比較レビュー
ポケットサイズの1インチ高級コンパクト対決
PowerShot G7 X vs サイバーショットRX100 III
大浦タケシ(2015/1/7 08:00)
プレミアムコンパクトにセグメントされるコンパクトデジタルカメラは、現在カメラメーカー各社からリリースされている。しかもほとんどのメーカーでは、1モデルに留まらず、イメージセンサーやボディサイズなどに違いを持たせた複数がラインナップされていることが多く、その人気のスゴさを伺い知ることができる。
今回から2回に分け、特に注目度の高いプレミアムコンパクトの比較レビューを行うことにしたい。第1回目の今回はキヤノンPowerShot G7 XとソニーサイバーショットRX100 IIIの1インチセンサー搭載機を比較してみた。
よく似たイメージの外観
まずは外観。両モデルとも実によく似ている。メーカーロゴが無ければ遠目では見分けることは難しい。ただし、よくよく間近で見ると洗練されたボディシェイプを持つのはサイバーショットRX100 III(以下RX100 III)と言えるだろう。好みの分かれるところであるが、エッジがシャープで、PowerShot G7 X(以下G7 X)にくらべスマートな印象を受ける。
大きさと質量に関しても、G7 Xが103.0×60.4×40.4mm・304g(バッテリーおよびメモリーカード含む)、RX100 IIIが101.6×58.1×41.0mm・290g(同)と違いは少ない。ボディ表面の質感にしても、見た目は若干異なるが、手に持ったときの感触はさほど変わらないものである。
さらに、ボタンおよびダイヤル等の操作部材のレイアウトにしても両者そう大きな違いはない。特にレンズ付け根のリングやシャッターボタン周りの操作部材は似通っている。
とはいえ、全く同じと言うわけではなく、G7 Xでは露出補正ダイヤルがトップカバーに備わり、液晶モニターが上方向のみにチルトする。RX100 IIIはポップアップ式のEVFを内蔵するとともに、それに伴い内蔵ストロボは光軸上に配置。液晶モニターは上下方向にチルトする。動画ボタンが撮影モードダイヤルの下部にあるのもG7 Xとの違いだ。
EVFと露出補正ダイヤルの有無に違い
両モデルの操作感は、レンズ付け根のリングと露出補正について、その違いが出るといってよい。まずレンズ付け根のリングは、G7 Xがクリックあり、RX100 IIIがクリックなしとする。絞り優先AEの場合いずれもデフォルトでは絞り値の設定をこのリングで行うが、操作感がよいと筆者が感じるのはクリックのあるG7 X。慣れの問題もあるかも知れないが、G7 Xのほうが節度ある操作ができるように思える。しかもクリックの感触は上々だ。
さらに、直感的に設定できる露出補正ダイヤルをG7 Xは備える。撮影直後に画像を確認できるデジタルカメラでは、露出補正を行う機会は多い。RX100 IIIではその都度露出補正ボタンを押し、コントロールホイールの回転か十字キーの左右ボタンで設定を行わなければならないので、ここでは多少分が悪いように思える。
ただし、RX100 IIIにはEVFが内蔵されていることを忘れてはならない。デジタル一眼レフを普段使っている写真愛好家には、ファインダーに接眼したほうが被写体と対峙しやすく感じられることが多く、明るい屋外などでは被写体の状況も液晶モニターにくらべ格段に把握しやすい。
しかもRX100 IIIではEVFのポップアップで電源ON、ボディに収納すると電源OFFとなるため、慣れるとたいへん便利。アイピースが小さく条件によっては見づらく感じることもないわけでもないが、それでもEVFの搭載はたいへん心強い。G7 Xもせめて外付けのEVFが装着できるようになると違うのだが、今後に期待するしかない。
「1インチ約2,000万画素」の2台。利便性は高ズーム比のG7 X
撮影性能に関しては、前述の通りどちらも1インチで約2,000万画素(有効画素数は厳密には若干の違いあり)である。デフォルトのアスペクト比も3:2で共通だ。ともに裏面照射型CMOSを採用している。
設定可能な感度はどちらもISO125からISO12800までで、RX100 IIIのみISO80/100相当の拡張設定も可能とする。
搭載するレンズは、G7 Xが35mm判換算24-100mm相当F1.8-2.8。RX100 IIIが同24-70mm相当F1.8-2.8だ。やはりテレ端の画角の違いは大きく、使い勝手がよいのはズーム比の高いG7 Xといえる。望遠レンズらしい描写も得やすい。
また、レンズ先端からの最短撮影距離は、G7 Xがワイド端5cm/テレ端40cm、RX100 IIIがワイド端5cm/テレ端30cmとする。RX100 IIIのほうがテレ端では有利なように思えるが、G7 Xのほうがテレ端の画角が狭いため、撮影倍率的にその差はほとんどないといってよい。
高感度はRX100 IIIに分があるものの、両者似た仕上がり
描写については、まず高感度特性を見てみよう。ノイズリダクション設定はどちらもデフォルトの状態としている。
ISO3200までは両者ほぼ同じ。特にISO400までなら輝度ノイズおよびカラーノイズの発生は見られない。ISO800になると輝度ノイズがわずかに現れ描写に影響を及ぼしはじめ、ISO1600ではカラーノイズも現れるようになる。同時にシャープネスの低下がはじまる。ただし、この時点までは両者とも、画像を大きく拡大しないかぎりそう気になることはないはずだ。
さらに感度が上がると、両者ともノイズは顕著となり、エッジのにじみも際立ってくる。G7 XとRX100 IIIとの違いが明確になるのがISO6400あたりから。明らかにRX100 IIIのほうがノイズや解像感の低下は少ない。
階調再現性については、両者拮抗している。同じ被写体の実写画像を見比べてみたが、露出やホワイトバランスの特性に違いはあるものの、極端な差はない。今回の作例では両者ほぼ似た仕上がりといって差し支えないだろう。
良好なボケ味や操作レスポンス。プライドを感じるG7 X
レンズについては、いずれもワイド端およびテレ端とも開放からキレがよくコントラストの高い描写だ。画面周辺部に関しては開放で描写の甘さが見受けられるものの、いずれも2段ほど絞ると大きく改善される。色のにじみなどもコンパクトデジタルとして考えるならいずれも良好に補正されており、ディストーションもさほど大きいようには感じられない。描写特性について両モデルの差はほとんどないといってよい。
・近距離(広角端)
・近距離(望遠端)
ボケ味については、柔らかく感じられるのがG7 X。特にテレ側、開放絞りでの撮影では、RX100 IIIにくらべより柔らかく被写体同士が美しく溶け合う。さらに玉ボケについても、RX100 IIIは濁りのようなものがあるのに対し、G7 Xがクリアで美しい。ワイド側での両者の違いは少なく感じられるものの、総じてG7 Xのボケ味のほうがキレイだ。
・ボケ
レスポンスについては、まず起動の早いのがG7 X。ON/OFFボタンを押し撮影が可能となるまでにかかる時間は、筆者が実測したところではG7 X約1.1秒、RX100 IIIが約1.7秒。RX100 IIIでも日常使う分にはほとんど気になることはないが、G7 Xを使った後だとやはりその遅さは否めない。先に紹介したレンズ付け根にあるリングの操作性もレスポンスがよいのはG7 X。シャッターボタンを押したときの感触やダミーのシャッター音などもG7 XのほうがRX100 IIIにくらべ勝るように思える。このあたりは古くからカメラをつくり続けているメーカーのプライドともいうべきものだろう。
スマホ時代らしいRX100 III、チャージャー付属のG7 X
バッテリーの充電は、G7 Xが専用のチャージャーが付属、RX100 IIIはUSBケーブルを介してカメラ内充電とする。やはり使いやすいのはチャージャーの付属するG7 Xと感じる。RX100 IIIは予備バッテリーが不要なユーザーにはよいが、写真愛好家には物足りない気がするからだ。なおフル充電からの撮影可能枚数は、G7 Xが約210枚、RX100 IIIが約320枚(いずれも液晶モニター表示時/CIPA準拠)となる。
まとめ
今回G7 XとRX100 IIIの両者を比較して分かったのが、単独のレビューでは見えていなかったメリットやデメリットがいくつか見えてきたことである。それぞれの操作感の違いや描写なども含め、ある意味メーカーの思想や思惑が感じられたいへん面白い。結果的に甲乙付け難いものとなったが、いずれもメーカーの威信をかけたカメラであるからだろう。
なお、今回の比較レビューで分かった結果は、それぞれの個性として受けとってもらえればと思う。そして、購入の際はそのことを理解したうえで選ぶとよいだろう。