写真展告知

中藤毅彦展:ENTER THE MIRROR 2026

リコーイメージング株式会社は、写真家の中藤毅彦氏による写真展「ENTER THE MIRROR 2026」をGR SPACE TOKYOにて4月23日(木)から開催する。

中藤氏が30年にわたる写真家としての活動の中から、主に銀塩モノクローム作品を選出し、再構成した写真展。

Part1とPart2の2期で開催され、Part1は「Street Rambler」と題し、パリ、ニューヨーク、上海、ロシア、東欧など、世界各地の都市で撮影したストリートスナップ作品を展示。

Part2では、北海道をテーマにしたランドスケープ作品「Sakuan Matapaan Hokkaido」と、ロシア・サハリンで撮影した作品「Sakhalin」を展示する。

RICOH GRで撮影したデジタルの近作も併せて展示する。

僕は、故郷である東京も長年撮っているが、同時に世界の都市を旅しての撮影を続けて来た。

住む人間も含めた、都市そのものの個性を捉えるという、一種の都市論としてのストリートスナップだ。

これまで、さまざまな都市を撮って来たが、同じ方法で撮影しても、撮る街によって写真が変わり、その街の個性が立ち上がって見えて来る。

住む人々の気質や人種の違いでもあり、歴史背景や国の政治、経済事情でもあり、建物の様式や街並の新旧、気候など色々な要因が写真に現れるのだ。

ニューヨークとハバナを比較すると、同じ時代の隣り合わせた国とは思えない異なる貌が表れる。

資本主義世界の中心的な都市としての活気に満ちたニューヨークは、巨大な摩天楼が立ち並び、莫大な富が渦巻くが、格差や矛盾もあり、どこか重苦しい。

対してハバナは、街はボロボロで、物もお金もなく、生活は厳しいが、人々は陽気で人懐っこく逞しい。

初めてキューバを訪れた時、物質文明と違う幸せの有り様があるという事を目の当たりにし、価値観が変わる大きな衝撃を受けた。

現在のキューバはアメリカの経済制裁による燃料不足に苦しみ、国家としては危機的状況にある。

しかし、つい先日ハバナを訪れて来た映画監督の友人によると、相変わらず音楽に満ち、人々はしたたかに暮らしていた様子だ。

同じ都市でも、時間を置いて再訪すると、再開発で街の風景や人々の出で立ちが激変していた事もある。

いささか極端な例だが、1992年に訪れた上海はまだ高層ビルの1本もなく、戦後すぐの日本の様な古びた街並で人民服姿の人々が歩いていた。

ご存知の通り現在の上海では、近未来的都市風景が広がり、人々のファッションはあか抜け、懐かしい古い街並はもう殆ど見られなくなった。

ルーマニアの首都ブカレストを90年代末に訪れた時は、未だ革命の爪痕が街のあちこちに残り、野良犬が走り回り、マンホールの中にはストリートチルドレン達の集団が住む荒れた街だった。

5年後に訪れた時はそうした状況はすっかり消え失せ、綺麗なシティホテルやファーストフード店も出来始めていた。

ルーマニアを含めた中東欧の旧社会主義諸国は、今も西ヨーロッパの中心的な国々と比べると格差は有るが、それでも何回か訪れる中で大きな変化を実感する。

ロシアでは、モスクワやサンクトペテルブルグの街中で若い兵士達を撮影した。声をかけてみると、彼らも気の良い若者達だった。現在、ロシアはウクライナへの侵略戦争の最中にあり、兵士達は闘いの中で死に隣り合わせている。

長いスタンスで都市を撮り続けていくと、スナップがその都市の発展そのものの記録にもなるのだ。

Part2では北海道をテーマにしたランドスケープ作品「Sakuan Matapaan Hokkaido」と、ロシアのサハリンを撮影した作品「Sakhalin」を展示する。

父が単身赴任で釧路に住んでいた為、幼い頃に度々北海道を訪れていた自分にとって、北海道は原風景のひとつであり、深い思い入れのある場所だ。

「Sakuan Matapaan Hokkaido」は、現在の北海道と幼少時の記憶の光景を重ね合わせながら撮影した心象風景である。

「Sakuan」とはアイヌ語で「夏が来る」の意味で「Matapaan」は「冬が来る」の意味だ。

この地の本来の先住民であるアイヌの人々への敬意から北海道のシリーズに、このタイトルを付けた。

北海道の撮影取材の中で、2000年代初頭までは港に停泊するボロボロのロシア船や、逞しいロシア人船員をよく見かけた。

彼らの姿に、すぐ隣にある異国の存在を強烈に感じさせられた。

稚内を訪れた時、海の彼方に望んだサハリンの島影を見て、あの島に渡ってみたいという欲求が沸き上がり、2004年に訪れた。

当時は空路や稚内からのフェリーで渡航可能だったが、現在は、ロシアの戦争という状況もあり、運行は休止されている。

宗谷岬から海峡を隔てて対峙するサハリンはかつて樺太と呼ばれ、第2次世界大戦終了時まで南半分は日本の領土だった日本との縁の深い土地だ。

実際にサハリンを訪れると、日本時代の製紙工場や神社の跡などが朽ち果てながらも、未だ数多く残っているのを見かける。

しかし、いま我々日本人の多くは、天然ガスのプロジェクトなど以外に、サハリンを意識する事はほとんど無いだろう。

北海道からわずか43kmという近さでありながら、線引きひとつで言葉も住む人々も街並も全てが変わってしまう国境とは何か、国家とは何か、考えさせらる。

中藤毅彦

作家コメント

会場

GR SPACE TOKYO

開催期間

  • Part 1:2026年4月23日(木)~5月25日(月)
  • Part 2:2026年5月28日(木)~6月29日(月)

開催時間

11時30分~19時00分

定休日

火曜日・水曜日・祝日

作者プロフィール

1970年東京生まれ。
早稲田大学第一文学部中退。東京ビジュアルアーツ写真学科卒業。
作家活動と共に東京・四谷三丁目にてギャラリー・ニエプスを運営。
都市のスナップショットを中心に作品を発表し続けている。
国内各地の他、東欧、ロシア、キューバ、中国、香港、パリ、ニューヨークなど世界各地を取材。
国内外にて個展、グループ展多数開催。

「Sakuan Matapaan Hokkaido」で第29回東川賞特別作家賞受賞。
「STREET RAMBLER」で第24回林忠彦賞受賞。

主な写真集に「DOWN ON THE STREET」「HONG KONG 2019」「STREET RAMBLER」「Enter the Mirror」「Winterlicht」「Sakuan Matapaan Hokkaido」など。