デジタルカメラマガジン

「美しき天気の写真」はこう撮る!

“ダブルレインボー”はF値とWBとISO感度が決め手

5月20日発売の最新刊「デジタルカメラマガジン2016年6月号」の特集1は、「美しき天気の写真」。晴れ、曇り、雨、嵐、虹、雷、霧など様々な気象で傑作をものにする方法34通りを紹介しています。ここではその中から一部を抜粋します。

アーチを越えて飛ぶ飛行機と虹のコラボ
(山下峰冬)

大きな弧を描くダブルレインボーを飛行機が突き抜けていく、希望に満ちたシーンを表現したかった。虹の濃度や飛行機の位置が刻々と変わる状況下では、一手先を読みながら露出と構図を判断する
キヤノン EOS 5D Mark II/EF16-35mm F2.8L II USM/21mm/絞り優先AE(F11、1/640秒、+0.3EV)/ISO 400/WB:オート

虹は、太陽を背にして前方の空気中に漂う水滴のスクリーンに浮かび上がる。このことを覚えておくだけで、虹の発生をある程度予測できれば、前もって撮影の準備ができるようになる。

上の写真は虹が出る条件がそろったある日の夕刻、西日を背にして雨雲と対峙できるポイントで虹の発生を待って撮影したものだ。手前から奥までピントを合わせるため、まずは絞りはF11を選択。そのうえで飛行機をぶらさずに止められるシャッター速度になるようISO感度をISO 400までアップして、シャッター速度を1/640秒とした。

虹は通常PLフィルターを使用してその色を強調するが、大きな虹の場合は片効きしてしまい、一定の濃さで弧を描写できなくなるので今回は使用しなかった。構図を決めたら、画面に機体が飛び込んでくるのを待ちシャッターを切る。機体をとらえる位置によって大きく印象が変わるため、やや中央より進行方向に寄せて解放感を演出した。

使用レンズ
キヤノンEF16-35mm F2.8L II USM
海と虹をシャープに見せる「F11」

虹を主題とした風景写真という意図で撮影するため、海面からビーチ、虹に至るまでの表情をしっかりと描写したい。そこでまずF値をF11に決定。F値を決めたうえでほかの値を決めていくと、今回のような時間を争う撮影時にも素早く対応できる。

夕方の自然な虹色にするWB「オート」

やや暖色を帯びはじめた夕方の砂浜や海面を嫌味なく表現するためにWBはオートが便利だ。もう少し青味を伴った清涼感ある雰囲気にしたいならば太陽光にしても良い。虹を描写するための正解を探すよりも、風景の印象を伝えることを優先した結果だ。

シャッター速度を確保する「ISO 400」

F値はF11以上と決めたうえで、飛行機がブレないシャッター速度を得るためISO感度で調節。チャンスは限られているので低感度にこだわりすぎずISO 400を許容とした。もっと上げてシャッター速度を1/1,000秒以上にすると安心だが、虹の描写を優先したい。

Tips:虹と飛行機が撮れるスポット

朝方か夕方、空港近くのポイントで太陽を背にして雨雲を臨めるシチュエーションを確保できれば、虹と飛行機を絡めた撮影ができる可能性が高まる。この時は局所的な通り雨があった。着陸機は一定の高さでやってくるのでよりチャンスが増す。しかし、風向きによって着陸する方向が変わるのでその点にも注意が必要だ。

夕暮れどきの雲をはっきり見せるには
(佐々木啓太)

夕焼けにはまだ早いがダイナミックに雲の表情を見せながら斜光に照らされた雰囲気を出そうと考えた。アクセントになる光の印象を強めるために、カメラを地面すれすれのローポジションにして反射を入れた
OLYMPUS OM-D E-M1/M.ZUIKO DIGITAL ED 7-14mm F2.8 PRO/7mm(14mm相当)/絞り優先AE(F3.5、1/2,500秒、±0EV)/ISO 200/WB:日陰(A+1、G-1)

撮影場所であるスカイデッキに出ると、思っていた以上に雲が多くて夕焼けは期待できない雰囲気だった。そのうえ遠景は少しかすみがかかったような感じで、撮影しても絵にならない。そこで遠景は意識せずに超広角ズームレンズの広がりを使って、雲の様子を狙うことにした。雲間からの光が印象的だったので逆光のポジションでスカイデッキがかっこ良い場所を探した。

最終的には光の印象を強くするために光が反射するモールに狙いを決めてローポジションのポイントを探した。手前にボケが入ると奥行きを感じやすくなるので、F値はそれほど絞り込まず、ピントはモールに光が反射している場所に合わせた。

マイクロフォーサーズと超広角の深度があればある程度背景もシャープになるので、それほど絞らなくとも良いと考えてF3.5にしている。広がりのポイントになる奥の人影はサイズが小さくても存在感が出るように動きのあるタイミングを狙った。

使用レンズ
オリンパスM.ZUIKO DIGITAL ED 7-14mm F2.8 PRO
雲をダイナミックに見せる「14mm相当」

広い画角を使うと雲の広がりをダイナミックに表現できる。4:3の画角は安定感があるので、せっかくの広さが伝わりづらくなることがある。サイズが分かる人物を入れて、ローポジションから空を見上げるアングルにして、さらに広がりを強調することを意識した。

広がりを出すカメラ位置「ローポジション」

広さを出しやすいローポジションで広がりを表現した。また、カメラポジションを下げた方がモールの輝きが強くなるので、その効果も狙っている。手前にポイントを入れると奥行きや広がりの印象も強くなり、視線を誘導するポイントとしての存在感も強くなる。

夕方の印象を強調するWB「日陰(A+1、G-1)」

アンバー色を強くすると、太陽が傾いた夕方の印象が強くなる。そのために、ここではWBを日陰(A+1、G-1)にして、オレンジ色を強めている。その結果、雲のディテールや逆光の輝きも強調されて、ドラマチックに仕上がった。

Tips:太陽が雲に隠れるタイミング

この日は雲の切れ間から時より光が差して、遠景には少しもやがかかっていた。雲の印象を強調するためには少し斜めの光が雲に当たっている方が立体感を出しやすいので、午前や午後の太陽が傾いた時間帯がおすすめだ。太陽の光が強すぎると陰影も強くなるので、太陽が少し雲にかかっているタイミングで撮影する。

天空を突き刺す閃光の美しい撮り方
(青木豊)

西から迫る雷雲を車で先回りして撮影した。身の安全を考え、やや離れた位置から長めの焦点距離で狙った。撮影当日は落雷の頻度が高かったため、長時間露光で複数の稲妻をとらえている
パナソニックLUMIX DMC-GH4/LUMIX G X VARIO 12-35mm F2.8 ASPH. POWER O.I.S./35mm(70mm相当)/マニュアル露出(F8、24秒)/ISO 200/WB:太陽光

雷を撮影するには雷雲の位置を知る必要がある。スマートフォンやパソコンなどで気象レーダーを表示して、雷雲の現在置と、移動している方向を確認する。むやみに雷の見える方へと向かって行くのは自殺行為なので、必ず事前に確認してほしい。

夜の雷撮影の基本は長時間露光で撮影すること。雷光に浮かび上がる雲のディテールを強調するには、シャッター速度を30秒以内にすることが望ましい。雲は常に動いているため、あまり長時間になるとブレが生じてディテールを失ってしまうからだ。稲妻が入っても入らなくても、30秒を超えたらシャッターを切り直せば良い。

露光中に稲妻をとらえたら、約3~4秒後にシャッターを閉じる。すべての条件に当てはまる訳ではないが、このタイミングを覚えておくと雷撮影が楽になる。稲妻が画面に入るとマゼンタかぶりが生じることがあるが、これは雷が発する赤外線の影響なので、気になる場合はRAW現像で補正しよう。

使用レンズ
パナソニックLUMIX G X VARIO 12-35mm F2.8 ASPH. POWER O.I.S.
稲妻と雲を優先する「マニュアル」

詳細は各項目で解説するが、稲妻をシャープに写すためにF値はF8に設定。雲のディテール表現のため、シャッター速度は24秒の長時間露光で撮影する。決め打の設定で撮影中に露出値が変わらないようにするため、撮影モードはマニュアル露出が良い。

稲妻をシャープに描く「F8」

落雷の頻度によってF値は変わる。数分に1回程度の単発の落雷なら絞りは開き気味に、今回のように1分間に数回の落雷があるような時は中間絞りで、引っ切りなしに落雷するような場合は絞り込むことで稲妻の線を細くきれいに写せる。ここではF8にした。

雲のディテールを残す「24秒」

長時間露光の場合、雲の動きを完全に止めることはできないが、シャッター速度を30秒以内(ここでは24秒)にすると雲のディテールが残る。雲のディテールにこだわらなければ、もっとシャッター速度を遅くして、たくさんの稲妻を写し込むことも可能だ。

Tips:機材の転倒を防ぐ装備を

この日は夕方から雷雲が発達し、日が落ちた後に雷鳴が聞こえてきた。気象レーダーで雷雲の動きを確認しながら、雨を避けて撮影した。雷が鳴るような気象条件では急に雨風が強まることも多く、時に雹(ひょう)や突風を伴うこともある。最大瞬間風速が20mを超えると三脚も簡単に倒れてしまう。私はスタジオ用のウェイト(10kg)を装着している。

【フォトコンテストを開催】

この特集を受けて、5月20日から「美しき天気の写真フォトコンテストを開催」。印象的な天気模様を表現した写真を募集しています。応募は「GANREF」から。

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このほかにも、デジタルカメラマガジン2016年6月号には旬の情報が盛りだくさんです。

特集2は「絶対に失敗しない 可愛いイヌとネコの撮り方」です
特集3では、各社のショルダーカメラバッグ6モデルを紹介
ニコンD500の「瞬間を写す秘技」では、河野英喜さんが女性ポートレートのテクニックを披露
ソニーの新レンズ「FE 70-300mm F4.5-5.6 G OSS」のレビューも
キヤノンのLED内蔵レンズ「EF-M 28mm F3.5 Macro IS STM」の作例も掲載
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