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【CP+】「キヤノンギャラリーS 10周年記念展」記念セレモニーが開催

著名写真家7名が登壇。見どころを語る

 CP+2013初日の1月31日、キヤノンブース内特設ステージにてキヤノンギャラリーS 10周年記念展の開催を記念してセレモニーが行なわれ、記念写真展のうち第2部(作家展)に出品する写真家7名が登壇した。

出品写真家7名とキヤノンマーケティングジャパン株式会社松阪喜幸氏(左)

 まず、キヤノンマーケティングジャパン株式会社コミュニケーション本部本部長の松阪喜幸氏により、キヤノンギャラリーSの歴史と写真展の概要が説明された。同ギャラリーはキヤノンマーケティングジャパン本社のある品川キヤノンSタワー内にある同社ギャラリーの根幹をなす最大規模のもので、プロ写真家の作品を中心に展示している。2003年5月にキヤノンサロンSとしてオープンして以来、これまでに81点の作品展を開催し、2012年12月までにのべ26万人の入場者があったという。そこで、オープン10周年を記念する写真展がさる1月31日から、まる1年かけて行われることとなった。

キヤノンマーケティングジャパン株式会社コミュニケーション本部長の松阪喜幸氏により、写真展と同社の文化活動について説明が行なわれた

 写真展は3部構成で行なわれる。第1部は「キヤノンフォトコレクション特別展」として、会期を2つにわけて収蔵作品を展示する。

第1部「キヤノンフォトコレクション特別展」
写真展名テーマ会期出展作家および作品
PART1「時代を映す」1/31(木)〜2/21(木)石元泰博「CHICAGO、CHICAGO」より、木村伊兵衛「秋田」「東京」ほかより、林忠彦「カストリ時代」より
PART2「造形を映す」2/23(土)-3/16(土)石元泰博「桂離宮」より、岩宮武二「結界の美」より、植田正治「砂丘モード」ほかより

 そして、3月21日からは第2部として作家編「時代に応えた写真家たち〜through the eyes of time〜」が行なわれる。日本の写真の歴史に大きな足跡を残し、かついまなお第一線で活躍する写真家たちの作品だ。こちらはキヤノンギャラリー銀座と連動し、約9カ月間を通して両ギャラリーにそれぞれで展示が行なわれる。

 出展は立木義浩、田沼武能、浅井愼平、中村征夫、野町和嘉、水谷章人、竹内敏信、齋藤康一の各氏。また、第3部は2014年1月から映像表現の明日に向ける企画展として計画しているという。

第2部「時代に応えた写真家たち〜through the eyes of time〜」
出展作家タイトル会場初日最終日トークショー
立木義浩Piece of cake品川3/21(木)4/22(月)4/6(土)
Wink and blink銀座4/4(木)4/10(水)
田沼武能シルクロード 心の旅品川4/24(水)5/27(月)4/27(土)
戦後を生きた子どもたち銀座4/25(木)5/8(水)
浅井愼平SHIMPEI'S GEOGRAPHIC - HOBO 1964-2013「星の片隅」品川5/30(木)7/1(月)6/1(土)
SHIMPEI'S GEOGRAPHIC 「東京暮色」銀座5/30(木)6/5(水)
中村征夫MAGIC OF BLUE 〜深遠なる海への旅路〜品川7/4(木)8/3(土)7/6(土)
ひさかた銀座7/4(木)7/10(水)
野町和嘉バハル再訪品川8/5(月)9/10(火)8/24(土)
ヒマラヤ仏教圏銀座8/22(木)8/28(水)
水谷章人スポーツ報道写真展 1967-2012「記憶の一枚」品川9/12(木)10/12(土)9/14(土)
スポーツ報道写真展「光華」銀座9/12(木)9/18(水)
竹内敏信悠久の列島 --日本人の原風景品川10/17(木)11/18(月)10/19(土)
欧州逍遥 - 30年の眼差し銀座10/17(木)10/23(水)
齋藤康一THE MAN 〜 時代の肖像 〜品川11/21(木)12/24(火)11/30(土)
先輩・後輩・仲間たち「写真家たちの肖像」銀座11/21(木)11/27(水)

※品川=キヤノンギャラリーS(品川)
※銀座=キヤノンギャラリー銀座
※トークショーはいずれもキヤノンホールS(品川)で13時30分から行なわれる。

 このうち、第2部出展者のうち7名がCP+会場にて、自作への思いや見どころを語った。

 まずトップバッターは立木義浩氏。司会者に見どころを問われ「自分で見どころを語るほどほどずうずうしくはないけど」と茶目っ気たっぷりに語り始めた。

立木氏「展示作品はプロ写真家とアマチュア写真家の垣根がはっきりしていて、自分は『プロ写真家』だと粋がっていた頃の作品を中心に展示している。自分でもいいと思い、人さまからもほめられていささかいい気になっていた時代の写真。そして、時代ごとにピックアップしてある。観客のみなさんの体調がよければ感動するはずだ。そして、写真家はほめられて育つ。ぜひ写真家を育てるつもりで見に来てほしい」

「『プロ写真家』としていい気になっていたころの作品。でも、きっと感動してもらえるはず。写真家を育てるつもりで見に来てほしい」と立木氏

田沼氏「写真を始めた頃からシルクロードにはずっと憧れていたが、冷戦時代は訪問できなかった。井上靖さんの『敦煌』の取材にも同行できなかったし、ずっと果たせずにいた。ようやく、1998年頃から各地に行けるようになり撮り始めた。だが、広大な地域を含むから点と線でしか撮影できないだろう。日本にもいろいろな文化を伝えた街道であり、人間の歴史のロマンを感じる。会場でぜひそのことを感じてほしい。また、『戦後を生きた子どもたち』はいまや撮れない時代が映る写真で自分の写真の原点だ。こちらも見てほしい」

「ずっと憧れていたシルクロード。人間の歴史を感じられると思う。また、『戦後を生きる子どもたち』は駆け出しの頃に撮った、いまでは撮れない貴重な写真」と田沼氏

浅井氏「たまたま選んだ1970年代初期の写真がいま表示されて懐かしい」と前置きしながら「写真には否応無しに『時代が映ってしまう』。この写真はちょうど広告のロケで外国に行き始めた頃。若かったし、何を見ても面白くこれからの時代を感じていたのだと思う。人のありよう、空気感、いまとちがう1970年代の南の島の様子が写っている。今回展示するのは、特に珍しくない風景かもしれない。でもそれは若かったぼくの、心の中の記録だ。そして、観客のみなさんが時代を見るきっかけになればいい」

「写真家は本人が気づかないうちに時代の最先端にいることがある。いまでは絶対に撮れない1970年代がここにある」と浅井氏

中村氏「今回は新作でいきたいと思った。品川は南半球(パプアニューギニア)と北半球(知床)の海。南半球と北半球の違いを表現したい。パプアニューギニアは1月に撮りおろしてきた。知床は流氷を主に撮りたいと思い、いままさに現地のダイバーと連絡を取り合いながら撮影している最中。いっぽう、銀座の写真展のほうは、いままで自分もあまり見たことのなかった夜の海の様子を撮った。ちょっと刺激を与えるだけで、海の生き物は実はかなり発光することを知り、驚いている。カメラの高感度性能の向上のおかげで撮影できた」

「写真展にむけて新たに撮りおろしている。品川展では南半球と北半球の違いを表現したい。また、夜の海の生き物の様子には驚いた」と語る中村氏

野町氏「32年前、1980年から1981年にナイル源流域を取材した。バハルとはアラビア語で『川』という意味。牛のおしっこで頭を洗うとか、雌牛の性器に刺激を与えてミルクを出させるとか、男たちはほとんど素っ裸だとか、人類の原始の光景を見ているようだった。ずっと気になっていたバハルの人たちのことを知りたいと思ってたので、写真展の話をいただいて訪問した。去年の12月27日の満月の日の写真が、いまスライドで展示されている光景。蚊遣りとして牛の糞を燃やして煙を起こしている。煙の中なら安全というわけだ。そうした変わらない部分にはとても感銘を受けた」

「32年前に取材して気になっていたバハルの人たちの様子を知ることができた。いまでも変わらない暮らしぶりも見ることができて、大きく感銘を受けた」と野町氏

水谷氏「写真を始めた当時、フリー写真家には『スポーツ写真』という分野はなかった。報道とか記録とかそういう名目で媒体に売り込んでいた。スポーツを撮るのにそれでは面白くないと思い、自分のイメージにあった一瞬をとらえたいと思って自分ひとりで始めたという思いがある。そして、当時は長い望遠レンズも使えず、またカラーフィルムもよくなかったためにモノクロフィルムで撮っていた。こうして撮っていた46年間の記録が品川での展示だ。いっぽう、銀座では一変してデジタルカメラで撮影したここ2〜3年の作品で、それも私のたいへん大好きな女性たち(ここで「知ってるよ!」と立木氏から茶々が入る)の美しい、滅多に見られないような一瞬をとらえたもの。たぶん、観客のみなさんが見たことのない一瞬があるはず」

「品川では46年間撮りためたモノクロを、銀座ではここ数年のデジタル一眼レフで撮影した作品を展示する。みなさんが見たことのない一瞬の姿があるはず」と(水谷氏)

齋藤氏「ずっと雑誌の仕事をしてきた。大半は人物を何ページかで撮るという仕事。そんな経緯もあって品川は組写真で1人を3から5点程度完全にに横並びにして、ちょっと見にくい感じかもしれない。展示する数が多いので見ている人がいらいらするものになるだろうと思う。いっぽう、銀座の『先輩・後輩・仲間たち』のほうは、15年ほど前にカメラ雑誌「日本フォトコンテスト」(現「フォトコン」)に連載していたもののと同名で写真家の肖像写真。のちに写真集では77名を掲載したが、今回はそのときに撮り残した人たち36人を追加した。前半がモノクロ、後がカラーという構成で。やはり点数が多いので、銀座のギャラリーでどうやって展示するか。ここにいる写真家たちの髪が黒々とした様子も見ることができる(といたずらっぽく)」

「組写真で人物を見せるという仕事をずっとしてきた。品川も銀座も見る人に刺激的なものになるかもしれない。ここにいる写真家たちの少し若い様子も見に来てほしい」(齋藤氏)

※浅井愼平氏の「浅」の字は、実際には異なる表記になります。

(秋山薫)