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カールツァイス、ミラーレス用レンズ「Touit」の国内発売日・価格を決定

 カールツァイス株式会社は、ミラーレスカメラ用交換レンズ「Touit 2.8/12」および「Touit 1.8/32」を6月1日に発売する。それぞれにソニーEマウント用、富士フイルムXマウント用をラインナップし、価格はTouit 2.8/12が12万6,200円、Touit 1.8/32が9万4,600円。

Touit 2.8/12(Xマウント用)
Touit 1.8/32(Xマウント用)

 2012年9月のフォトキナ2012で発表し、海外で4月30日に正式発表したミラーレスカメラ用のAF対応交換レンズ。国内での正式発売日と価格が決定した。

 シリーズ名の「Touit」(トゥイート)は、ツァイス初という全焦点距離を包括したレンズファミリー名。製品名のファミリー化が定着している自動車業界を参考に、「優れた視力、人間には真似できないユニークな視点を持ち、動きが活発で多様性に富んだ生き物」という観点から鳥類を選んだという。Distagon、Planarといったレンズ設計の系統名もレンズ前面に刻まれている。

Eマウント用。左からTouit 2.8/12、Touit 1.8/32
Xマウント用。左からTouit 2.8/12、Touit 1.8/32
Xマウント用(左)とEマウント用(右)では絞りリングの有無とレンズ全長が異なる
マウント部

Touit 2.8/12

 APS-Cミラーレス用で最広角というレンズ。画角99度で歪みのない広角を特徴とし、風景・建築物・狭い室内での撮影に向ける。インナーフォーカスとフローティング機構も採用した。

Touit 2.8/12(Eマウント用)
Touit 2.8/12(Xマウント用)
Touit 2.8/12のレンズ設計。構成図のグリーン2枚が非球面。パープルが部分分散の3枚の特殊ガラス
MTF

 レンズ構成は8群11枚。最短撮影距離は18cm。全長は81〜86mm(Eマウント用、Xマウント用、以下同)、最大径82mm。重量は260〜270g。フィルター径は67mm。

Touit 1.8/32

 カールツァイス伝統のPlanar設計を採用した標準レンズ。堅牢・軽量で、ポートレート、旅行、ストリートショットなどに向ける。

Touit 1.8/32(Eマウント用)
Touit 1.8/32(Xマウント用)
Touit 1.8/32のレンズ設計
MTF。絞ったところで解像とコントラスト上がるPlanar設計らしさが特徴という

 レンズ構成は5群8枚。最短撮影距離は37cm。全長は72〜76mm(Eマウント用、Xマウント用、以下同)、最大径65mm。重量は200〜210g。フィルター径は52mm。

ミラーレス市場の成長に期待

 15日に都内で行なわれた発表会では、カールツァイス株式会社代表取締役社長のロルフ・バイヤスドルファー氏が挨拶した。

カールツァイス株式会社代表取締役社長のロルフ・バイヤスドルファー氏

 「イノベーション、信頼性、カスタマーフォーカスに基づくカールツァイスブランドは日本市場で極めて高い評価を得ている。私たちは常に注意深くユーザーの意見を検討し、本社にそれも伝え、コンセプトだけでなくトータルクオリティを重要に考えている。そのクオリティを反映させ、カメラに最高の感性をもたらす。これこそカールツァイスという企業のDNAだ」とし、今後ともユーザーに信頼され、満足してもらえるように頑張っていくと挨拶した。

 続いてカールツァイス株式会社コンシューマー&プロフェッショナルディビジョン ゼネラルマネージャーのクリスチャン・バナート氏が同社カメラレンズディビジョンの概要について説明した。バナート氏はドイツ本社でR&Dのシニアマネージャーを10年務め、日本に来て7カ月という。

カールツァイス株式会社コンシューマー&プロフェッショナルディビジョン ゼネラルマネージャーのクリスチャン・バナート氏

 カメラレンズディビジョンは4つの分野に分かれており、業務用映像レンズは映画用のレンズなどを扱う。独占パートナーはスマートフォンでノキア、コンパクトデジカメでソニー、Webカメラでロジクールと契約。工業/産業用レンズは比率は小さいものの、航空写真用のレンズなど限定された仕様のものを生産しているという。

 これまでハイエンドのデジタル一眼レフカメラ用レンズを主としていたが、今日ではカメラ市場が大きく変わり、スマートフォンやCSC(コンパクトシステムカメラ。ミラーレス)などの分野が成長し、今後最も成長が見込まれる分野とした。

カメラのタイプ別市場予測
カールツァイスのカメラレンズロードマップ。フォトキナで発表した一眼レフカメラ用ハイエンドラインを今年末に発表予定とした

 発表会では続いて、EマウントおよびXマウントカメラのメーカー担当者が登壇した。富士フイルムからは電子映像事業部の商品企画グループマネージャーである上野隆氏が登壇。同社はミラーレス参入から1年強で、35mmフルサイズセンサーに匹敵するという解像感・S/Nと、カメラらしいデザインを特徴とする。ハイエンドの「FUJIFILM X-Pro1」に続き、シリーズ主力機という「同X-E1」も発売している。

X-Pro1にTouit 1.8/32を装着
富士フイルム電子映像事業部の上野隆氏
Xマウント対応レンズのロードマップ

 同社のフジノンレンズは現在5本が発売済みで、5月末には6本目の望遠ズームが発売となる。今回発表のカールツァイスTouitレンズはそのロードマップ上の“かぶらないところ”に入るとし、相乗効果への期待を述べた。上野氏自身も「17本ぐらいのツァイスレンズを持っている」とし、自分たちのカメラとのコラボレーションに期待を寄せ、今後ともいい関係を築いていきたいとした。

 Eマウント機「Lunar」をフォトキナ2012で発表したハッセルブラッドジャパン社長のウィリアム・ペンライス氏は、「素晴らしいレンズが登場して嬉しい」とコメントし、カールツァイスとハッセルブラッドの“昔の繋がり”がまたできることに喜びを述べた。

Touit 2.8/12をLunarに装着
ハッセルブラッドジャパン社長のウィリアム・ペンライス氏

 マーケティング担当のエリザベス・ラブデイ氏は、ミラーレスカメラ「Lunar」の特徴を紹介。外装マテリアルを好みで組み合わせられる点をアピールした。また、Lunarのローンチ日程についてもアナウンス。東京は6月20日としていた。

Lunarの製造工程などを紹介するムービーを上映した
マーケティング担当のエリザベス・ラブデイ氏
Lunarを6月20日に国内発表予定とした

 ソニーマーケティング株式会社 デジタルイメージングMK部統括部長の伊藤秀樹氏は、レンズ交換式デジタルカメラの出荷トレンドをベースに「レンズ交換式の半数がミラーレスになるのでは」と予測を示した。同社Eマウントレンズは13本のラインナップで、今後も年間5本以上のペースで拡充するとした。カールツァイスの2機種が加わることで、補完の関係になると述べた。

NEX-7にTouit 2.8/12を装着
ソニーマーケティング株式会社 デジタルイメージングMK部統括部長の伊藤秀樹氏
レンズ交換式カメラの出荷トレンド
ソニーEマウントレンズのロードマップ

ターゲットは一眼レフやコンパクトからの移行組

 カールツァイス株式会社コンシューマ&プロフェッショナルディビジョン カメラレンズディパートメント シニアディパートメントマネージャーの長手健氏が今回発表の新製品概要を紹介した。

カールツァイス株式会社コンシューマ&プロフェッショナルディビジョン カメラレンズディパートメント シニアディパートメントマネージャーの長手健氏

 ミラーレスカメラ用の新しいレンズファミリー「Touit」(トゥイート)はラテン語でオウムの種類を示す言葉で、小型で動きが機敏なオウムの属名という。今後もカールツァイスのカメラやレンズのシリーズには、ラテン語の鳥のファミリーネームをつけていく方向で検討しているという。

 Touitシリーズは、ミラーレスカメラがレンズ交換式カメラのほぼ50%を占める中、一眼レフカメラからの「ダウングレーダー」、コンパクトデジタルカメラからの「アップグレーダー」をターゲットに提供していきたいという。

 シリーズ共通の特徴として、高度な迷光防止と反射防止(T*コーティングや周辺部の墨入れ)、9枚羽根の円形絞り、金属鏡筒やグリップ力の高いフォーカスリング、AFや露出の互換性を挙げた。同シリーズのレンズはEマウント機、Xマウント機と完全互換とし、高い操作性とデザインを両立したとしている。

 なお、富士フイルムのXマウント機は既に公開されている最新ファームウェアで2本の新レンズに対応済み。ソニー機も対応済みだが、将来のレンズなどはバージョンごとに追加されていく見通しとのことだった。

 発表会では続いて、赤城耕一氏と萩原史郎氏の2名を交えたトークショーを実施した。

 萩原氏はTouit 2.8/12について「カリッとくる解像感が気持ちいい。光学設計が贅沢。四隅の色ズレもなく、思い通りのフレーミングができるところも使いやすい。風景で広角を使うシーンは多いが、誰でも余計な心配なくストレートに使えてよい。」と印象を述べた。

 また、逆光について「太陽を入れるなど難しいシーンで撮ったが、T*コーティングの影響もあってか、逆光に強い。フレア・ゴーストも最小限。コントラストも高く、風景写真向きのレンズと感じた」と話す。

 赤城氏はTouit 1.8/32について「絞りを開けていてもピントの合ったところはシャープ。階調の出方もいい。AF速度などサードパーティのレンズには不安を感じるシーンもあるが、今回はそれがなく非常に優秀と感じた」と述べた。

 「大口径レンズは、絞りの効果により選択肢が広まる。開放で撮ってもうまく収差を残していて、シャープすぎない。柔らかさも楽しめ、1本で2度おいしい。ボケ味がすごくキレイ、エッジがやさしくボケる」とコメントした。

 Touitシリーズの鏡筒デザインについては、「度肝を抜かれるような、ショッキングなほど新しいものに挑戦したデザインと感じた。ボディに付けてみると思った以上にしっくりくる」(萩原氏)、「フードの形が好き。伝統的なデザインではあるが、フードのアールの付け方など、なかなかセクシーなレンズだと思った。気合いを感じた」(赤城氏)と話した。デザインは本社とシュトゥットガルトデザインで2年を要したという。

 同シリーズでは今年中に50mmのマクロプラナーが発売予定。今後の希望については両名とも標準ズームレンズを第一に挙げ、「望遠大口径が出れば鬼に金棒」(萩原氏)、「35mm相当でF1.8かF1.4なら2本ぐらいまとめて買うかも」(赤城氏)とそれぞれ期待を述べた。

会場にあった作例はカメラ内補正をオフにして撮影したものという

(本誌:鈴木誠)