写真展

野町和嘉写真展「バハル再訪」

(キヤノンギャラリーS)

ヨーロッパから持ち込んだ四輪駆動車を駆ってナイル川踏査の旅を開始したのは、1980年10月、体力だけは自信にあふれた34歳のときだった。全アフリカを凝縮したナイル川流域の多様な自然と人々の暮らしは、それまでサハラ砂漠をたびたび訪れ、アフリカに取り憑かれた私をすっかり魅了した。なかでもスーダン南部、サッドと呼ばれる湿原・サバンナ一帯で営まれていた、数千年来かわらない、文明以前とも言える、人と牛の共存社会は衝撃的だった。だが不幸なことに、歴史的に、スーダン北部に暮らすイスラム教徒による、奴隷の草狩り場でしかなかったこの地域は、1983年から、終わりなき内戦と飢餓の凄惨な原野と化していった。2011年、南スーダンが分離独立を果たして旅が可能になったのを契機に、あの牧畜社会はどうなったのか、ぜひとも見届けたいと熱望するようになった。そして実に32年という歳月を経て、私は、牛と人が共存するあの果てしない原野に立つことが出来たのだった。当然のことながら時代の波はアフリカ最奥地にも到達してはいたが、ディンカ族、ヌエル族と呼ばれる牧畜民と牛たちが、牛糞の煙るなかで共に生き延びる暮らしは脈々と受け継がれていた。「バハル」とは、アラビア語で川や海を意味し、この地ではナイル川を指してそう呼んでいる。

(写真展情報より)

 トークイベントを8月24日の13時30分から開催する。定員300名で参加予約を受け付けている(先着順)。

  • キヤノンギャラリーS
  • 住所:東京都港区港南2-16-6 キヤノンSタワー 1F
  • 会期:2013年8月5日(月)~2013年9月10日(火)
  • 時間:10時~17時30分
  • 休館:日、祝日、8月10日~8月18日

(本誌:武石修)