比較レビュー
大型センサー搭載高級コンパクト対決
PowerShot G1 X Mark II vs LUMIX LX100
大浦タケシ(2015/1/16 12:00)
ミラーレス勝り? の立派なボディ
最初に外観を見てみよう。両モデルともコンパクトデジタルカメラというには実に立派なボディだ。特にPowerShot G1 X Mark II(以下G1 X Mark II)は、これよりもコンパクトなミラーレスカメラはいくらでもありそうなほど大きい。さらにLUMIX LX100(以下LX100)に比べ大味なボディシェイプは、好みの分かれるところ。
一方LX100はG1 X Mark IIに準ずる大きさながらも手堅くまとまった感があり、それほど散漫な印象はない。カメラとしてのカッコよさはLX100のほうが上手。外観からG1 X Mark IIが二昔ほど前のアメ車だとすれば、LX100はさながらドイツ車と例えてもよいかも知れない。
両モデルの大きさと質量は、G1 X Mark IIが116.3×74.0×66.2mm・553g(バッテリーおよびメモリーカード含む)、LX100が114.8×66.2×55.0mm・393g(同)。横幅はほぼ同じといってよいが、奥行きと質量の違いには驚かされる。
操作部材に関して機能的で使いやすく思えるのがLX100。鏡筒には絞りリングのほかアスペクト切換スイッチやフォーカス切換スイッチを配置。さらにトップカバーにはシャッターダイヤルや露出補正ダイヤルを備え、直感的で軽快なアナログ操作が楽しめる。
パナソニックのコンパクトデジタルカメラは伝統的に電源のON/OFFスイッチをレバータイプとするものが多く、本モデルも例外ではないが、そのことも含めカメラの設定状態が一目で把握できるのもよい。
さらに撮影モードの選択も、絞りリングとシャッターダイヤルを組み合わせによるもので、往年の写真愛好家なら取っ付きやすく思える人も少なくないことだろう。
一方G1 X Mark IIは、鏡筒の2つのリングがユニークだ。スムースリングとクリックリングと名付けられ、それぞれに機能を割り当てることができる。デフォルトでは、スムースリングはAF合焦後ピント微調整のためのフォーカスリングに、クリックリングは露出設定(絞り優先AE時およびシャッター速度優先時)を可能とする。
下位モデルPowerShot G7 Xに搭載される露出補正ダイヤルは、本モデルでは残念ながらが省略されているが、クリックリングに露出補正の機能を割り当てることもできるのでさほど心配はいらない。
ただし、クリックリングに元々割り当てられている露出設定との切り換えは、その都度露出補正ボタンを押して行う必要がある。2つのリングを除けば操作系は他のPowerShotと同様で、コンパクトカメラ然としたものである。
内蔵EVFの有無もポイント
機能的に大きく異なるひとつがEVFの有無だろう。LX100にはフィールドシーケンシャル方式の0.38インチ276万ドット相当のEVFを搭載。高精細なうえにコントラストも高くたいへん見やすい。もちろんピントの状態も正確に把握できる。
ファインダーに接眼して撮ることに慣れている人にとって、EVFはコンパクトデジタルカメラでもやはり必須といえるデバイスだが、そうでない人も便利に思えるはずだ。
対するG1 X Mark IIには、残念ながらEVFは搭載されていない。そのため撮影では液晶モニターに頼ることとなる。明るい屋外などでは液晶モニターは視認性が劣るため、些か分が悪い。ただし、別売とはなるが、デジタルビューファインダー「EVF-DC1」が用意されている。アクセサリーとしては高価(実売で税込2万8,160円前後)な部類に入るものの、接眼派にとってはマストアイテムとなることだろう。
液晶モニターは、G1 X Mark IIが3型約104万ドット(アスペクト比3:2)、LX100が3型約92万ドット(同3:2)。前者は上方向180度、下方向45度可動するチルト式、後者は固定式とする。
レンズバリア/キャップ式の違いも
撮影機能については、G1 X Mark II が1.5インチ有効1,280万画素(アスペクト比3:2)、LX100が4/3インチ有効1,280万画素(同4:3)。奇しくもデフォルトのアスペクト比の場合、有効画素数は同じ。
さらに両者ともアスペクト比を変えても画角の変わらないマルチアスペクトを採用。G1 X Mark IIは3:2と4:3から、LX100は4:3、3:2、16:9から選択できる。参考までに両モデルの総画素数は、G1 X Mark IIが1,500万画素、LX100が1,684万画素。
それぞれ有効画素数が総画素数を大きく下回っているのは、このマルチアスペクト機能のため余裕あるものとしているからである。設定可能な感度は、G1 X Mark IIがISO100-12800、LX100がISO200-25600とする。LX100は拡張機能でISO100相当の設定も可能としている。
搭載するレンズは、G1 X Mark IIが12.5-62.5mm(35mm判換算24-120mm相当)とし、開放F値はF2-3.9。LX100が10.9-34mm(同24-75mm相当)とし、開放値はF1.7-2.8とする。
倍率が高く、よりテレ端の焦点距離の長いG1 X Mark IIのほうが、使い勝手のよいことはいうまでもない。レンズ先端からの最短撮影距離については、G1 X Mark IIがワイド端5cm/テレ端40cm、LX100がワイド端3cm/テレ端30cm。
なお、どちらも沈胴式であるが、G1 X Mark IIは自動開閉式のレンズバリアを内蔵するのに対し、LX100はレンズキャップ式としている。手間がかからないのは、もちろんG1 X Mark IIだ。
1インチクラスよりも余裕ある描写
高感度
高感度特性だが、両モデルともISO800までならノイズの発生は気にならないレベル。これは「PowerShot G7 X vs サイバーショットRX100III」ではISO400であったが、センサーサイズが拡大し画素ピッチが広がった分1段アップしたともとれる。
ISO1600からは感度が上がるに従い両モデルともカラーノイズ、輝度ノイズが現れはじめ、エッジのにじみも次第に強くなっていく。ただしISO6400までは両者似たような特性と述べてよいだろう。ISO12800になるとG1 X Mark IIのほうがノイズの発生や解像感の低下は少ない。ちなみにLX100のみ設定可能なISO25600は“記録用”と考えたほうがよいレベルである。
階調再現性については、作例を見るかぎりどちらも大型センサーらしく不足を感じさせないものである。いろいろ見比べてみたがLX100のほうが階調はわずかに豊か。ハイライト部およびシャドー部の粘りはG1 X Mark IIよりもほんのちょっとに上手のように思える。
なお、ISO感度の比較作例はストロボのモデリングランプ(ハロゲンランプ)を使用している。WBはいずれもオートだが、LX100のほうが上手く調整しており、色調に不自然さは感じない。一方G1 X Mark IIは光源の色あいが残っている。好みもあるかとは思うが、LX100のほうが万人受けすることだろう。
光学系の描写特性については、LX100は画面周辺部のキレがズーム全域でやや低め。G1 X Mark IIもワイド側の画面周辺部で今ひとつ締まらない。特にLX100は“コンパクトデジタルカメラ”として考えるなら及第点だろうが、このモデルへの期待の高さを考えると些か不満が残らないわけでもない。
沈胴式光学系の限界なのか、タイトに小型化した光学系の結果なのかは分からないが、もう少し描写優先で考えてほしかったところだ。ボケ味については、どちらも柔らかくナチュラル。大口径レンズをフルサイズで使用したときのような大きなボケは得られにくいものの、条件によっては効果的なボケがそれなりに楽しめる。
近距離(望遠端)
沈胴式光学系の限界なのか、タイトに小型化した光学系の結果なのかは分からないが、もう少し描写優先で考えてほしかったところだ。ボケ味については、どちらも柔らかくナチュラル。大口径レンズをフルサイズで使用したときのような大きなボケは得られにくいものの、条件によっては効果的なボケがそれなりに楽しめる。
ボケ
動画機能に関してはG1 X Mark IIが1,920×1,080/30fpsのフルHDに対応、LX100は3,840×2,160/30fpsの4K動画での撮影を可能とする。さらにLX100は4K動画から静止画を抜きだす4Kフォトにも対応。これまでの静止画撮影では見逃していたような瞬間を800万画素の静止画として楽しめる。スポーツをはじめとする動体撮影では重宝する機能といえる。
操作系に関するレスポンスとしては、まず起動が速いのがG1 X Mark II。ON/OFFボタンを押し撮影が可能となるまでに、筆者が実測したところでは約1.4秒。一方LX100はON/OFFレバーを作動してから撮影可能となるまでは、2.4秒。差は結構ありそうに思えるが、単独で使用しているかぎりLX100もそれほど遅く感じることはない。
それよりもレンズキャップを外す操作が面倒に感じるくらいだ。このことについても別売のオプション、自動開閉レンズキャップを用意すれば問題は解決する。
バッテリーの充電は、両モデルとも専用のチャージャーが付属する。なおフル充電からの撮影可能枚数は、G1 X Mark IIが約240枚、LX100が約350枚(いずれも液晶モニター表示時/CIPA準拠)。
作品集(G1 X Mark II)
焦点距離は12.5mm(24mm相当)、絞りはF4としている。ピントの合った部分のシャープネスはまずまず。コントラストは申し分のないものだ。開放から2段絞っているためか、周辺減光はさほど感じさせない。
テレ端62.5mm(120m相当)、絞りは開放。さらに液晶モニターに太陽の光があたり、視認性の劣る条件で撮影している。正直にいえば、やはり別売のEVFは欲しいところだ。
この写真もテレ端62.5mmで撮影。絞りも開放としている。ピントの合っている部分のシャープネスは上々といってよいだろう。画面左のハイライトのエッジには色のにじみが散見される。
作品集(LX100)
レンズの焦点距離は31.5mm(70mm相当)、絞りはこのレンズの描写特性を最も引き出すことのできるF5.6としている。鋭いとまではいえないが、まあまあのキレ。画面周辺部には甘さが残る。
コップにピントを合わせているが、ガラス越しに撮影しているためかややシャープネスの欠ける描写となった。焦点距離はテレ端34mm(75mm相当)、絞りは開放のF2.8としているが、ボケ味は悪くはない。
ワイド端10.9mm(24mm相当)での撮影。F8と比較的深めに絞り込んでいるが、解像感は甘め。半逆光であることも響いているかも知れないが、もう少しキレは欲しく思える。色のにじみは少ないほうだ。
まとめ
コンパクトデジタルカメラとしては大型のセンサーを積む両モデルであるが、この手のモデルに触れる度に考えさせられるのが、その存在意義だ。
エントリーのミラーレスカメラと価格的に同じか、それよりも高価、しかもレンズの交換はできない。そのため、ミラーレスに対する何らかのアドバンテージが必要だろう。では今回の2つのモデルはどうであったか。
一部厳しいことを書かせてもらっているが、いずれも十分存在意義のあるカメラに仕上がっているかと思う。両モデルとも操作感はエントリーミラーレスを上回っているところが見受けられ、明るいズームレンズを搭載していることにも注目。さらに人とは違ったカメラで撮影を楽しみたい写真愛好家にとって、今回の両モデルは正に打ってつけだ。
大型センサーを搭載するコンパクトデジタルカメラとして、G1 X Mark IIおよびLX100のどちらのモデルをチョイスしても後悔はしないはずだ。