イベントレポート

【CP+】ヨシダナギさん「ヨシダナギ、愛する少数民族を語る ~NIKKORレンズで切り取る民族の世界~」レポート

ニコンブース写真家セミナーより

ニコンステージにはたくさんの人が詰めかけた。壇上の人物は、右からヨシダナギさん、マネージャーのキミノさん。

CP+2018のニコンブースでは、今年もさまざまな写真家が登壇した。なかでも3日目のヨシダナギさんのステージは「スペシャルステージ」に位置付けられ、3日目(3月3日)の12時50分からのステージのみの登場ということもあり、特に視聴客が多かった印象だ。

ステージにはヨシダナギさんとマネージャーのキミノさんが登壇し、2人の掛け合いでトークが進んで行く。

ヨシダナギさんといえば、アフリカやアマゾンなどの秘境に暮らす少数民族を撮影し、その魅力や不思議を発信していることで有名な写真家だ。もともとヨシダさんがアフリカに興味を持ったきっかけがあるのだが、これがまたなんとも常人からはかけ離れた感覚だった。

「私がアフリカに興味を持ったきっかけは、5歳の時にたまたまテレビで見たマサイ族の姿でした。青い衣装を着て黒い肌の人が槍を持って飛び跳ねる姿を見たときに『大きくなったらこれになろう』と思ったんです」

ヨシダさんが子どもの頃憧れたというマサイ族。

それが叶わぬ夢だと気付いたのは10歳の時。母親に「あなたが小さい時に好きって言っていた黒い人はアフリカ人っていうまったく国籍・人種の違う人なんだよ」と諭されて、ようやく理解したという。

始まりから大爆笑を誘ったステージで、最初に紹介されたのはエチオピアの「アファール族」。ここまで見事なアフロヘアーが決まっていることは滅多にない。何年も何回もエチオピアに通い詰め、ようやく出会えたアフロヘアーだった。

エチオピアの「アファール族」。特徴的なアフロヘアーは彼らの地毛だ。

アファール族にとっても、ヨシダさんが初めての外国人。その警戒心は相当のものだったようだ。見知らぬ人間が近づき、彼らにとってまったく未知のカメラという器具まで持っていたのだから無理もない。石も投げられたという。

ところが、ここでヨシダさんは彼らを自分のペースに巻き込んでいく。

「交渉は難しいと思ったんですが、まず彼らに敵対心を抱かれないように、ガイドと一緒に両手を挙げて手を振りながら、日本語で『ヨシダだよ』って言いながら近づいていきました。そうしたら彼らはキョトンとしていて、これはいけると。次はカメラを見せて『カメラって言うんだ』と見せたら、彼らはカメラを知らなかったんだけど、『へー、カメラっていうんだ』と興味を持ちました」

そして無事に撮影許可をもらったヨシダさんは、村から離れた場所へ向かった。そこは、アファール族にとっての聖地、ダロル火山。

「この6人を車に乗せて、一緒に2日間かけてがダロル火山まで旅したんです。硫黄とかが吹き出ているところなので、地面は黄色やオレンジ色をしています。この時は運良く川も黄緑に染まっていました」

このときは偶然にも、アファール族の聖地と呼ばれる場所での撮影となった。

「ダロル火山は彼らの聖地です。おじいちゃんやひいおじいちゃんから『黄色の大地で緑の川が流れる場所がある』と伝承されていますが、彼らは『そんな場所あるわけないじゃないか』と思っていたんです。だから、その景色が広がっているのを見た時に、彼らは飛び跳ねて喜んでいました」

次に出てきた写真は、ナミビアの「ヒンバ族」。世界一美しい裸族と言われている部族だ。「赤い肌が美しい」という美的センスがあり、溶かしたバターに赤土を混ぜて全身に塗っている。

ナミビアの「ヒンバ族」。ポーズはヨシダさん指導のもとに決められた。

ナミビアは比較的交通の便がよく、観光客も数多く訪れる。しかし、さすがにポーズやロケーションをしっかり決めて撮影となると、彼女たちも恥ずかしいようだ。そういったとき、ヨシダさんは民族の性格に合わせてコミュニケーション手段を変えていくという。

「『ヨシダだよ』って擦り寄っていく時もあれば、大御所を収めるかのようにゴマをする時もあります。彼女たちは女子高生のような性格だったので、ちょっと挑発してから、最後に『残念だな。可愛いのに』と持ち上げました。すると『はぁ!? できるし!』という感じでポーズをとってくれました」

そうしてでき上がったのが上記の写真だ。その威風堂々とした振る舞いからは、恥じらいなど感じられない。言語も違うはずの彼女たちに、このポーズをとらせてしまうヨシダさんのコミュニケーション能力が素晴らしい。ちなみに表情は「なめんな」と怒っている顔のようだ。

最後の写真は、ブラジルのアマゾンに住んでいる「エナウェネ・ナウェ」という民族だ。アフリカの民族とは違い、かなり人懐っこい性格だったよう。

アマゾンでの取材も。一時期激減したエナウェネ・ナウェ族も、いまは人口が増えたそうだ。

「彼らはすごくフレンドリーで、気づくと至近距離でしゃべってるんですよ。鼻と鼻がくっつくんじゃないかと思うくらい。多分本当に人が好きなんだと思います。友好的な民族でした」

ここでこの日、初めて撮影テクニックの話になる。キミノさんから「撮り方でこだわりがあるんですか?」と質問が飛ぶと、ヨシダさんはアフリカ人の黒く綺麗な肌の表現をあげた。

「私がアフリカ人とかに惹かれた理由は黒い肌の美しさなんですよ。でも日が強い時間帯に黒い人を撮ると、綺麗な黒い肌じゃなくなるんです。この黒い肌にはいろんな黒があるんですが、綺麗に再現できるのは朝夕のマジックアワーと呼ばれる1時間だと気づいたんです」

確かにこの写真も逆光で撮影されたもの。ポートレートは逆光で撮るという基本は、肌の色に関係なく通用するようだ。

今回は特別に、イベント後にも話を聞くことができた。やはり写真を撮るときにはコミュニケーションに苦労するようだ。

「彼らはすごく運動神経がいいので、ポージングが上手なイメージあると思うんですけど、体は硬いんです。彼らから学んだのは、人のポーズをコピーする能力は意外と難しいというか、空間把握能力がないとコピーできないことです」

「ものまねはすごく西洋文化的なもので、日本人は『ものまね』というお笑いのジャンルがあるくらい模写することに長けています。しかし、アフリカ人は真似することがないので、真似してみてといってもできないんです」

「朝早くの逆光で撮るのが好きです。そのためストロボを現地に持っていってます」

カメラのイベントながら、カメラの話はあまりなかったトーク内容。しかしその話をよくよく紐解くと、示唆に富む内容が多いステージだった。

中村僚

編集者・ライター。編集プロダクション勤務後、2017年に独立。在職時代にはじめてカメラ書籍を担当し、以来写真にのめり込む。『フォトコンライフ』元編集長、東京カメラ部写真集『人生を変えた1枚。人生を変える1枚。』などを担当。愛機はNikon D500とFUJIFILM X-T10。