気になる(国産カメラメーカーブランド以外の)現像ソフトレビュー

プロ御用達の高品質 Capture One Pro 9を試してみる

テザー撮影から画像管理、編集まで充実したワークフローを構築可能

カメラメーカー以外の著名現像ソフトを試用する本連載。最終回は、中判デジタル製品フェーズワンのブランドを冠する名門ソフト、Capture One Pro 9を紹介したい。

Capture One Pro 9(以下、Capture One)は、中判デジタル製品のメーカーとして知られるフェーズワンから発売されているカタログタイプのRAW現像ソフト。メーカー純正でありながら他社のカメラのRAW現像もできるというちょっと変わった製品だ。

レーティングやカラータグといったセレクト作業をアシストするツールはもちろん、検索性を高めるのに役立つキーワードや場所の情報の付加など、画像の管理のための機能も備えている。

対応OSはWindowsとMac。パッケージ版は税別4万円だが、ダウンロード版(日本語にも対応している)は279ユーロ(約3万1,000円)とぐっと身近になる。また、月額設定のサブスクリプション版も用意されている。

試用環境

Mac mini(Late 2014)
CPU:2.6GHz Intel Core i5
メモリ:16GB(1600MHz DDR3)
ストレージ:1TB Fusion Drive(内蔵)、4TB HDD(外部・画像保管用、USB 3.0接続)

基本操作

カタログタイプを基本とするソフトウェアで、Lightroomなどと同じく、画像を読み込んでから閲覧や調整などの操作を行なう。カタログファイルはMacの場合、「ピクチャ」フォルダー内に「Capture One Catalog.cocatalog」という名称で作成される。表示を高速化するためのプレビューデータも内部に格納される関係で、ファイルサイズはかなり大きい。ただし、ファイル管理でセッションを選択すれば、フォルダブラウザタイプのソフトして利用できる。

LightroomはRAWとJPEGをひとつにまとめて読み込むが(個別の画像として読み込むことも可能だ)、Capture Oneは別々に読み込む仕様となっており、RAWに対応していない機種の場合は同時記録のJPEG画像のみ読み込まれる(Lightroomは非対応機種の画像はRAWとJPEGのセットではじかれる)。

RAWとJPEGの両方が並んで表示されるのがうとましく思える場合は、表示メニュー→グローバルフィルターから「JPEGファイルを隠す」を実行するとRAW画像のみ表示できる。ただし、JPEGのみの画像まで非表示となるので注意が必要だ。

764枚の画像(381枚のRAW画像と同時記録のJPEG画像+JPEG画像のみ読み込んだRAW未対応の2枚の合計)を読み込んだ状態での起動時間は11秒ほどだった。

画面は選択した画像を大きく表示する「ビューア」が上側、カタログ内の画像を一覧できる「ブラウザー」が下側に表示され、境界線部分をマウスでドラッグすることで表示エリアの大きさを変えられる。

また、表示メニューから「ビューアを隠す」「ブラウザーを隠す」を実行することで、「ブラウザー」のみ、「ビューア」のみの表示にすることもできる。

「手のひらツール」を選択している場合、「ビューア」上の画像をダブルクリックすると、その場所を中心にピクセル等倍表示する(再度ダブルクリックすると全画面表示にもどる)。

また、マウスのホイール操作で倍率を段階的に変更することもできる。ピクセル等倍表示のときは、画面に表示される部分だけのプレビューを作成するようで、すぐに高精細な表示に切り替わる。画像全体のぶんのプレビューデータを作成しないので、待ち時間が短いのはありがたい。

画像の調整は「ツール」の「タブ」を選んで、各パネルの項目のスライダーをマウスでドラッグして行なう(「ツール」は初期設定では画面の左側に表示されるが、右側に変更できる)。

スライダーの動きに追従して画面が変化するスピードは十分に速く、微妙なコントロールもストレスは感じない。Lightroomの「仮想コピー」と同様、1枚の画像に対して調整内容の異なるバリエーションを作成できる「バリアント」機能も備えている。

ちょっと不思議なのは、「ツール」の各タブはスクロール表示しない仕様になっていて、たたまれていたパネルを開くときに表示エリアに余裕がないと、ほかのパネルが自動的にたたまれてしまうところ。

たとえば、「部分調整」タブで「カラーエディター」を開くと、「ホワイトバランス」「露出」「ハイダイナミックレンジ」「カーブ」「シャープニング」が閉じてしまう。そのため、部分的な色調の調整とトーンカーブの調整を並行して行ないたい場合に(実際にそうする必然があるかどうかは別にして)、たたまれてしまった「カーブ」を開きなおす手間が生じてしまう。

作例

解像力

「シャープニング」は「適用量」「半径」「しきい値」の3つのスライダーで調整する仕様で、初期設定値は画像によって異なる。

掲載画像では「適用量」が「180」、「半径」は「0.8」、「しきい値」は「1.0」だった(画像によっては「適用量」は「0」や「160」に、「半径」は「1.0」になる場合があったが、「しきい値」は「1.0」のままのようだった)。

初期設定値での現像結果は、同時記録のJPEG画像よりもやや解像感が高めで、パッと見はSILKYPIXに近い印象の仕上がりとなった。

オリジナル(RAW+JPEGのうちのJPEG)EOS 80D / EF50mm F1.8 STM / 1/40秒 / F5.6 / ISO 100 / 50mm
Capture Oneで無調整で現像。

歪曲、周辺光量

歪曲収差と周辺光量の補正はレンズプロファイルによる自動となっているが、対応レンズの数は少なめで、50-100mm F1.8 DC HSM | Artのような新しいレンズの場合は手動で補正する必要がある。

この画像では「ディストーション」を「12%」、「光量低下」を「24%」に設定した。

オリジナル(RAW+JPEGのうちのJPEG)EOS 80D / EF50mm F1.8 STM / 1/40秒 / F5.6 / ISO 100 / 50mm
Capture Oneで「ディストーション」を「12」、「光量低下」を「24%」に設定して現像(色収差も補正している)。対応するレンズプロファイルがあれば自動補正される。

なお、イトマキ型の歪曲収差の補正を行なう際は「プロファイル」を「Generic」から「Generic Pincushion distortion」に変更して「ディストーション」スライダーを操作する必要がある。この仕様もちょっと首をかしげるところだ。

色収差

倍率色収差の補正は、レンズプロファイルのあるものはオン、プロファイルがないものはオフが初期設定となっている。そのため、手持ちのレンズのプロファイルの有無を把握しておく必要があるだろう。

オリジナル(RAW+JPEGのうちのJPEG)E-P5 / M.ZUIKO DIGITAL ED 9-18mm F4.0-5.6 / 1/2,500秒 / F4 / ISO 400 / 9mm
Capture Oneで「色収差」をオンにした状態(対応するレンズプロファイルがあれば初期設定でオンになる)。

操作としてはチェックボックスをクリックするだけの簡単さで、結果も良好。必要に応じて「パープルフリンジ」の軽減を併用するといい。

発色

同時記録のJPEG画像よりもコントラストが高く、青とオレンジが濃く仕上がる。SILKYPIXの派手さを抑えて少し暗めにしたような印象だ。

オリジナル(RAW+JPEGのうちのJPEG)D610 / SIGMA APO MACRO 150mm F2.8 EX DG OS HSM / 1秒 / F22 / ISO 100 / 150mm / ピクチャーコントロール:スタンダード
Capture Oneで無調整で現像。

高感度ノイズ低減

「ノイズ除去」は初期設定値が「ルミナンス」、「ディテール」「カラー」の各スライダーが「50」になっている。輝点ノイズを低減する「ピクセル」は機種や撮影した感度によって変わり、この画像(キヤノンEOS 80D、ISO6400)では「60」だった。ここでは、「ルミナンス」の数値のみを変化させた画像を掲載する。

オリジナル(RAW+JPEGのうちのJPEG)EOS 80D / EF-S55-250mm F4-5.6 IS STM / 1/100秒 / F5.6 / ISO 6400 / 220mm
Capture Oneで「ノイズ除去」の「ルミナンス」を「0」で現像。
Capture Oneで「ノイズ除去」の「ルミナンス」を「25」で現像。
Capture Oneで「ノイズ除去」の「ルミナンス」を初期設定値の「50」で現像。
Capture Oneで「ノイズ除去」の「ルミナンス」を「75」で現像。
Capture Oneで「ノイズ除去」の「ルミナンス」を「100」で現像。

「ルミナンス」が「0」のときの輝度ノイズは、Lightroomがもっとも粒がくっきりしていて、Capture Oneのほうが違和感は小さい。一方、「25」と「50」ではLightroomのほうがクリーンな印象だ。「75」「100」まで上げるとべたっとした画面になるものの、比較的ディテールは残っている。

ハイライト・シャドウ補正

「ハイダイナミックレンジ」の「ハイライト」と「シャドウ」で白飛びや黒つぶれを軽減したり、階調の再現幅を広げることができる。ここでは「ハイライト」「シャドウ」ともに「100」に設定している。

オリジナル(RAW+JPEGのうちのJPEG)EOS 80D / EF-S55-250mm F4-5.6 IS STM / 1/80秒 / F8 / ISO 100 / 250mm
Capture Oneで「ハイダイナミックレンジ」の「ハイライト」と「シャドウ」を「100」に設定して現像。

ハイライト部分のディテールがしっかり引き出せている。また、ハイライトの変な色づきも少ない。シャドウの階調もよく出ており、そのわりにノイズはあまり目立たない。

ホワイトバランス

プリセットホワイトバランスは5種類。「色温度」と「色合い」のスライダーで調整できるほか、グレー点をクリックしての設定も可能だ。調整メニュー→自動調整で「ホワイトバランス」にチェックした状態で「自動調整」を実行することでオートホワイトバランスにもできるが、手間を考えるとあまり便利とは言えない。

オリジナル(RAW+JPEGのうちのJPEG)LUMIX GH4 / LEICA DG SUMMILUX 15mm F1.7 ASPH. / 1/15秒 / F2.5 / ISO 800 / 15mm
Capture Oneでホワイトバランスを「自動調整」して現像。
Capture Oneで無調整で現像。

なお、設定値は「色温度」が「3293」、「色合い」は「1.8」となり、SILKYPIXの「Auto(自然)」よりもやや暖色寄りの仕上がりとなった。

特徴的な機能

画像の分類、セレクト作業などに役立つ「レーティング」や、色のマークを付ける「カラータグ」も装備。前者にはショートカットキー(「0」から「5」まで)が割り当てられているが、後者は7色のうち、「赤」「黄」「緑」の3色のみ、それぞれ「-」「*」「+」が割り当てられている。効率よくセレクト作業を行なうにはショーカットキーが使えるほうが便利なので、これはありがたい。

セレクト作業の効率化や画像管理、検索などに役立つ「レーティング」「カラータグ」を装備。ほかに、特定の日付の画像やキーワードがついた画像、特定の場所で撮った画像を素早く絞り込むこともできる。

画面の一部分を補正するためのツールは、ブラシで塗って範囲選択を行なう「マスク」と、Lightroomの「段階フィルター」を思わせる「グラデーションマスク」を備える。

ブラシで塗って選択した範囲にだけ補正を行なう「マスク」も装備。レイヤーを使って作業できるのが便利なところだ。
段階的にエフェクトをかけられる「グラデーションマスク」。

これらのツールを「レイヤー」上で操作できるのがほかにない特徴で、たとえば、「バックグランド」で全体の露出を下げる操作、「レイヤー1」では花だけ明るく、色を濃くする操作、「レイヤー2」で花以外の部分の彩度を下げる操作、といったような調整が行なえる。

そのほか、部分的なコントラスト調整によって明瞭感を出す「クラリティー」、画面周辺部の明るさを変化させられる「ビネット」、クロスプロセス調の効果も出せる「カラーバランス」など、充実した機能を備えている。

機能対応表

DxO OpticsPro 11 ELITELightroom CCSILKYPIX Developer Studio Pro 7Capture One Pro 9
バージョン11.1.02015.6.1/6.6.17.0.6.09.2.1
販売形態パッケージ
ダウンロード
パッケージ
サブスクリプション
パッケージ
ダウンロード
パッケージ
ダウンロード
サブスクリプション
税別価格13,796円
18,425円
16,000円
月額980円より
31,500円
26,000円
40,000円
299ドル
月額15ドルより
対応OSWin/MacWin/MacWin/MacWin/Mac
閲覧時表示モード画像ブラウザ
設定タブ
グリッド
ルーペ
比較
選別
人物
サムネイル
プレビュー
ブラウザー
ビューア
レーティング
カラーラベル5色3色7色
フラグ処理可能
非処理
採用
除外
現像予約
コピー・移動予約
削除予約
顔認識個人認識可
キーワード
場所位置情報から場所情報を表示可
マップ表示
タイトル/キャプション
JPEG画像の調整
調整内容のコピー/ペースト
調整内容の保存新規プリセットユーザープリセットパラメーターの保存ユーザースタイルを保存
ホワイトバランス/オート自動Auto(絶対)
Auto(自然)
自動調整
ホワイトバランス/プリセット6種6種16種6種
ホワイトバランス/スライダー色温度
色相
色温度
色かぶり補正
色温度
色偏差
暗部調整
ミックス光補正
色温度
色合い
ホワイトバランス/クリック
ホワイトバランス/肌色指定
露出補正±4、0.01ステップ±5、0.01ステップ±8、0.01ステップ±4、0.01ステップ
コントラスト調整
白飛び軽減ハイライト
DxO Smart Lighting
ハイライト
白レベル
HDR
焼き込み
HDR-焼き込み
ハイライト
黒つぶれ軽減シャドウ
DxO Smart Lighting
シャドウ
黒レベル
HDR
覆い焼き
HDR-覆い焼き
シャドウ
部分的な階調補正ハイライト
中間トーン
シャドウ
ブラック
ハイライト
シャドウ
白レベル
黒レベル
なし明るさ
ハイライト
シャドウ
明瞭度
彩度自然な彩度
彩度
彩度
自然な彩度
彩度彩度
トーンカーブ
個別色補正色相/彩度/明度(6色)HSL/カラー(8色)ファインカラーコントローラ(8色)カラーエディター(6色)
シャープの種類アンシャープマスクシャープナチュラルシャープ
ノーマルシャープ
ピュアディテール
アンシャープマスク
シャープニング
シャープのパラメーター強さ
半径
しきい値
エッジオフセット
適用量
半径
ディテール
マスク
輪郭強調
偽輪郭抑制
ボケ味保護
適用量
半径
しきい値
ノイズ軽減のパラメーター輝度ノイズ輝度
ディテール
コントラスト
カラー
ディテール(カラー)
滑らかさ
偽色抑制
フリンジ除去
ノイズ整列
ノイズ除去
モアレ軽減
ルミナンス
ディテール
カラー
ピクセル
レンズプロファイル対応
歪曲収差補正DxO光学モジュールによる自動プロファイル補正による自動手動レンズプロファイルによる自動
周辺光量補正DxO光学モジュールによる自動プロファイル補正による自動手動レンズプロファイルによる自動
色収差補正自動クリック○(プロファイルがあれば自動)
フリンジ軽減パープルフリンジ紫/緑(クリックによる指定可)フリンジ除去フリンジ軽減
パースペクティブ補正−(プラグインが必要)
ヴィネット効果
粒子効果−(プラグインが必要)
かすみの除去
操作の取り消し/やり直し
調整履歴ヒストリー
スナップショット
編集履歴
現像パラメータを一時登録
仮想コピー
外部エディター連携
切り抜き(トリミング)
アスペクト比変更
ダスト修正ダスト除去スタンプ
修復ブラシ
スポッティングスポット除去
赤目軽減
部分補正機能段階フィルター
円形フィルター
補正ブラシ
段階補正フィルタ
円形補正フィルタ
グラデーションマスク
マスク
現像プリセット
調整前後の比較

おもな非対応機種

公式サイトによると400以上のカメラのRAW画像に対応しており、キヤノン、ソニー、ニコンのカメラの一部でテザー撮影も行なえる。

例によって、シグマsd Quattro、SD1 Merrillなどのほか、原稿執筆時点では、フジフイルムX-T2、ペンタックスK-70といった新機種には対応できていない。また、オリンパスのE-PL6やキヤノンEOS M2、ニコンNikon 1 J5、パナソニックDMC-G6、ペンタックスK-S1といった機種が非対応だったりする(E-PL5とE-PL7には対応していて、E-PL6だけ非対応なのだ)。

また、交換レンズの収差補正のための「レンズプロファイル」も、他社ソフトに対して種類は少ない。

まとめ

RAW現像の機能は豊富で仕上がりもいい。パネル類の動作に挙動不審なところはあるものの、操作に対するレスポンスは良好で、ストレスなしで作業できるのはうれしい。部分的な補正などをレイヤー上で行なえるなど、全体的な使い勝手もいい。

画像管理や検索に関する機能はあまり強くないし、収差補正のためのレンズプロファイルも少なめ(このあたりはLightroomのほうが強い)。そのあたりを含めて機能に納得できるなら、魅力度は十分に高いソフトだと思う。

終わりに……4本のRAW現像ソフトを試してみて

4回にわけて有名どころのRAW現像ソフトをレポートした。使い込んでいないソフトを評価するのは気が引けるところはあるが、それでもそれぞれのいい面、弱い部分が見えておもしろかった。

全体をとおしては、DxO OpticsProのノイズ処理のすごさ、Lightroomの画像管理能力の高さ、SILKYPIXの細かい部分に対するこだわり、Capture Oneはレイヤーが使える便利さ、などが印象に残っているが、機能や画質については一長一短があり、どれがベストとは言いきれない。

また、インターフェイスや操作に対する応答性、ファイル出力の処理時間といった、使い勝手の部分については、個々人で感じ方も違ってくるところもあると思う。各社とも30日程度フルに使えるデモ版を用意してくれているので、気になったソフトがあれば、ぜひ使い込んでみていただきたい。

北村智史

北村智史(きたむら さとし)1962年、滋賀県生まれ。国立某大学中退後、上京。某カメラ量販店に勤めるもバブル崩壊でリストラ。道端で途方に暮れているところを某カメラ誌の編集長に拾われ、編集業と並行してメカ記事等の執筆に携わる。1997年からはライター専業。2011年、東京の夏の暑さに負けて涼しい地方に移住。地味に再開したブログはこちら