デジタルカメラマガジン

10月号より新連載「写真を楽しむための著作権Q&A」スタート。皆さまの疑問を募集します

『デジタルカメラマガジン2021年10月号』では、写真に関する著作権を解説する企画「写真を楽しむための著作権Q&A」を掲載しています。

近年、SNSなどで写真の著作権が何かと話題になりがちで、時には写真を撮ることに対してネガティブになるような内容を目にすることがありますが、本来、著作権は、写真を含め、文化を守り、発展させるために存在するものです。

本企画では日本弁理士会著作権委員会の監修のもと、写真を自由に安心して楽しめるように知っておくべき著作権の考え方を解説することを目的としています。

監修:日本弁理士会著作権委員会(伊藤大地、上田精一、竹口美穂、堀越総明)
写真・文:大和田 良

はじめに

撮影時やSNSに投稿するとき、ふと著作権に関して心配になったことはないでしょうか。「これって写して良かったの?」「写真を発表するとき、著作権はどう考えれば良いの?」今の時代、写真に関わる著作権の話題はどこかで一度は耳にしたことがあるという人も多いでしょう。

しかしながら、どうも言葉だけが一人歩きをして、問題にならないものを問題だと指摘してみたり、明らかに問題となることを無意識に行っていたりと、その理解はまだ一般に広く伝わっているとは言えない状況にあるのではないかと思います。著作権法の目的は、著作権法第1条にもあるように「文化の発展に寄与すること」にあり、決していたずらに表現活動を制限するようなものではありません。むしろ活発で自由な創作を促すものであるということをまずは意識し、本連載を通して共に正しい理解と利用に努めていきましょう。

Q&A形式で著作権に関する疑問を解説

本企画では、撮影時や使用・公開時などのシチュエーションに分類して、写真に関する著作権に対する疑問を、Q&A形式で解説しています。写真家の大和田良氏と弁理士の伊藤大地氏の対話による掛け合いや、写真やイラストを交えて解説していくので、知識がなくても安心して読み進めることができます。

10月号では、例えば以下のようなQ&Aを掲載しています。

Q2:写真は著作物に該当しますか?

弁理士: タイミングやアングルの決定など十分に創作性があります。

フィルムや記録媒体などに固定するにあたって、撮影した人なりの創作性が表現されていれば、著作物となり得ます。創作性の程度は殊更に高度なものであることまでは求められていません。多くの場合、基本的には著作物として認められます。焦点・絞り・シャッター速度が自動のカメラで、素人が撮影したとしても、撮影場所やシャッターチャンス、アングルなどに選択の幅があるので、著作物となり得ます。著作物として認められないものの例としては、証明写真や、絵画を忠実に写した写真が挙げられます。

大和田: 自ら積極的にフレーミングやシャッターのタイミングを決定する通常の写真撮影は、基本的に著作物と認められる条件を満たしているということですね。

Q8:列車や飛行機、車などプロダクトデザインの撮影で気を付けることはありますか?

弁理士: 基本的に問題ないですが、ラッピング車などは注意が必要です。

自動車、列車、飛行機を撮影することについて、通常は、著作権法上の問題が生じることは考えにくいです。もっとも、いわゆる痛車やラッピング車両など、他人の著作物を表示する自動車、列車、飛行機の場合には、これを撮影すると、著作権法上は「複製」になります。私的使用目的の複製などの権利制限規定に該当しない限り、著作権侵害となります。

大和田: 自動車自体ではなく、ラッピングされたアニメのキャラなどの著作権が問題となるということですか?

弁理士: ラッピングの撮影は、言い換えると、自動車に表れた絵画の著作物を複製することになるので問題になりますね。

Q9:自然風景や街の風景に著作権はありますか?

弁理士: ありませんが、街中の絵画や写真には配慮が必要です。

風景そのものに著作権はありません。ただし、街中に掲出されている絵画や写真は著作物であることが想定されますので、それを写すと形式的には著作権侵害となり得ます。もっとも、「写り込み」として権利制限が認められたり、撮影した写真では当該著作物の内容及び形式を覚知させるもの(複製)ではなかったりすれば、著作権侵害にはならないものと考えられます。

大和田: 「写り込み」とはどういうものでしょうか。

弁理士: 例えば、スナップ写真の被写体の一部に絵画や写真が小さく写っている場合や、被写体の人物がキャラクターのイラストが描かれた洋服を着用して写っている場合などが該当します。

小さく写る看板などの著作物は写り込みとみなされ、著作権侵害という判断にはなりにくい

Q16:写真に「コピーライト」として名前を入れた方が良いですか?

弁理士: 著作権を得るためには必要ないですが、牽制にはなります。

著作権の発生に関しては、こうした表示は不要です。しかし、かかる表示をしておくことで、第三者に対する牽制にはなるので、無断利用を防ぐ効果が期待されます。なお、公衆への提示の際に、著作者(撮影者)が誰であるかを表示しておくと、著作者が自己であることの法律上の推定を受けることができます。著作者は、著作権者となるのが原則ですので、権利行使までを視野に入れると、撮影者が誰であるかを表示しておくメリットはあると考えられます。

大和田: 著作権の注意喚起にはなりそうですね。

コピーライト表示がなくても著作権は撮影者に発生するが、コピーライト表示は写真の無断利用の抑制につながる

連載初回の10月号は、6ページで展開

本特集では、他にも以下のような疑問に答えています。

・そもそも著作物って何ですか?
・撮影時に他人の著作権を気にする必要はありますか?
・寺社仏閣を写すときに気を付けることはありますか?
・他人の写真を参考にして似た写真を撮りましたが、自分の作品として発表できますか?
・路上で人を写す場合、どんなことに気を付ける必要がありますか?
・タイムラプスなどのスチルカメラを用いた動画や動画から切り出した写真なども写真と同じ著作物に分類されますか?
・写真作品や写真展のタイトルに好きな曲のタイトルを付けても良い?

また、『デジタルカメラマガジン2021年11月号』から、連載形式で「写真を楽しむための著作権Q&A」の掲載を予定しています。より具体的なシチュエーションや事例を交えながら、写真に関する著作権の考え方を学べる内容となる予定です。

連載開始に際して、今後取り上げてほしいテーマについても募集を開始します。写真の著作権に関する疑問があれば、ぜひ下記リンク先のフォームに記入してください。
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https://forms.gle/bfwVQ2fbhUf1P2D58