フォトコンテスト

ソニーワールドフォトグラフィーアワード2018、日本部門賞授賞式が開催

世界最大規模の写真コンテストで評価された作品とは…

授賞式での記念撮影。左からソニー澤村宣亮さん、日本部門賞1位の鈴木悠介さん、同3位の中澤隆さん、審査員のハービー・山口さん。

ソニーは7月1日、フォトコンテスト「ソニーワールドフォトグラフィーアワード2018」日本部門賞の受賞式を開催した。

ソニーワールドフォトグラフィーアワード(Sony World Photography Awards、以下「SWPA」)は、ソニーがスポンサーをつとめる世界最大規模のコンテスト。今年で11回目の開催となる。

今回はプロフェッショナル(10カテゴリー)、一般公募(10カテゴリー)、ユース、学生フォーカスの4部門に、200カ国以上から約32万点の応募があった。

SWPAの部門賞のひとつである日本部門賞は、応募作品のうち日本人の作品に対して授与される賞。審査員は写真家のハービー・山口さん。

日本部門賞の選考と講評を行なった写真家のハービー・山口さん。

今回は3名が受賞し、このうち2名が授賞式に出席。トロフィーの授与と副賞の贈呈、ハービー・山口さんによる講評が行なわれた。

授賞式に出席したソニー株式会社デジタルイメージング事業本部マーケティング部門長の澤村宣亮さんは、ソニーが11年続けているフォトアワードへのスポンサードにかける想いを話した。

澤村宣亮さん

「写真文化は撮るのが好きな人、そして写真を見るのが好きな人の両方がいて初めて成立します。カメラやレンズの性能を突き詰めていく中で、技術を使ってこれまで撮れなかったような表現や、シチュエーションで撮れるようにしていきたい、というのがハードを開発しているエンジニアの思いです」

「ソニーがコニカミノルタからデジタル一眼レフカメラ事業の譲渡を受けて以来、近い時期に始まったフォトアワードへのスポンサードも今年で11年になります。SWPAもおかげさまで応募作品数や募集部門のバラエティについて、ここ数年でやっと世界最大規模に成長させることができました。今後もカメラをお持ちの方であればメーカー問わず誰でも応募できることを周知していきたいと考えています」

ソニーによるフォトアワード受賞者への支援については、2016年から受賞者の作品製作にかかる活動資金を支援する「ソニー・グラント」制度を開始。2017年からは学生部門の参加者に対する奨学金の支給も実施している。

日本部門の最優秀賞を受賞したのは、鈴木悠介さんの「物語る」。

日本賞第1位:鈴木悠介『物語る』
© Yusuke Suzuki, courtesy of Sony World Photography Awards 2018

窓側から差し込む夕日を浴びながら、けだるげな様子で本のページをめくる女性が写されている。画面右側の自然光と、左側のライトが独特の雰囲気を醸し出しており、鈴木さんも「格子の影が印象的で、西日が強めなところ、暗くなるはずのテーブルの上をスタンドライトが照らしている光の加減、その全体のバランスが気に入っている」と話していた。

鈴木悠介さん

「物語をつくるポートレートの撮り方に作家性が出ていますね。西日の差し込む時間帯と、ライトのタングステン光という2つの光源がドラマを生んでいます。ぼくも写真家として、このモデルをどう料理しようかと考えるものですが、この写真も、光と、モデルさんのアンニュイな感じ、そして奥側のタングステン光を上手く料理した作品だと思います」(ハービー・山口さん)

第2位は、鈴木淳也さんの『Dondo-Yaki, Tokyo Japan 2017』。

第2位:鈴木淳也『Dondo-Yaki, Tokyo Japan 2017』
© Junya Suzuki, courtesy of Sony World Photography Awards 2018

毎年、小正月に東京・多摩川で行われる恒例行事の「どんど焼き」を撮影した作品。激しく燃え盛るどんど焼きの手前に、女性が大きく写り込んでいる。鈴木さんによれば「世界に知られていない日本の行事の一つが広く知られるきっかけになれば」との思いもあるという。

「一見して、地雷が爆発した瞬間をとらえた戦地の写真かと思いました。黒い灰が舞う中、不意に現れたであろう人物が写り込んでいる。これによって、作品に遠近感と緊張感が出ていますね。いわゆる『記録写真』はどうしても絵として弱くなってしまいますので、日本の祭事を世界に紹介する主旨にあっては、どこかでアート的な、不協和音を入れることで、見た人が『なんだろう』と思うような関心を集めなければならない。作者の方は、この構図であえて前景の人物を残すアバンギャルドなセンスをお持ちの方だと思います。その点を評価して選ばせていただきました」(ハービー・山口さん)

第3位『赤富士上の月』を撮影した中澤隆さんは、富士山専門のフォトグラファーとして2014年から活動。

受賞作品は富士山頂の直上に満月が昇った瞬間、いわゆる「パール富士」を、山梨県と静岡県を結ぶ「猪之頭林道」(林道湯之奥猪之頭線)からとらえた写真。撮影者の背後で太陽が沈むにつれて、山の影が徐々に山頂へ向かって昇っていき、また夕日の赤い光が山肌に当たっている。

第3位:中澤隆『赤富士上の月』
© Takashi Nakazawa, courtesy of Sony World Photography Awards 2018
中澤隆さん

「カメラマンの行動力が自然の摂理をとらえた作品。場について深く知り、機敏に動いて千載一遇の瞬間をおさえています。こういった作品は、ぱっとその場に行って撮れてしまったたぐいのものではなく、場所による写り方の知識、経験がないと撮れないものです。才能と努力だけでなく、撮ることをあきらめずに動いた努力や想い、そこに写真の神様が微笑んだ作品だと思います。」(ハービー・山口さん)