写真展告知
竹沢うるま写真展:World Heritage Journey 世界遺産を訪ねて
2022年11月26日 07:00
本展は、写真家 竹沢うるま氏による写真展です。
氏が撮影を担当した2023年版キヤノンマーケティングジャパン・カレンダー「World Heritage Journey 世界遺産を訪ねて」を飾る作品13点を含む、計35点を展示します。
キヤノンマーケティングジャパン・カレンダーは2018年より世界遺産をテーマにしており、今回で第6回目となります。氏は知床、白神山地、小笠原諸島、屋久島などといった自然遺産を中心に、四季にあわせて日本の世界遺産を訪ねながら1年かけて撮影しました。繊細で多様な季節の移ろいを切り取った作品群を、阿波和紙にプリントします。
作品はすべてキヤノンの大判プリンター「imagePROGRAF」でプリントし、展示します。
日本の世界遺産を巡る旅は、紀伊山地で春の雲海を撮ることから始まった。日本では古来、季節を表すのに1年を15日ずつに区切り、二十四節気として季節に名を与えてきた。4月上旬は清明と呼ばれ、あらゆるものが清らかに明るく見える季節。ファインダーの中に浮かび上がる日本の春の風景は確かに輝いて見え、始まりに相応しい季節であった。
季節はここから堰を切ったように目まぐるしく変化していった。穀雨が降り、新緑が芽吹き、梅雨へと続く。夏になると同時に空は高くなり、頬を撫でる風に寂寥感が含まれるようになったと思ったら、秋を迎える。やがて冬が訪れ、雪が世界を浄化するかのように風景を白く染める。カレンダーは12ヶ月で構成されているが、実際には二十四節気に沿って構成しなければ表現しきれないのではないかと思うほど、日本の季節の移ろいは繊細で多様であった。
1年の撮影を終えて、心の中に深く残っている風景がひとつある。それは紀伊山地、熊野古道沿いの伏拝という集落で撮影した一本の桜の木である。まるで世界を祝福するかのように満開の花を咲かすその木の生命力に圧倒され、深く心を揺さぶられた。毎日、何度もこの木の前に立ち、シャッターを切った。それはまるで桜の木と会話しているかのようであり、手を合わせて拝んでいるような心持ちであった。日本では古来、すべての自然に神が宿るとされてきた。私はこの桜の木を通じて、日本の自然信仰の心の在り方を教わったような気がした。
春夏秋冬の撮影の最後、私は再び紀伊山地を訪れ、満開の花を咲かす伏拝の桜の木の前に立っていた。そこで確かに1年の季節が巡ったことを確認し、最後の一枚を撮った。そして日本の四季を巡る旅を終えた。
会場
キヤノンオープンギャラリー 1
東京都港区港南2-16-6 キヤノンSタワー2階
開催期間
2022年12月2日(金)~2023年1月10日(火)
開催時間
10時00分~17時30分
休廊
日曜日・祝日、2022年12月29日~2023年1月4日
作者プロフィール
1977年生まれ。写真家。同志社大学法学部法律学科卒業。在学中、アメリカに一年滞在し、モノクロの現像所でアルバイトをしながら独学で写真を学ぶ。帰国後、ダイビング雑誌のスタッフフォトグラファーとして水中撮影を専門とし、2004年よりフリーランスとなり、写真家としての活動を本格的に開始。2010年~2012年にかけて、1021日103カ国を巡る旅を敢行し、写真集「Walkabout」と対になる旅行記「The Songlines」を発表。2014年には第三回日経ナショナルジオグラフィック写真賞受賞。2015年に開催されたニューヨークでの個展は多くのメディアに取り上げられ現地で評価されるなど、国内外で写真集や写真展を通じて精力的に作品発表をしている。主なテーマは「大地」。そこには大地の一部として存在する「人間」も含まれる。近著にチベット文化圏をテーマとした写真集「Kor La」(小学館)や「旅情熱帯夜」(実業之日本社)がある。大阪芸術大学客員教授。
「うるま」とは沖縄の言葉でサンゴの島を意味し、写真を始めるきっかけが沖縄の海との出会いだったことに由来する。