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日本初開催の「TIPA Award授賞式」レポート
各社の製品が受賞。次回はフォトキナ会場で
(2013/6/28 00:00)
40のカテゴリーで選ばれるTIPA Award
欧州のカメラ雑誌を中心に組織されているTIPA(Technical Image Press Association)では、毎年TIPA Awardの受賞機種を選考し、発表している。その2013年のTIPA Award授賞式が、6月21日に東京で開催された。フォトキナの開催年(隔年)にはフォトキナの会場で行なわれているこの授賞式だが、それ以外の年には各地で開催することになっている。一昨年(2011年)にはロンドンで開催されたが、ヨーロッパ以外の場所で授賞式が開催されるのは、今回が初めてのことだという。
TIPA Awardは、カメラ関連の製品やサービスなど、40のカテゴリーで選考が行なわれ、最も優れた機種を決定する。対象となるのは日本のカメラグランプリの選考期間と同じ4月1日から翌年3月31日までに発売、提供開始されたもの。カメラやアクセサリーだけに限らず、フォトサービスやフォトアプリのカテゴリーが設けられているという点が、ベストカメラ1機種を決定するカメラグランプリとは大きく違う点だ。今年は、4月中旬に香港で選考のための会合が開催され(この会合の開催地も毎年違う場所が選ばれる)、TIPAと提携関係にある日本のカメラ記者クラブの代表もこれに出席し、その選考に加わった。
カメラに関して言えば、最優秀デジタルSLRエントリーレベル(キヤノンEOS 100D、国内製品名EOS Kiss X7)、最優秀デジタルSLRエキスパート(キヤノンEOS 6D)、最優秀ビデオDSLR(キヤノンEOS-1D C)、最優秀CSCエキスパート(FUJIFILM X-E1)、最優秀エキスパートコンパクトカメラ(FUJIFILM X20)、最優秀プロフェッショナルカメラ(ライカM)、最優秀スーパーズームカメラ(ニコンCOOLPIX P520)、最優秀イージーコンパクトカメラ(ニコンCOOLPIX S01)、最優秀デジタルSLRアドバンスト(ニコンD7100)、最優秀CSCエントリーレベル(OLYMPUS PEN Lite E-PL5)、最優秀ラグドコンパクトカメラ(パナソニックLUMIX DMC-FT5)、最優秀CSCプロフェッショナル(パナソニックLUMIX DMC-GH3)、最優秀CSCアドバンスト(サムスンSmart Camera NX300)、最優秀プレミアムカメラ(ソニーサイバーショットDSC-RX1)と、14ものカテゴリーが設けられている。レンズは6カテゴリー、プリンターは2カテゴリーと実に多彩。以前はフィルムやスキャナといったカテゴリーもあったが、時代を反映してその都度カテゴリーの入れ替えが行なわれ、現在に至っている。
その他のカテゴリーや過去の受賞機種に関しては、TIPAのサイトで確認してみて欲しい。日本で発売されていないものや、日本とは違う名称の機種が受賞している点が実におもしろい。また、TIPAのサイトは7言語に対応し、日本語のページも用意されている。こうしたものを見ると、国際的な組織なのだと感心させられる。
授賞式は、会長のThomas Gerwers氏の挨拶から始まった。デザインを一新したロゴの紹介、そして贈呈されるのがトロフィーから盾に変わったことなどが発表された。グッドニュースとして軽量化が図られたことが発表されると、会場は笑いに包まれた。確かに、以前のトロフィーはバーベルを思わせるような重厚感があり、女性が手にするのはちょっと大変だった。過去に受賞したことのあるメーカーにしてみれば喜ぶべきことで、笑いが起こるのも頷ける。
それに続いて、書記のJohan Elzenga氏から選考の経緯とともに、TIPAがオンラインで行なったユーザーアンケートの結果が説明された。その内容は、「商品購入にあたってユーザーが重視するのは、カメラ雑誌やその中の広告である」というもので、加盟している雑誌の意義と中立な組織であるTIPAの活動の重要性を裏付けるというものだった。
各カテゴリーの受賞機種は、副会長のGiulio Forti氏が紹介。Thomas氏が受賞盾をメーカーの代表者に手渡し、記念撮影が行なわれていく。40もの賞があるため、受賞のコメントなどの時間は設けられなかった。また、複数のカテゴリーで受賞するメーカーも少なくない。両手に受賞盾を持って記念撮影をする姿が度々見られた。
フォトキナで行なわれる授賞式では、セレモニーの最後に受賞したメーカーの数人がトロフィーを手に一斉に壇上に集まり、喜び一杯の集合写真を撮影するというのが恒例となっている。しかし今回は、そういったお祭り気分の賑やか雰囲気はなく、集合写真の撮影は厳かな雰囲気の中で行われ、レセプションへと移っていった。
日本での授賞式開催には3年越しの想いが込められていた
実は2011年のTIPA Awardの授賞式を日本で開催したいとTIPAは考えていたのだが、その開催を見送ったという経緯がある。当時の日本は、3.11の震災直後ということで、イベントの自粛ムードが蔓延していた。そうした状況をカメラ記者クラブが伝え、やむなく開催地をロンドンに変更したというのがその真相だ。ちなみにTIPAは、震災の直後にサイトで日本の友人に向けた哀悼の意を表明するとともに、義援金として1万ユーロを赤十字に寄付している。
1991年に発足したTIPAは、2001年からグローバル化を進め、欧州以外のカメラ雑誌の加盟も進めてきた。現在はヨーロッパ9ヶ国のほかに、オーストラリア、カナダ、中国、南アフリカ 、アメリカ合衆国のカメラ雑誌が加盟。五大陸のすべてに加盟誌が存在する。2010年には日本のカメラ記者クラブとも提携関係を結び、以降はお互いが選考するTIPA Awardとカメラグランプリのそれぞれに選考委員として名を連ねるなど、緊密な関係を築いている。
TIPA Awardの受賞メーカーの多くが日本の企業でありながら、残念なことに日本では、TIPAの活動やTIPA Awardについてはあまりよく知られていない。日本での認知度や権威を高めたいTIPAにしてみれば、日本の雑誌メディアとの提携、そしてTIPA Award授賞式の開催というのは大きな目標であったに違いない。
カメラ記者クラブとの提携から3年。昨年はフォトキナの開催年だったため実現できなかったが、TIPAとしては、まさに今回の授賞式開催で、3年越しの想いを結実させたことになる。少なくともこれまでは、授賞式の様子が日本で報道されることはなかったわけだから。
次回のTIPA Awardの授賞式は、来年のフォトキナ会場で行なわれる。これから発表される機種も対象となるわけだが、いったいどんな機種が選ばれ、その壇上で盾を手に記念写真に収まるのは誰なのか。各メーカーにとっては、カメラグランプリの選考とともに、すでに次の闘いが始まっているのである。