写真展レポート

一度は行きたいパリフォトとは

見どころと日本からの出展ギャラリーを紹介

パリフォトの会場 グランパレの外観

今年もパリフォトがパリ市内のシャンゼリゼ駅の近くにある広大な展示会場のグランパレで11月10日〜13日の期間で開催されました。

世界中から集まったギャラリーは約160。出展しているギャラリーは展示している写真作品を販売することをビジネスの目的としていて、コマーシャルギャラリーといわれています。

パリフォトの会場 2階からパブリッシャーブースを見下ろしたところ

パリフォトは世界最大級の写真販売のフェア

最初に写真イベントの種類を整理しておきたいと思います。

街中にあるギャラリー単独で開催される展示ではなく、フェア、フェスティバルといわれる大きな写真イベントは、大きく2つに分けられるといえます。

一つは、写真作品を作る人向けのイベントで、作品を講評するポートフォリオレビューやワークショップの開催に重点が置かれているものです。

もう一つは、写真作品を購入する人たちを対象にしたイベントで、ギャラリーが会場にブースを構えてそこに扱い作家の作品を展示販売するものです。

もちろん、どちらも「写真作品の展示」は行われるので、写真を見ることは誰にでもできるようになっています。

日本で開催されるイベントを例にあげれば、神戸の「六甲山国際写真祭」は前者で、東京の「代官山フォトフェア」は後者といえます。

CP+のような機材を中心としたフェアは、これらのイベントとは別のジャンルになります。

パリフォトは、後者の写真作品を購入する人たち向けのイベントで、今年で20回目の開催となります。

出展するのは、世界中から集まった約160のギャラリーと約30の写真集を出版・販売しているパブリッシャーです。1日で計200弱のギャラリーとパブリッシャーを見て回るのはほぼ不可能でしょう。

特設展示のコーナーなどもあり、そちらのほうがギャラリーブースの数倍もの広さがあるため見ごたえがあります。

パリフォトに初めて行った人は、まず日本では、見ることのできないその規模の大きさに驚かされることでしょう。

日本のギャラリーの展示

今年は、日本のギャラリーは、タカ・イシイ、MEM、Yumiko Chiba Associates、EMONの4つのギャラリーと、AKIO NAGASAWAがパリのJEAN - KENTA GAUTHIERと共同で出展をしていました。

タカ・イシイギャラリーは、パリフォトの会場に入ってすぐの最初に目に入るところに出展し、アルミ箔を壁全体に張り付けた目立つ造作のブースデザインで目を引いていました。

展示作家は築地仁の作品を個展展示のように見せるコーナーがある一方、荒木経惟、トーマス・デマンド、細江英公、石元泰博、杉本博司、鈴木理策などの有名作家の展示もしていました。

壁面をアルミ箔で張り付けているので、とても目立っていたタカ・イシイギャラリー。

MEMは、音納捨三、河野徹、椎原修の1930年ごろに大阪で活躍していた3人の作品を紹介していました。

MEMギャラリーは展示に合わせて作品紹介のBOOKも用意。

今年、初めてパリフォトに出展をしたEMONギャラリーは、山崎博だけの個展形式で展示をしていました。

商談中のEMONギャラリー。

Yumiko Chiba Associatesは、若江漢字、今井祝雄、吉田克朗などのクラシックな写真を展示していました。

Yumiko Chiba Associatesの展示。

AKIO NAGASAWA ギャラリーは、須田一政の「風姿花伝」シリーズ全作品138点を大きなブースで一挙に見せて注目を集めていました。

人だかりができていたAKIO NAGASAWA ギャラリーの風姿花伝

どんな作品が出展されているのか

日本のギャラリーの展示をご紹介したように、それぞれのギャラリーは、見せたい売りたい作家・作品を、工夫を凝らして展示をしています。

パリフォトの展示ではテーマなどの制約がないので、海外のギャラリーも同じようにそれぞれが個性を出した展示をしています。

また、写真集でしか見たことのないような、名作といわれる写真を販売しているギャラリーもあるので、それもパリフォトならではといえます。

アウグスト・ザンダーのプリント3点。

筆者は2012年から5年連続してパリフォトを見ていますが、日本人作家の展示としては、森山大道、荒木経惟の2人の展示が減少し、まだ海外での露出が少ない作家がどんどん紹介されてきていると思います。

パリフォトの楽しみ方

パリフォトは、写真の販売を目的としたフェアです。日本では、なかなか写真を買うということをイメージしにくいのですが、欧米ではアート作品として写真を購入するということが想像以上に行われています。

それを実際に感じること、すなわち、どういう写真が販売されていて、どのような人々が集ってきているのかを体感できるのがパリフォトといえると思います。

この記事を読まれている方の多くは、ご自身で写真作品を創作されているかと思います。

自分の作品は海外で通用するのかどうか? パリフォトへ行くとその答が少しは、わかるかもしれません。

販売価格ですが、パリフォトで販売されている写真の価格は安くても1,000ユーロ以上で、十数万ユーロ(1,000万円以上)のものもあるのがパリフォトですので、販売価格の相場も想像以上に高いのです。

同じ時期にパリ市内で開催される別の写真イベントでは、もう少しリーズナブルな価格帯の作品を販売していますので、写真マーケットの販売価格が必ずしも高額なわけではありません。

来年のパリフォトに行こうと計画するならば

2017年のパリフォトは11月9日〜12日に開催されます。

事前にパリフォトの公式サイトで、どういうギャラリーがどういう作家を展示するのかを確認することができますので、たくさんの展示の中から見たい作家を探し出すことができます。

公式サイトはギャラリー検索、作家検索がとても簡単にスムーズにできますし、チケットもネットで事前購入ができます。また、今年のカタログをはじめ昨年、一昨年のものもネット購入できます。

上にも書きましたが、同じ時期にパリ市内ではパリフォト以外にも多数の写真関連イベントが各所で開催されますので、毎日いろいろなところを見て回り、写真漬けの旅になることをお約束します。

来年も、日本人の新しい作品がパリフォトで紹介されるのが今から楽しみです。

小林貴

1959年 横浜市生まれ。2013年に 株式会社インターアート7を設立。写真作品を中心に国内・海外でのアートビジネスに携わり、作家のマネージメント、アート関連の企画プロデュースなどを展開している。http://www.interart7.com