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ニコンの太っ腹すぎる“東京夜景ヘリ空撮ツアー”体験記

ニッコールレンズ80周年・8,000万本記念キャンペーンより

 1月18日、千葉県浦安市のへリポートに幸運な10人が集まった。ニコンが2013年夏に実施した「ニッコールレンズキャンペーン プレミアム撮影体験ツアー」の当選者だ。

 同キャンペーンはニッコールレンズ80周年・累計生産8,000万本を記念して行なわれたもので、ニコンのニッコールレンズ購入者に対し、「プロ写真家と行く、28のプレミアム撮影体験ツアー」もしくは豪華な記念本が当たるというもの。

 今回取材したのは、前回の7,000万本キャンペーンでも人気が高かったという“東京ヘリ空撮ツアー”の第2弾。時間帯を日中から夜に移し、撮影レベルもアップした「ヘリコプターでの夜間飛行 大都会を撮るナイトスカイクルージング」だ。講師は前回に引き続き、写真家の加藤健志氏。

講師は航空風景写真家の加藤健志氏
東京タワーをじっくり狙えるルートを設定

 「今日は必ずいい写真を撮れるようにします」との優しく心強い言葉とともに、事前講習が始まった。今回のルートは、浦安の飛行場から東京タワーを目指し、タワーを右手に見ながら周りをぐるっと回り、途中で旋回。左手に見ながら同じルートを戻るというもの。つまり、ヘリの左右どちらの窓からでも東京タワーをじっくり狙えるわけだ。

初挑戦でも迷わないよう、露出設定は1/60秒・F4・ISO6400を基準とした
加藤氏の使用機材。撮影位置を記録するためのGPSユニットをホットシューに取り付け、レンズ鏡筒部分をゴムひもで吊ってブレを抑える

 また、今回の空撮ツアーの大きなポイントとして、上空でヘリコプターの窓を開けて撮影できる点がある。年間200日を飛ぶという加藤氏にとっても、ヘリをチャーターして、かつ窓を開けて撮影できる機会というのは相当に珍しいそうで、なんとも“太っ腹”な企画だと語ってくださった。

 ちなみに「窓を開けて飛行中のレンズ交換は一発で大量のゴミが入り込んでしまう」そうで、各参加者は入魂のレンズ1本を選ぶことになった。当日はニコンによるカメラやレンズの貸し出しもあったが、またとない(と感じるほどレアな)機会を前に、結果として持参の愛器+レンズを手に飛び立つ参加者が多かったようだ。

 筆者はツアーの模様を撮影すべく、ヘリコプターの助手席に乗り込んだ。窓は足元まで広がっており、眼下に大都市の夜景が広がる。エレベーターが動き出すようにフワリと離陸すると、ヘリは東京タワーを目指して海上を進んだ。天候に恵まれ、揺れは全くない。

スタッフの手助けを受けながら乗り降りする。初ヘリの筆者は、その音と離陸時の風圧に驚いた
ヘリの姿を撮影する参加者とスタッフに見送られながら、上空へ
東京タワーを目指す
お台場付近。フジテレビ社屋と船のカラフルなライトアップが美しい
眼下にも夜景が広がる

 港区上空にくると、いよいよ窓が開けられた。機内にヘリの騒音が入り込み、後部座席の会話も助手席まで届かなくなる。窓は大きく開いており、超広角レンズを持ってきても遮られることはないだろう。

参加者2名が左右それぞれの窓を独り占めできる
六本木ヒルズを見下ろす
冷たい風を激しく浴びながらも、どんどん撮影する

 しばらくして窓が閉められると、機内に静寂が戻った。ヘリポートに帰還すると、各自がこれから講評会で発表するベストショット2点を選択する。撮影から戻った参加者は皆、上空の冷たい空気にうっすらと鼻を赤くしており、コーヒーで冷えた体を暖めていた。

撮ったばかりの写真からベストショットを選ぶ

 そして初対面の参加者同士が、特別な体験を通じて撮影話で盛り上がる。同様のヘリチャーター自体はナノクリレンズ1本分程度の覚悟があれば可能なようだが、こうした交流はニッコールレンズキャンペーンのツアー以外にないだろう。

 筆者は続けて加藤氏の撮影に同乗させていただき、参加者と同様の夜景撮影に臨んだ。大きな窓を頭から腰の位置まで押し下げるには、多少の勇気が必要だった。

オレンジの東京タワーが映える

 真っ暗な機内では、カメラの細かな操作は完全に手探り。搭乗前に設定を決めておく大切さを理解した。あまり欲張って窓に近づくと、風圧でメガネが揺れる。シャッターを切るのに夢中で、意図せず傾いているカットも多くあった。

アングルによっては、お台場方面も一画面に収まる
月が出ているのを発見。奥にうっすら東京スカイツリーが見える
角度を変え、スカイツリーを中央に望む
都会の大動脈を見下ろす

 地上に戻ってから確認したところ、上空での15分間で150枚ほどを撮影していた。記事内の夜景写真はいずれもDfをISO12800という超高感度に設定。それでも手ブレさえしなければ実に鮮明だ。参考までに、JPEG撮って出しのオリジナルファイルを1点掲載する。

Df / AF-S NIKKOR 28-300mm F3.5-5.6 G ED VR / 3,280×4,928 / ISO12800 / F4.2 / 1/60秒 / 44mm

 今回筆者が選んだ28-300mmのような手堅さ重視の高倍率ズームレンズでも、十分に満足いく描写。だがそれだけに、「これでここまで写るなら……!」と更にハイグレードなレンズに食指が動く気持ちもわかった。

 撮影後の講評会では、各自が選んだベストショット2点をモニターに写し出した。空撮+夜景という特殊なシーンで“作品”を残せるのか心配もあったという加藤氏だが、結果的には参加者全員が夜の大都会をバッチリ写しとめ、それぞれの視点で切り取った東京夜景に話が弾んだ。

水平の撮り方や切り取り方の面白さに加え、フライトのタイミングによる空模様も作品にバリエーションを与えた

 参加者10名の中には、女性2名の姿もあった。ともにマニュアル露出で撮影するのは初めてだったとのことだが、「先生が丁寧に設定を教えてくださってので安心して臨めた」、「満足いくものは1枚撮れればいいほうと思っていたけれど、思った以上に撮れて嬉しい」と笑顔。

 男性参加者にはベテランの方が多く、「上空の寒さは想定内だったが、シャッタースピードを遅くするところに思った以上の難しさがあった」との分析や、「もう1回やってみたい!」と早くも次に意欲を見せるコメントも聞けた。

 ニコンWebサイトには後日、公式レポートとして参加者や講師の作品がいくつか掲載予定とのことで、こちらも楽しみにしたい。

 今回の撮影体験ツアーで訪れたのは、ヘリコプタークルージングで知られるエクセル航空の浦安へリポート。講評会を行なったのとは別フロアに、普段の搭乗客が利用する広々としたラウンジがあった。そちらにはカフェバーや見晴らしのいいデッキテラスがあり、特別な日に再び訪れようと心に決めた。

エクセル航空のWebサイト

 なおこのレポート内の全写真は、筆者私物のDfに「AF-S NIKKOR 28-300mm F3.5-5.6 G ED VR」もしくは「AF-S NIKKOR 16-35mm F4 G ED VR」を組み合わせて自ら撮影に挑んだ。加藤氏のアドバイスに加え、どちらのレンズにも手ブレ補正が入っており、慣れないヘリの中で撮影するにも安心感が高かった。

 そして機内には明かりがなかったため、状況カットはDfの常用最高感度であるISO12800を基準に、さらに最大3段程度の増感でなんとか写し止めることができた。それでもシャッタースピードは1/15秒〜1/30秒程度がせいぜいで、これまたVRの威力を思い知らされた。

Df
AF-S NIKKOR 28-300mm F3.5-5.6 G ED VR
AF-S NIKKOR 16-35mm F4 G ED VR

 最後に加藤氏に「次にまた同様の機会があるとしたら」と展望を伺ったところ、「(ここ10年で量が減少しているという)流氷の空撮ツアーなんて実現できたら素敵ですね」とのお話だった。名前に負けない“プレミアム撮影体験”を取り揃えるニッコールレンズキャンペーン、今後の展開にもますます期待がかかる。

 そして、先日早くもニッコールレンズの累計生産本数は8,500万本を達成したそうだ。この調子で9,000万本、1億本と数を伸ばしていただきたい。この太っ腹キャンペーンに触れて、またひとつニッコールレンズを買うきっかけが増えてしまった。

(本誌:鈴木誠)