写真展

小林紀晴写真展「伝来/消滅」

(ニコンサロン)

本展では、古代からの宗教の伝来を切り口とした、風景や建築を主とした作品を展示する。撮影地はインドやタイ、インドネシア、香港、東ティモールなどである。

インドで生まれた仏教は5世紀頃から衰退し、その後イスラムの攻撃を受けて壊滅。イスラム王朝は中世に繁栄したが、消滅した。タイは13世紀から上座部仏教の勢力が強まり、その後ミャンマーとの戦いで寺院が多く破壊された。バリ島では土着の信仰とヒンドゥー教が結びつき、爛熟。東ティモールは国民のほぼすべてがキリスト教徒で、インドネシアからの独立の要因のひとつとなった。

伝来の痕跡や破壊、消滅して人の記憶から消え去っていったもの、あるいは共存していくさまに、人間の欲望や願い、意思といったものを作者は感じた。作者はできるだけそれらの正面に立ち、遠い過去の声に耳を傾けた。たとえ破壊されたものであっても、どういうわけか安らぎを覚えもした。

現在もなお、宗教が対立や紛争、テロなど数々の問題を引き起こす因になっていることは否定できない。だからこそ、残された遠いかたちを通し、連綿と続く人間の姿に目を向けたいと作者は思う。

カラー約60点。

銀座ニコンサロン 2016年5月 - 写真展 - ニコンサロン

会場・スケジュールなど

  • ・会場:銀座ニコンサロン
  • ・住所:東京都中央区銀座7-10-1STRATA GINZA(ストラータ ギンザ)1・2階
  • ・会期:2016年5月25日(水)~6月7日(火)
  • ・時間:10時30分~18時30分(最終日は15時まで)
  • ・休館:会期中無休
  • ・入場:無料

  • ・会場:大阪ニコンサロン
  • ・住所:大阪市北区梅田2-2-2ヒルトンプラザウエスト・オフィスタワー13階
  • ・会期:2016年7月7日(木)~7月13日(水)
  • ・時間:10時30分~18時30分(最終日は15時まで)
  • ・休館:会期中無休
  • ・入場:無料

作者プロフィール

1968年長野県生まれ。東京工芸大学短期大学部写真科卒業。新聞社に勤務後、アジアを旅し作品を制作する。2000年から02年に渡米。東京工芸大学芸術学部写真学科教授。ニッコールクラブ顧問。写真集・著書に、『ASIAN JAPANESE』(新潮社)、『homeland』(NTT出版)、『days new york』(平凡社)、『写真学生』(集英社)、『はなはねに』(情報センター出版局)、『昨日みたバスに乗って』(講談社)、『写真と生活』(リブロアルテ)、『メモワール』(集英社)、『kemonomichi』(冬青社)などがある。受賞歴に、『DAYS ASIA』で日本写真協会賞新人賞、写真展「遠くから来た舟」で第22回林忠彦賞がある。

(本誌:河野知佳)