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小林紀晴写真展「kemonomichi」

(銀座ニコンサロン)

千数百年前から続いている御柱祭は七年に一度だけ行われる。昭和十九年、戦争のさなかにも、それは行われた。
春の神事、御頭祭では古くから、七十五頭の鹿の首が生け贄として捧げられる。作者は初めて目にしたとき、御柱祭のことを思い出さずにはいられなかった。

木落とし坂では、柱の上に人を乗せたまま、急坂を転げ落ちる。作者の父も祖父も乗った。作者は幼い頃から、その姿を七年ごとに目にした。柱に乗った誰もが、何かが憑いたような、形相をしていた。心底、恐ろしかった。

巨大な獣と化した柱が一旦滑り出したら、もう誰にも止められない。男たちの身体を見つめることしかできない。
ときに柱は荒ぶれ、人をふり落とし、血が流れることもある。生け贄のごとく、神が望むことなのだろうか。あとには御柱の軌跡がくっきりと残る。それは猪だけがゆく道、ウジによく似ていた。

出雲から諏訪に神がやって来る以前、ミシャグチという土着の神が存在していた。さかのぼれば縄文文化が繁栄していた。

出雲からの神、ミチャグチ、縄文。この三つが諏訪湖と、屏風のように立ちはだかる八ヶ岳のあいだで、いまも蠢いている。けっして過去のものではない。ときに、それらの力をひしひしと感じる。

何かをきっかけに、日常を乗り越え、忽然と姿を現し、ひとつになる。その瞬間を、作者は待つ。やがて、目の前に、容易には見えなかった一筋の道があらわれる。作者はその奥へ、深く分け入ってみた。カラー約30・モノクロ約20点。

(写真展情報より)

小林紀晴写真展「kemonomichi」

  • ・会場:銀座ニコンサロン
  • ・住所:東京都中央区銀座7-10-1 STRATA GINZA(ストラータギンザ)1階・2階「ニコンプラザ銀座内」
  • ・会期:2013年2月13日(水)〜2013年2月26日(火)
  • ・時間:10時30分〜18時30分(最終日は15時まで)
  • ・休館:会期中無休

(本誌:折本幸治)