写真展レポート

ARIGATO SAKURAGAOKA Produced by ART PHOTO TOKYO

渋谷再開発エリアで繰り広げられる写真イベント

舞山秀一さんの作品

ART PHOTO TOKYOはアートフェアという枠組みの中で、遊びの要素を強く持ち込んだイベントだ。2年前のediton zeroは建て替え前の茅場町のビルを会場にしたが、今回は再開発エリアにあるヤマハエレクトーンシティー渋谷が舞台だ。写真家を中心に50名を超すアーティストが参加し、作品を展開する。

会場がある一帯の建物は入居者の退去が済み、建て替え間近。渋谷の街仕舞いと、新たな街開きの節目となる回として、「ARGATO SAKURAGAOKA」をフェアの名称に掲げた。

会場の使用が決まり、短い期間で作家を選び、参加を依頼した。ディレクター はギャラリストの吉井仁美氏。渋谷という場にふさわしく、ポップカルチャーを意識し、アート&サイエンスやテクノロジーなど新しいアートを盛り込んだという。

杉本博司、篠山紀信、森山大道、荒木経惟らの写真も並ぶが、舞山秀一、若木信吾、柿本ケンサク、さらにライアン・チャン、217..NINA、lukaといった若手も紹介されている。

ライアン・チャン

会場はコンサート会場やスタジオを備えたオフィスビルであり、5つのフロアにさまざまな大きさの部屋がある。部屋の奥にまた部屋が現れたり、来場者は迷路を進むような感覚で歩みを進める。

フューチャーされていたのがレスリー・キーだ。街で撮影したポートレートを展開した部屋と、樹木希林を撮影した写真などを出品した。

杉本博司の「海景シリーズ」。U2が2008年にリリースしたアルバム『No Line On The Horizon』のジャケットに使われた写真だ。このプリントはギャラリーが所蔵する特製版で、作家のサインとともにU2のメンバーのサインが入っている。

この光は実際の船舶の航跡を可視化したものだ。左が約200年前のもので、右が現在(10万t以上の船舶)のデータを基にしている。

同じ5,000隻だが、左は100年間を要し、右は1ヵ月でその数に達する。「かつてはイギリス船が多く、海運で得た富が産業革命につながった。このイメージは美しく見えますが、当時、船で運ばれていたのは奴隷も多くいました」と作者であるデザイナーの山辺真幸氏は話す。この光にはさまざまなストーリーが潜んでいる。

前回に続きスポンサーとなったライカカメラジャパンは、ミュージシャン藤巻亮太の写真を展示。このイベントのためにライカカメラジャパンが借用した未発表の写真で、この夏、富士山に登った時、ライカM9で撮影したものだ。

イベント情報は随時、Webサイトで更新される。この機会を逃したら、二度と体験できないアートフェアだ。

会場

ヤマハエレクトーンシティー渋谷跡地
東京都渋谷区桜丘町8-27

開催期間

2018年11月16日(金)〜2018年12月2日(日)

開催時間

12時00分〜20時00分(入館は18時半まで)

休館

月・火・水曜(木・金・土・日のみ開催)

入場料

1,000円(要サイト登録。高校生以下、60歳以上は無料)

市井康延

(いちいやすのぶ)1963年、東京生まれ。ここ数年で、新しいギャラリーが随分と増えてきた。若手写真家の自主ギャラリー、アート志向の画廊系ギャラリーなど、そのカラーもさまざまだ。必見の写真展を見落とさないように、東京フォト散歩でギャラリー情報の確認を。写真展の開催情報もお気軽にお寄せください。