イベントレポート

Inter BEE 2023レポート(前編):カメラ/レンズ/メモリーカードメーカー編

各社が新製品の業務利用を提案 CFexpress 4.0対応製品や“ぼざろ”結束バンドも

プロ向け映像/音響機器の展示会「Inter BEE 2023」(国際放送機器展)が11月15日〜11月17日に幕張メッセで開催された。主催は電子情報技術産業協会(JEITA)。前編ではカメラ、レンズ、メモリーカードなどを紹介する。後日掲載の後編ではそのほかの撮影アクセサリーを取り上げる。

なお12月15日までオンライン会場がオープンしている。

多くの来場者が詰めかけていた

未発売のα9 IIIを展示(ソニー)

2024年1月26日発売のミラーレスカメラ「α9 III」を展示していた。未発売かつ発表直後とあってハンズオンコーナーで高い人気を誇っていた。

動画面では、αシリーズで初めて4K 120p時にクロップ無しで撮影可能になっているのが特徴。同社では動画に特化したCinema Lineシリーズもあるが、静止画に重きを置きつつ動画も撮りたいユーザーなどにα9 IIIを勧めたいとのこと。

またEマウント機としては35mmフルサイズセンサー搭載機「ILX-LR1」(12月発売)の展示もあった。ドローン用などを想定した業務用カメラで、バッテリーやモニターを非搭載にすることで軽量化している。遠隔制御の無償開発キットがある点もアピールしていた。

開発キットの提供も

RF24-105mm F2.8 L IS USM Zをデモ(キヤノン)

12月上旬発売の大口径標準ズームレンズ「RF24-105mm F2.8 L IS USM Z」の姿があった。オプションでパワーズームアダプターが用意されたり絞りリングを備えるなど、動画撮影を強く意識したレンズとなっている。

デモ機にはリモコン端子付きのパワーズームアダプター「PZ-E2B」が装着されており、三脚のパン棒に付いた有線リモコン(社外品)で電動ズームすることができた。70-200mm F2.8程度のサイズ感だが三脚座が付いているので、このように三脚に乗せると使いやすそうだ。

PZ-E2Bを装着したところ。リモコンのケーブルが出ている

Z fやPlenaが人気(ニコン)

レトロな外観で人気を博しているミラーレスカメラ「ニコン Z f」を展示しており足を止める来場者が多かった。動画は4K 60p(DXフォーマット)などに対応しておりLog収録も可能となっている。

ブースではSmallRigのZ f用ケージに収まっており、ハンドルを使った動画撮影が体験できるようになっていた。ケージには大きめのグリップも付いているので、Z fユーザーは要チェックだ。

外装の人工皮革を交換できるプレミアムエクステリアサービスのサンプルも展示

また、Zマウントの新レンズ「NIKKOR Z 135mm f/1.8 S Plena」もあった。絞り開放でも円ボケが丸くなるということで、点光源が撮影できるセッティングとなっていた。

グループ企業MRMC製ロボットでの撮影デモも行われていた

GFX100 IIをシネマカメラの代わりに提案(富士フイルム)

ラージフォーマットのミラーレスカメラ「FUJIFILM GFX100 II」を動画制作に使用する提案に力を入れたブースとなっていた。8K動画の撮影も可能なことから、コストを抑えてシネマカメラの代替にもなるとしている。

同社は別会場にも展示スペースを設けていたが、そこではGFX100 IIに放送用の高倍率ズームレンズを装着したデモを行っていた。放送用レンズに馴染みのあるテレビ業界のほか、スポーツなどをより高画質に撮影するニーズに向けるという。

別会場では甲冑を被写体に撮影を体験できる
放送用の高倍率ズームレンズを付けたセッティング

機能が向上したiPhone用カメラアプリ(Blackmagic Design)

iPhone用の無料カメラアプリ「Blackmagic Camera」が展示されていた。同社シネマカメラと同じインターフェースでマニュアル主体の動画撮影ができる。

直近のアップデートで感触フィードバックが追加されたほか、フリッカーを防ぐシャッター速度をプリセットで選択できるなど多くの機能向上があった。

チューブ型マクロレンズの新モデル(サイトロンジャパン)

9月に発売したLAOWAのマクロレンズ「24mm T8 2X Macro Pro2be」を展示していた。レンズの赤い線まで防水になっているため、水中の生物などを撮影しやすいのが特徴。

従来品は明るさがT14だったが今回T8と明るくなった。鏡胴の角度別に3モデルを用意する。価格は54〜63万円前後。マウントは変換式で、各社のカメラに対応する。

先端部

また顕微鏡のような最大50倍の拡大撮影ができる「Aurogon」(受注生産品)もあった。ワーキングディスタンスは20mmに固定されており、ピントはカメラと被写体の距離で調節する。

セッティング例
撮影画像

投影機による検査風景を再現(シグマ)

シネマレンズのみの展示となっていたが、新しい試みとして投影機による解像力のチェック風景が見られる部屋を用意していた。

投影機はレンズのマウント側から光を当ててチャートを投影する装置。チャートを見ながら35mmフルサイズ領域で規格内の画質であることの説明を聞くことができた。同社シネマレンズは投影機による全数チェックをしているそうだ。

シネマレンズのパーツも展示されていた

超低反射のC-PLフィルター(マルミ光機)

業界で最低の反射率を実現したというサーキュラーPLフィルター「PRIME」シリーズをアピールしていた。9月に発売済みで、77mm径が2万5,00円程度となる。

プラズマスパッタリング成膜技術でコーティングをすることで、反射率0.18%を実現した。同技術によるコーティングは、一般のカメラ用フィルターとしては世界初の採用という。カラーバランスも従来品より優れるとしている。

フードをしても前から回転位置がわかるマークを設けた
キズにも強く、スチールウールで擦っても傷が付かないことをアピール

映画でも実績のあるフィルター(ケンコー・トキナー)

12月上旬からフォーマットハイテックブランドのフィルターの取り扱いを始める。同社はウェールズのメーカーでケンコー・トキナーのグループ企業。

欧米の映画業界や風景写真から高い評価を受けているそうだ。角型フィルターを中心としたラインナップで、マグネット式のホルダーも用意する。

他に無い珍しいタイプとして紹介されていたのが「ソフトゴールド」というソフトフィルターで、温かみのある暖色系の映りになるという。価格は1万8,700円。

ビンテージな雰囲気になるというソフトゴールド

CFexpress 4.0対応カードを参考展示(Nextorage)

CFexpress 4.0に対応したType Bカードを参考展示していた。発売は2024年初めを予定しており、容量は165/330/660/1,330GBをラインナップする。最大書込速度は3,500MB/秒となっている。

またCFexpress 4.0に対応したカードリーダー「NX-SB1PRO」も同時期にリリースする。インターフェースはUSB 40Gbps。ヒートシンクを内蔵することで速度低下を抑制する仕組みとなっている。

さらにUSB 40Gbps対応の外付けSSD「NX-PS1PRO」の発売も予定している。容量は1/2/4TB。こちらもヒートシンク内蔵型となる。

PCの周辺機器を繋げる据え置き型のドックも開発中とのこと。発売時期や仕様は未定となっている。ノートPCを接続すると様々な機器がすぐ利用できるといったケースを想定している。

CFexpress 4.0対応カードを展示(OWC)

Other World Computing(OWC)もCFexpress 4.0対応のType Bカードを展示した。「Atlas Ultra」と「Atras Pro」シリーズでいずれも10月に発売済み。

ともに最大書込速度は3,000MB/秒だが、最低継続書込速度がAtlas Ultraは1,500MB/秒、Atras Proは800MB/秒となる。

またCFexpress 4.0対応カードリーダーのプロトタイプも展示されていた。2024年早々の発売を予定している。

Apple製品への対応に強いメーカーで、外付けSSDなども同社製品と相性の良いデザインになっている

CFexpress 4.0対応のType Aカードが登場(RAID)

EXASCENDブランドのCFexpress 4.0のType BおよびType Aカードを展示していた。2024年初頭の発売を予定している。Type Bは最大書込速度3,200MB/秒、Type Aは同1,600MB/秒となる。対応カードリーダーも同時期に発売するとしている。

上がType B、下がType A
計測デモの結果

CFexpress 4.0のType Bカードはいくつかのメーカーがラインナップ(または予告)するが、より小型となるType Aカードは珍しい。

大容量8TBの外付けSSD(ITGマーケティング)

Samsungの外付けSSD「T5 EVO」シリーズを展示していた。容量2/4/8TBをラインナップし、2023年内に発売する。

USB 3.2 Gen 1接続で、読み書きは最大460MB/秒と既存の「T9」や「T7 Shield」よりも遅いが、それらに無い容量の8TBが登場する。価格は9万円。今後カメラでの動作検証も進めていくとしている。

アニメ「ぼっち・ざ・ろっく!」とコラボした結束バンド(リップタイ)

RIP-TIEは、面ファスナータイプのケーブルラップメーカー。ベルクロ社製の面ファスナーを採用したり、米国製造にこだわり1万回以上の着脱テストをクリアするなど品質を重視したプロ向け結束バンドで知られる。

「ぼっち・ざ・ろっく!」には「結束バンド」というバンドが登場することからコラボレーションが企画されたという。

4人のキャラクターの推しカラーを採用したというもので、キーホルダータイプとケーブルキャッチタイプを用意する。価格は前者が1,100円、後者が990円。発売は12月下旬で、予約受付中となっている。ケーブルキャッチタイプは粘着テープが付いており、壁などにケーブルを固定できる。

4キャラクターに黒Tカラーを加えた5本セットもそれぞれのタイプで販売する。

キーホルダータイプ(5本セット)
ケーブルキャッチタイプ(5本セット)
RIP-TIEはカスタムロゴにも対応している

1981年生まれ。2006年からインプレスのニュースサイト「デジカメ Watch」の編集者として、カメラ・写真業界の取材や機材レビューの執筆などを行う。2018年からフリー。