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なぜレキサーのXQDカードはこんなにも安いのか

「いきなり半額」の理由を聞いてみた

Lexar Professional 2933x XQD 2.0カード。3月11日に突然値下げされた。

これまで超マイナーだったメモリーカードのひとつが、ここにきて大注目を集めている。

そう、XQDカードだ。

ニコンの一眼レフカメラD5とD500が採用したことで、一躍話題になったのは周知の通り。これまでベンダーがソニーに限られていたXQDカードだが、D5とD500の発売にあわせてレキサーが参入。XQDカードを取り巻く環境が急に賑やかになってきた。

D500のメモリーカードスロット。上側はXQDカードスロットだ。

さらに3月11日、多くの販売店でレキサーのXQDカードが半額近くに値下げされる騒ぎも。これが大変な話題を呼び、その衝撃を伝えた当サイトの記事は、2万3,000以上のPVを集めた。

この挑戦的なレキサーの戦略について、マイクロジャパン株式会社コンシューマープロダクツグループの大木和彦ディレクターに聞いてみた。

日本のメモリーカード市場の特徴とは

古くからのデジカメファンにとって、レキサーはサンディスクの対抗としてお馴染みのブランドではないだろうか。

一時期こそ日本市場で影が薄かったが、近年はラインナップを拡大。CF、SD、microSD、そしてXQDとCFast 2.0と、全メディアを販売する唯一のブランドとして幅を利かせている。しかも、どのメモリーカードも世界最速、もしくは最速レベルを標榜しているのだ。

そんなレキサーがXQDカード参入にあたり、なぜ思い切った低価格戦略をとったのか。

大木さんは、日本独自のメモリーカード市場の特性について、「内外価格差が大きい」と語る。

CF購入者の約50%が個人輸入・並行輸入を利用していると推定され、SDやmicroSDについても、高速品や高容量品の並行輸入率が高い。円安が続いたことで内外価格差がついた結果とはいえ、日本でメモリーカードを普通に買えない現状は悲しい。

日本のメモリーカード市場を再び活性化させるにはどうしたらいいか。

大木さんは内外価格差をできるだけ解消し、安心して購入できる環境を作ることが大事だと語る。XQDカードの値下げはその考えの延長にあるもので、背景には内外価格差の解消を目的とした「Global Pricing」の導入がある。それが今回の値下げの背景だ。

良いメモリーカードとは

ところでXQDカードを巡る話題といえば、D5の「選べる」CFスロット or XQDスロットの問題も忘れてはならない。

現有資源をそのまま利用できるCFスロットに対し、多くのユーザーにとって未知数かつ初期投資が必要なXQDスロット−−どちらを選ぶかはD5の購入者次第だが、性能的に有利なのはXQDカードで間違いない。

購入時、D5はXQDカードのデュアルスロット、またはCFデュアルスロットが選べる。

XQDの場合、最大書き込み速度は400MB/秒(レキサー2933xの場合)。対してCFの最大書き込み速度は155MB/秒(レキサー1066xの場合)。この差は大きい。D5本来の性能を引き出すにはXQDカードが必須といえるだろう。

そして価格面でも、XQDカードはCFに追いつき凌駕している。

レキサーの128GB品を見てみよう。3月11日の値下げにより、
XQD2.0(2933x)は実勢2万4,940円に。一方CFは2万7,770円(1066x)。
いまやXQDはCFより安いのだ(しかも速い)。

以下は税込での実勢価格。

128GB

Lexar Professional 2933x XQD 2.0:24,940円
Lexar Professional 1066x CompactFlash:27,770円

64GB

Lexar Professional 2933x XQD 2.0:15,480円
Lexar Professional 1066x CompactFlash:15,530円

32GB

Lexar Professional 2933x XQD 2.0:9,100円
Lexar Professional 1066x CompactFlash:9,150円

どうだろう。これだけ価格差が少ないと(というよりXQDカードの方が安い)、CFを選ぶ理由は「手持ちのメディアを使いまわしたい」「新しい製品なので信頼性が心配」といったものに限られるだろう。そうでなければ性能と価格の両面で、XQDカードの有利は揺るぎない。

まとめ

ご存知の通りCFの歴史は長く、いよいよカメラの進化についてこれなくなってきている。かといって、新しいメモリーカードの導入は敷居が高いのも事実だ。

レキサーのXQDは思い切った低価格とすることで、新世代メモリーカードへの移行を一気に進めるものだ。D500発売に仕掛けたセンスと、内外価格差を見事低減した手腕に舌をまく。

今後メモリーカード界で予想されるのは、XQDとCFastのシェア争いだ。その際はまた性能面に加え、価格面での戦いが待っている。

3月23日、サンディスクはCFast 2.0メモリーカードを大幅に値下げした。こちらも半額近くに下げている。発売を控えたEOS-1D X Mark IIを購入予定のユーザーにとって、大いに気になる値下げだろう。

サンディスクは3月23日にCFast 2.0カードを値下げ。過去に引き起こされたCF vs スマートメディアのような対決がまた始まるのか?

メモリーカードの性能が上がり、しかも価格が下がり入手しやすくなるのは大歓迎だ。加えて信頼性の面でも実績を積むことで、新世代XQDカードは市場に受け入れられていくことだろう。「カメラの進化を新世代メモリーカードの普及で支えたい」と語る大木さん。今後も成り行きを見守りたい。

(本誌:折本幸治)