イベントレポート

釣り好き写真家、レンタルボートで絶景撮影に意欲

ヤマハマリンクラブ「Sea-Style」体験レポート

唐突であるが、筆者は釣りが好きである。釣りにもいろいろあるが、筆者が好きなのは船に乗って沖に繰り出す海釣りである。まあ、仕事(写真)もあるし他にも優先したい趣味(写真)があるので、せいぜい2~3ヶ月に1度行ければいい方だけど……。だが、やっぱり船はいい。釣果はともかくとして(負け惜しみではない)、船に乗れば日常とはまったく違った海上からの風景を楽しむことができ、とても新鮮な気分になれるのだ。

そんな乗合船に乗っているとフと思うことがある。「自分の好きな場所に行って、自分の好きなタイミングで写真を撮れたらどんなに素敵なことか」。しかし、さまざまな人が釣りを目的として乗り合っているという性質上、そんなわがままは当然、許されないことだ。だからと言って、自分で船を所有して、自分で操縦するなどと言うことは、夢のまた夢でしかなかった。

乗合船に乗っているときに出会った奇蹟的な東京湾の夕景。持ち合わせのスマホで撮ったけど、ちゃんとしたカメラがあれば……自分で撮影ポイントを選べれば……と強く思った1枚だった。

などと、薄っすら落ち込んでいたところデジカメ Watch編集部から1本の電話をもらった。「ヤマハ発動機が運営している『Sea-Style』というサービスの体験会に参加してみない?」と言うものである。なんでも会員になれば3時間4,100円~というリアリティ溢れる料金でモーターボートをレンタルできるそうな。

そんな手段もあるのか!

Sea-Styleとはどんなサービスか。体験会に参加してみた

改めて、ヤマハ発動機が運営するヤマハマリンクラブ「Sea-Style(シースタイル)」とは何かというと、それは「会員制のボートシェアリング(レンタル)サービス」と言うことになる。2006年に発足して、海外を含め全国約140カ所のマリーナでモーターボートをレンタルでき、旅先でも気軽にマリンスポーツを楽しめるのが特徴だ。

天王洲アイルのザ・クルーズクラブ東京で開催されたSea-Style説明会の様子。

在籍会員数は約2万人を超えており、毎年、右肩上がりで増えているとか。年間の利用者数は延べ約6万人以上にも上るそうだ。それでもやっぱり、モーターボートを借りるなんて自分にとっては縁の遠いセレブな世界なんでしょ?とどこか疑心暗鬼でいたのだが……

入会金:2万1,600円
月会費:3,240円
利用料:3時間4,400円〜(ボートによって異なる)
※いずれも税込

ハッキリ言って思っていたよりもぜんぜん安い!もちろん、どこまで利用できるかにもよるが、これで真面目な写真作品の制作活動に利用し、友人や家族と余暇を楽しむのにも利用し、その上いままで知らなかった自分を発見できたりなんかもするのだったら、携帯電話維持するのよりぜんぜん安いではないか。

実際、会員の約半数が普通の会社員が占めていると言うのだから、その意外な身近さが分かってもらえるのではないだろうか。筆者のようなしがない個人事業主でさえそう思うのだからきっと間違いないだろう。

Sea-Styleが利用できるマリーナは北海道から沖縄まで日本国内に約140カ所。さらには、マリンスポーツのメッカであるハワイのオアフ島や、タイのパタヤビーチにもSea-Styleのホームマリーナがあるそうだ。エリア広い。

しかし、モーターボートを操るには船舶免許が必要だ。海の上でも陸の公道と同じようにルールがあって、安全に配慮する義務があるというのは理解できるものの、やっぱり取得は大変だろうしお金がかかるのだろう、とここでまたハードルの高さを不安に感じてしまうもの。

そんな船舶免許を取得するためヤマハボート免許教室レギュラーコースのお値段はと言うと……

受講料:6万4,820円
国家試験料:2万5,900円
諸費用:8,280円
合計:9万9,000円

と、これまた思っていたよりもぜんぜん安い!25年以上前に筆者が苦労して取得した中型自動二輪免許(当時の区分)より安いではないか。

さらに、ヤマハボート免許教室ではオンラインで座学を受講できる「スマ免コース」も用意されており、そちらはレギュラーコースで8万8,900円とますますお得だ。

受講料:5万4,720円
国家試験料:2万5,900円
諸費用:8,280円
合計:8万8,900円

なお、ここで言う船舶免許とは「2級小型船舶操縦士」の免許のこと。ボートの大きさは長さが24m未満で総トン数20トン未満であり、航行区域は海岸より5海里(約9km)以内となる。例えば東京湾であれば全域OKであるし、筆者の夢である「自分の好きな場所に行って、自分の好きなタイミングで写真を撮れたらどんなに素敵なことか」は余裕でカヴァーできるはず。外洋を目指して大型ボートでロングクルージングしたい、と言うのでもなければこれで十分すぎるだろう。

つづいて体験クルーズに参加してみる

以上のことを説明会で聴き「これは夢が現実となる素敵サービスなのでは!?」と気持ちが盛り上がったところ、引き続いて実際に東京湾体験クルーズが行われたので、こちらにも参加した。今のところ免許がないので操縦できないのが悔しいが、ボート上でカメラを構えて試写することはできる。

もうウッキウキ、いざモーターボート上での写真撮影を存分に体験してみよう。

試乗会で搭乗するモーターボートは割り当てが決められており、筆者が乗った船はSR320FBというモデル。ラウンジと見まがうようなソファーやテーブル、簡易的なキッチン、トイレ、エアコンなどが装備されているという、Sea-Styleが用意するボート中では最も大きく豪華な最新鋭機。カメラで例えたら、各メーカーが誇るフラッグシップ機と言ったところだろうか? かなりの場違い感を覚えてしまったものの、滅多にない機会なのでこれはこれで最高に嬉しい。

晴れた日の大海原を疾走するイメージ画像は以下の通り。

※公式画像

などと喜んでいる間に、ボートは豊洲運河方面を目指して天王洲アイルを出発。初めにシャッターを切ったのは京浜運河からの眺め。生憎の曇天だったのは残念だったけれど、やっぱり普段とは違う視点で東京の街並みを見るのは新鮮。

京浜運河から東京湾奥に出る。道路や公共交通機関では味わえない移動の自由さを感じて楽しい。決して写真日和とは言えない雨雲を逆手にとって、オリンパスのアートフィルター「ドラマチックトーン」を使ってみたら、本当にドラマチックな写真が撮れた。

こちらは幕末のペリー来航に備えて砲台を設置するために急造したという第六台場。お台場公園になっている第三台場と違って陸続きでないので、こんなに近づいて撮れるのは船ならではだ。同じくオリンパスの「ドラマチックトーンII」で。

第六台場を過ぎたところでお約束のレインボーブリッジ!たまに自動車で通るけど、道路交通法的に慎重さを要求される運転時と違って、海上から見るレインボーブリッジにはまた不思議な品位がある。アートフィルター「トイフォト」で。

あああ! これは噂に聞いた晴海橋梁! 1957年に開通して東京都港湾局専用線として運用されていたものの、1989年に廃止されたという東京湾に残る昭和の遺構だ。行って撮ってみたいとは思っていたけど、今ひとつ行きにくくて先延ばしにしていた光景に、この日出会えるとは。海から見ると古の物語が意外に身近で楽しいなあ、などと感じ入ってしまった。アートフィルター「ブリーチバイパス」で。

というところで、月島付近でボートは折り返し地点(海点?)を迎えた。「この羅針盤でわれらは大洋を渡るのだ」と言いたくなる、ボートに設置されたカッコいいコンパス。

今はどう動かしていいかさっぱりだけど、近いうちに免許を取ってSea-Styleに入会したら手足のように操りたくなるカッコいい操縦席。ナビが標準装備されているあたり、安心感も高い。

帰り際にはちょっと寄り道して東京モノレールを望める地点(海点?)にボートを進めてくれた。鉄道写真は撮影地の場所と時間が非常に重要という話をよく聞くけど、自由に会場から撮れるSea-Styleなら、これまでにない視点でモノレール撮れちゃうんじゃないかな?と思わなくもなかった。路線が臨海限定だけど。

海上撮影会を開くなんてどうだろうか?

もとより海上で自由に写真を撮りたい(ついでに釣りもしたい)と思っていた筆者にとっては最高にいろいろなことを教えてくれたSea-Styleの説明会&クルーズ体験だった。今回はメディア向けの体験会だったが、こんな世界があるのなら多くの人に知ってもらわなければ、と思い筆を取った次第である。

しかし、ちょっと欲を言えば、今回は体験会だったので仕方ないが、写真を撮るなら写真に相応しい場所と時間を選んで、自分で自由に船を動かしたいという衝動に駆られてしまうのも確か。そうした訳で、何としても船舶免許を取らねばならないと言う気持ちに、まんまと駆りたてられてしまった。

それにしも気になるのはやっぱりお値段。今回は最高峰にラグジュアリーなSR320FBを割り当てられたものの、やっぱり「自由に手軽に海上で写真を撮りたい」という主旨にはやや反しているように思う。3時間レンタルのお値段にしても8万5,000円~となっている。

しかし、Sea-Styleにはさまざまなボートが用意されており、最も格安のFW-20Ltdなら3時間4,400円からと我らの味方感覚。安定した椅子などは設置されていないが、気の合った仲間同士ならこれもありだろう。

※公式画像

こちらでは漁船感が強すぎてちょっと……と言う場合にオススメされたのが以下の写真のAR240。

青い海をさっそうと走るイメージは以下の通り……

※公式画像

これなら、定員は11名で、ボートの後ろにも前にも人を配していろいろな写真が撮れる。レンタル料金は3時間1万8,900円~であるが、仲間を募れば燃料費をプラスしてもワリカンでかなり格安に済ませられる上に快適そうだ。

こんな感じで、目的に合ったボートをいろいろ選べるのもSea-Styleのいいところ。いかがだろうか?今回は東京湾奥の景色をちょっと撮影したにとどまったが、(ルールはあるものの)自由になれば岸からでは絶対不可能な絶景の自然風景を撮ることも出来るに違いない。

俄然、免許を取ってSea-Styleに入会する気になった筆者は、写真を愛するわれらのために「海上撮影会」なども目論んだりするようになった。その節はどうかぜひ!

曽根原昇

(そねはら のぼる)信州大学大学院修了後に映像制作会社を経てフォトグラファーとして独立。2010年に関東に活動の場を移し雑誌・情報誌などの撮影を中心にカメラ誌等で執筆もしている。写真展に「イスタンブルの壁のなか」(オリンパスギャラリー)など。