動物園の撮り方

意外な瞬間がシャッターチャンス

人気のパンダやコアラはこう狙え!

動物園の人気者と言えば? 動物たちの特徴を踏まえて、どうすればかわいく撮れるのかを、書籍「世界一わかりやすいデジタル一眼レフカメラと写真の教科書 動物園&水族館の撮り方編」から抜粋・再構成して解説します。(編集部)

ジャイアントパンダ:誰もがかわいいと思う愛くるしいポーズを狙おう

神様はどうやってこんなにかわいい動物をお作りになったのか? ジャイアントパンダを見るたびに思うのは私だけではないはず。そのパンダを誰よりも愛らしく撮りたい!と思いながらいつもファインダーをのぞいています。

遊び盛りの子どもならではの動きを狙う
ニコンD7100/AF-S NIKKOR 80-400mm f/4.5-5.6G ED VR/195mm(292mm相当)/絞り優先オート(F5.6、1/2,000秒、+0.3EV)/ISO1000/WB:オート(アドベンチャーワールド)
ときには後ろ姿も
大人のパンダの後ろ姿には、どこか哀愁が漂っていると思いませんか?

誰もがジャイアントパンダ(以下パンダ)をかわいいと感じるのは、4頭身にしか見えない体と、ふっくらとしたあの体型だからといえるでしょう。しかし残念ながら日本には東京の上野動物園と神戸市の王子動物園、南紀白浜のアドベンチャーワールドの3園でしか見ることができないのです。

子どもがまだ小さく親子でいるころのパンダは空調の効いた室内展示なので、どこの動物園でも必然的にガラス越しでの撮影になります。上の写真のように乳離れをして屋外で一人遊びをし始めたころが一番かわいらしい盛りといえるでしょう。

撮影当時2歳の「優浜」はやんちゃ盛りで、走り回って疲れるとミルクを飲んでまた遊ぶの繰り返し。天気が良かったため、芝生の緑も光り輝いて、より一層爽やかで幸せ感あふれる1枚になりました。

光が反射しない室内がシャッターチャンス
屋内の観客通路は暗いのでガラス面への反射はあまり心配いりません。昼間はいつも混んでいるので観客が少なくなる閉園間際が撮りどきでしょう(上野動物園)
屋外展示場は陽が当たって明るいので、このようにガラスに観客が映り込んでしまいます。角度を変えて撮ってみましょう(上野動物園)
竹や後ろの草で画面を覆う
背景に建物が映り込みやすい屋外展示場。餌の竹などで隠すようにするといいでしょう(神戸市立王子動物園)
背景にドアを持ってきてすっきりと
ごちゃごちゃした背景にならないようにすっきりとする場所を見極めよう(神戸市立王子動物園)
屋外のパンダを撮りたかったら涼しい季節に行こう

野生のジャイアントパンダは中国の南西部の高地から山岳地帯の高所に住んでいます。ですから暑さに弱く、動物園では気温が25度位を越すと屋外には出しません。屋外で撮りたいと思ったら秋から初夏までと限定されるので、動物園のホームページなどで確かめてから行きましょう。

なんとしてでも撮ってみたいのは子どものパンダです。一般公開のニュースを聞いたらなにがあっても駆けつけてカメラに収めたいものです。

コアラ:寝ていることが多いので食事タイムが狙いどき

現在日本の動物園では8園でのみ飼育されているコアラ。とても神経質な動物のため、撮影禁止の動物園もあるくらいです。もちろん厳格にフラッシュ禁止となっているので、館内に入る前には必ず設定をオフにすることを忘れずに。

逆光でふわふわと浮き上がった毛の質感を出す
ニコンD7100/AF-S NIKKOR 80-400mm f/4.5-5.6G ED VR /150mm(225mm相当)/プログラムオート(F4.8、1/4,000秒、-0.3EV)/ISO2000/WB:オート(埼玉県こども動物自然公園)

コアラは本来夜行性の動物なので、昼間は寝ていることが多いのですが、餌の時間には起きて動いています。食事タイムは必ずチェックしておきましょう。

コアラはたいてい空調の効いたガラス張りの室内にいます。薄暗い室内での撮影になるので、コアラ舎に入る前にカメラの設定を済ませておきましょう。まずはISO感度を1600以上に上げておきます。ほとんどのコアラ舎は外光を取り込むと同時に蛍光灯などを使ったミックス光線なのでホワイトバランスはオートに設定、露出補正はマイナスに。

餌の時間は混み合います。ベストポジションを確保するのは難しいかもしれませんが10分もすれば空いてくるでしょう。埼玉県こども動物自然公園では春や秋の気候の良いときに外に出すこともありますので、このときは絶対逃せないチャンスです。

キャッチライトを入れて生き生きとした表情を

ユーカリの葉を食べているときのコアラは案外顔を動かしているものです。室内とはいえ、ここは天窓から外光がたっぷりと入る展示施設なので、顔の角度によっては目にキャッチライトが入るはずです。液晶モニターで光が入っているかどうかを確認しながら、生き生きとした姿をカメラに収めてみましょう

どちらもかわいい食事シーンですが、天窓からの外光が反射して目にキャッチライトが入った右の写真の方が生き生きして見えますね(東山動植物園)
ユーカリの緑で彩りを添える
コンクリートなどで背景が灰色一色になることが多い室内展示。コアラの体も灰色なので、色を添えないと単調な写真になってしまいます。そんなときは意識してユーカリの緑を取り込みましょう(多摩動物園)
コアラって実はとっても偏食者

オーストラリア東部のユーカリ林にすむコアラは夜行性の動物です。そこで動物園では少しでも動いているところを見せたいと夕方のような薄暗い室内で飼っているのです。

コアラもカンガルーと同じ有袋類なので母親のお腹にある袋で育ち、半年ほどで外に出て背中におぶさって育ちます。実はコアラは600種もあるユーカリのうち20種くらいしか食べない超偏食者。朝食べた種類でも夕方には食べないこともあるそうです。

レッサーパンダを撮る:顔を上げたときがシャッターチャンス!

かわいい立ち姿で一躍有名になった千葉市動物公園の“風太”。あれ以来レッサーパンダの人気は一気に高まり、今では日本のほとんどの動物園で見られるようになりました。どこに行ってもカメラを向けられている人気者です。

寝ている姿だってかわいらしい
ニコンD4/AF-S NIKKOR 70-200mm f/2.8G ED VRII/200mm/絞り優先オート(F8、1/160秒、±0EV)/ISO 400/WB:オート(静岡市立日本平動物園)

ジャイアントパンダとは違ってレッサーパンダは日本のほとんどの動物園で見られ、必ずカメラを向けられている人気の動物です。日中は木の上などで寝ていることが多いのですが、寝小屋から出て来たばかりの朝や、寝小屋に帰る夕方などは元気よく動き回っています。

しかし、動きが速い上に顔を下げ気味で歩き回るため、撮るのはなかなか難しい動物です。寝姿や顔のアップ、夢中になって餌を食べているときなどが比較的撮りやすいでしょう。入園したら餌の時間や飼育員の解説の時間のチェックを忘れずに。餌を食べている時間は結構長いので、じっくりと撮影できるでしょう。

ぬいぐるみのような愛らしい姿のレッサーパンダとファインダー越しで目が合ったときは、なんともいえないトキメキを感じるはずです。

雪の上をはしゃぎ回る姿を撮る
寒さに強いレッサーパンダは人間が震え上がるような寒さの中でも雪の上を元気に走り回ります。このように雪が背景のときは露出補正はプラスにすることをお忘れなく。もう少し低いアングルから撮りたかったのですが、背景に寝小屋の壁が入らないギリギリのところでシャッターを切りました(旭山動物園)
得意の木登りをする姿を撮る
外敵から身を守る本能のためか木の上で眠っていることが多いのですが、餌の時間が近づくと目を覚まして動き回ります。木の茂みに埋もれないような角度を見極めましょう(高知県立のいち動物公園)
葉のない冬は青空バックで
木の葉が落ちた冬は青空バックで撮ることができる季節です。背景が青空だけのときは露出補正は必要ないでしょう(札幌市円山動物園)
シャッターチャンスは開園直後の餌の時間

ジャイアントパンダと同様に中国の高地に住む彼らは夏の暑さに弱い動物です。その代わり寒さには強いので寒冷地の動物園では雪の中でも活発に動き回る姿が見られます。木登りが得意で、特に夏場は涼しい風が吹く木の上で寝ていることがあります。

シャッターチャンスは開園直後に寝小屋から出てきて新鮮な笹の葉を食べているときか、昼間の食事タイムにおやつを食べているときでしょうか。寝姿も「かわいい~!」といわれる人気者です。

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この記事は、インプレス刊の書籍「世界一わかりやすいデジタル一眼レフカメラと写真の教科書 動物園&水族館の撮り方編」から抜粋しています。

「世界一わかりやすいデジタル一眼レフカメラと写真の教科書 動物園&水族館の撮り方編」(DVD付き。著:内山晟、イラスト:ゆきぴゅー、監修:ニコンカレッジ。インプレス刊、税別2,000円)

実際の本では、このほかにペンギン、ゾウ、キリン、ユキヒョウの撮り方を解説。さらに水族館での撮影テクニックも掲載しています。

内山晟