾向として、シャープさは望めないが、レンズブランドのテイストは受け継いでいるものが多い。本レンズもこのセオリーに当てはまり、サイズも描写もミニチュアエルジートだ。

  • 作例のサムネイルをクリックすると、リサイズなしの撮影画像(JPEG)を別ウィンドウで表示します。
PENTAX Q / Elgeet 1/2inch F1.9 / 4,000×3,000 / 1/200秒 / F1.9 / -0.7EV / ISO125 / WB:オート / 12.5mmPENTAX Q / Elgeet 1/2inch F1.9 / 4,000×3,000 / 1/400秒 / F1.9 / 0EV / ISO125 / WB:オート / 12.5mm
PENTAX Q / Elgeet 1/2inch F1.9 / 4,000×3,000 / 1/250秒 / F5.6 / 0EV / ISO125 / WB:オート / 12.5mmPENTAX Q / Elgeet 1/2inch F1.9 / 4,000×3,000 / 1/320秒 / F5.6 / 0EV / ISO125 / WB:オート / 12.5mm
PENTAX Q / Elgeet 1/2inch F1.9 / 4,000×3,000 / 1/125秒 / F4 / -0.7EV / ISO125 / WB:オート / 12.5mmPENTAX Q / Elgeet 1/2inch F1.9 / 4,000×3,000 / 1/500秒 / F1.9 / 0EV / ISO125 / WB:オート / 12.5mm

 PENTAX Qのオールドレンズ撮影について、その使用感をまとめておこう。まず拡大表示だが、OKボタンをワンプッシュするだけで2倍もしくは4倍に切り替わる。シャッター半押しで通常表示に復帰し、操作性は良好だ。ただし、最大4倍どまりなので、レンズによっては細部の確認が難しいこともある。マイクロフォーサーズやNEXの10倍前後の拡大表示に慣れていると、倍率面で物足りなさを感じることがあるだろう。

 PENTAX Qはレンズシャッターを採用しているため、レンズシャッター非搭載レンズ装着時は電子シャッター(1/8,000秒〜2秒)で撮影することになる。電子シャッターは動きの速い被写体を撮影すると、ローリングシャッター現象によって像が歪むことがあるので要注意だ。また、比較的速いシャッタースピードでも、手ブレのリスクがある。普段よりもいくぶん丁寧な撮影を心がけよう。

 このようにPENTAX Qはいくぶんナーバスな側面があるものの、カメラとしての操作性はよく考え抜かれている。背面ボタンとダイヤル類は適度が重みがあり、小さいボディながらも誤操作がきわめて少ない。また、露出補正やISO感度変更など、使用頻度の高い機能がすみやかに呼び出せる。見た目はミニチュアだが、機能面ではれっきとした本格カメラだ。



(さわむらてつ)1968年生まれ。法政大学経済学部卒業。ライター、写真家。デジカメドレスアップ、オールドレンズ撮影など、こだわり派向けのカメラホビーを提唱する。2008年より写真家活動を開始し、デジタル赤外線撮影による作品を発表。玄光社「オールドレンズ・ライフ」シリーズをはじめ、オールドレンズ関連書籍を多数執筆。http://metalmickey.jp

2011/12/1 00:28