キヤノン「EOS M」の発表会レポート

~「レンズ交換式のエントリーという位置づけ」

 キヤノンは23日、ノンレフレックス(ミラーレス)カメラ「EOS M」の製品発表会を都内で開催した。ここでは発表会の模様をお伝えする。

 EOS Mの詳細はキヤノン、同社初のミラーレスカメラ「EOS M」。APS-Cセンサー採用を参照されたい。また、発表会に登場したコミュニケーションパートナーについては「キヤノン『EOS M』の発表会に妻夫木聡さんと新垣結衣さんが登場」をご覧頂きたい。

EF-M 18-55mm F3.5-5.6 IS STMを装着したEOS MEF-M 22mm F2 STMを装着したEOS M

「レンズは写真の命」

 冒頭、キヤノンマーケティングジャパン代表取締役社長の川崎正己氏が挨拶した。

キヤノンマーケティングジャパン代表取締役社長の川崎正己氏レンズ交換式デジタルカメラの市場は2012年に185万台に
レンズ交換式カメラのうち、ノンレフレックス(ミラーレス)カメラの国内シェアは4割強になるという一方、デジタル一眼レフカメラも毎年100万台前後と好調

 現在の市場に付いては、「写真がかつて無いほど身近なものになり、日常的な楽しみとして浸透してきた。よりよい写真を撮りたいと思っているステップアップユーザーも多い。それを受けて、レンズ交換式カメラの市場は大きくなっており、2012年も伸びるだろう」とした。

 国内ではレンズ交換式デジタルカメラのうちノンレフレックスタイプが4割を占めているが、一眼レフカメラも年間100万台規模で推移しており、本格的な写真を撮りたいというユーザーも多いとする。新たに写真の世界に入ってきた人やステップアップユーザーによって一眼レフの市場が伸びているという。

2012年上半期はレンズ交換式デジタルカメラ(ノンレフレックス機含む)でトップシェアだったとする同社は交換レンズのシェアもトップだという
3月に25周年を迎えたEOSシリーズを振り返る映像も上映されたEOS Mの投入でピラミッドをより大きくし、上級機へのステップアップを促す

 同社ではノンレフレックスカメラを一眼レフカメラの代替ではなく、市場を広げるラインナップだと説明している。EOS Mはレンズ交換式のエントリー機という位置づけで、これまで「EOS Kiss」シリーズでカバーできなかったユーザーに写真の楽しさを伝えることで、レンズ交換式カメラ全体のボリュームを広げたいとする。

 同社ではEOS Mから一眼レフカメラへのステップアップを重視しており、EFレンズが使えるマウントアダプターをその中心的なものと見ている。「他社には無いEFレンズ群がある。レンズはカメラの命であり写真表現の命。良い写真はカメラだけではなく良いレンズから生まれる」(川崎氏)。川崎氏は、60種類以上を数えるEFレンズが使用できる点を挙げ、「これはキヤノンならではのこと。ミラーレスカメラを投入する意義はここにある」とアピールした。

EOSシリーズが幅広く使われていることを強調した
EFレンズを核に、EOSのビジネスを展開して行くEOSシリーズが幅広く使われていることを強調した

「プロのサブカメラにも使ってもらえるカメラ」

 続いて、キヤノン常務取締役 イメージコミュニケーション事業本部長の真栄田雅也氏が事業戦略と製品説明を行なった。

キヤノン常務取締役 イメージコミュニケーション事業本部長の真栄田雅也氏

 「EOSを出してから25年。快速・快適・高画質をキーワードに性能を追求してきた。EOS Mは暗いところも自然なグラデーションになり、幅広いシーンを撮影できる」と紹介。

 真栄田氏は小型軽量化の要望はプロやハイアマチュアも含めて絶えずあったという。しかし、高画質化と小型・軽量化は相反するもので、ジャストサイズを実現するのはカメラメーカーとして永遠の課題であるとした。

EOSの基本コンセプトEOSシリーズによって撮影領域が拡大しているとする
CMOSセンサー、画像処理エンジン、レンズを自社開発している強みを訴求したEOS Mの大きな特徴

 今回キヤノンは、EOSとしての基準をクリアする品質を持ちながらも小型軽量化を実現できたことで市場投入に踏み切った。「“満を持して”ではなく、ようやく開発できた。ダウンサイジングと高画質の解にやっと目処が付いたというのが正直なところ」(真栄田氏)という。いつから開発を始めていたのかについては、「お答えできない」(真栄田氏)とのこと。

 また真栄田氏は、「国内のミラーレスシェアは4割強まで来ており、早い内にミラーレス機を投入したいという意向は以前からあった。どうせ出すなら良いものを、と進めていたら後発になってしまった。今後は一眼レフとミラーレスを両方伸ばしていきたい。ミラーレスのユーザーはいずれ一眼レフの世界に来て欲しいと思っている」とも話した。

 「プロがサブカメラとしてバックに入れていく、そうした使い方も十分可能な性能だと考えている。もちろん女性層に受け入れられるといったこともあると思うが、今から“このカメラは女性向け”だとか“このマーケット向け”などとあまり決め打ちしない方が良いのではないかと思っている。EOS Mは、まだまだいろいろな可能性を秘めているカメラだと考えている」(真栄田氏)。

EF-M 22mm F2 STMを装着
 (電池ふた部分に、製品版にはないテープが貼ってあります)
EF-M 18-55mm F3.5-5.6 IS STMを装着
EF-M 22mm F2 STMを装着
EF-M 18-55mm F3.5-5.6 IS STMを装着
EF-M 18-55mm F3.5-5.6 IS STMを望遠端にしたところストラップ取り付け部はキヤノンで初めての方式。簡単に着脱ができる
EOS Kiss X6i(奥)との比較

 発売済みのEOS Kiss X6iと同じく、撮像面位相差AFを採用している。「CMOSセンサーを自社開発・生産しているため、画質を犠牲にせず小型化できた」(真栄田氏)としている。

センサーはAPS-Cサイズ撮像面位相差センサーを採用しており、速度と精度を両立したとする
小型化の技術
撮像素子
分解モデル
マウントが固定されているシャーシはマグネシウム製シャーシの裏側

 同時発表の専用レンズ(EF-Mレンズ)は「EF-M 18-55mm F3.5-5.6 IS STM」と「EF-M 22mm F2 STM」の2本。「小型、スタイリッシュで、クラスナンバーワンの画質を実現した。EOS Mのメリットをフルに発揮するレンズ」(真栄田氏)。

 これらのレンズはAF駆動にSTM(ステッピングモーター)を採用したことで、動画撮影時の静粛性あるAFを可能にしたという。静粛化にはSTMのみならず、フォーカシングレンズの軽量化も貢献したとしている。

EF-M 18-55mm F3.5-5.6 IS STMの構成図EF-M 18-55mm F3.5-5.6 IS STMのみ特に静かというリードスクリュータイプのSTMを採用
EF-M 22mm F2 STMの構成図。こちらのSTMは小型化のためギア式を採用EF-Mのマウント
マニュアル露出、絞り優先AE、シャッター優先AE、プログラムAEのモードでは、レンズを装着しなくてもシャッターを切ることができる

 なお、EF-Mレンズのロードマップは示されなかった。今後の予定についても「先のことなのでお答えできない」(真栄田氏)とした。

 海外での展開については、「アジアはミラーレスの引き合いがそれなりに強い。一方欧米は地域によって差はあるが、アジアほどニーズは強くない。まずは国内からスタートし、順次海外で展開していく。ワールドワイドに対しては、それぞれのマーケットのニーズに即応していく。ミラーレス機を必要とするならば最速で投入するということ。もちろん各国できちんとしたマーケティング活動は行なっていくが、その反応はまだ読めるという状況では無い」(真栄田氏)と述べた。

 真栄田氏は、「EFレンズは2011年にシネマEOS用レンズを発売し、今回EF-Mを加えた。これからも豊富なEFレンズを核にEOSの世界は広がっていく。期待して欲しい」と締めくくった。

マウントアダプター「EF-EOS M」ですべてのEFレンズを使用できるEF-EOS Mを装着したところ
会場にはさまざまなEF(EF-S)レンズを装着したEOS Mが並んだ
EF 17-40mm F4 LUSMを装着したところEF 85mm F1.2 L II USMを装着したところ
TS-E 24mm F3.5 L IIを装着したところEF 300mm F2.8 IS II USMを装着したところ
EF 800mm F5.6 L IS USMを装着したところ
EF 500mm F4 L IS II USMのカットモデルに装着したところマウントアダプター部分
4色の専用ボディジャケット「EH23-CJ」(4,620円)を用意する。ストラップは別売

「ミラーレス機に求められるのは“ボケ味”」

 最後に、キヤノンマーケティングジャパン取締役専務執行役員イメージングシステムカンパニープレジデントの佐々木統氏が国内戦略について話した。

キヤノンマーケティングジャパン取締役専務執行役員イメージングシステムカンパニープレジデントの佐々木統氏

 EOS Mのターゲットは、コンパクトデジタルカメラからステップアップを図る20~30代のエントリー層だとする。加えて、従来のEOSユーザーに対しても「一眼レフカメラのサブ機としても十分満足いくもの」(佐々木氏)という。

 同社の調査によれば、ノンレフレックスカメラに特に求められるのは「ボケ味」。佐々木氏は「ボケ味はセンサーの大きさで決まる。エントリーの方にはEOS Mの画質を是非見て欲しい。大きなセンサーによる美しいボケ味に気づいてもらえるだろう」とアピールする。

 EOS Mを購入したユーザーが良い写真を撮れるようになるためのサポートも強化する。気軽に撮影の知識や技術を学べる「Hello, ミラーレスEOSスクール」を9月に開講する。「従来のEOS学園などはエントリー層には敷居が高いのではないか。新しい講座で表現の可能性に気づいて欲しい」(佐々木氏)とした。

ターゲットユーザー従来のEOSのユーザーにサブカメラとしての提案も
ボケ味に対するニーズは一眼レフカメラ以上だという約6割が交換レンズの購入を考えているとのこと
「Hello, ミラーレスEOSスクール」で写真の楽しさをサポートするカメラ知識・技術のレベルを上げることで、機材のステップアップを促す

 EOS Mのキャッチコピーは「Hello, ミラーレスEOS」。同社によれば、“ミラーレス”という言葉が一般的になっているので、より親しみを持ったものにしたという。

EOS Mのキャッチコピー会場で配られたプレスキットにも“Hello ミラーレスEOS”と書かれていた。右はカタログ
EOS Mのコミュニケーションパートナーは妻夫木聡さんと新垣結衣さん左から真栄田雅也氏、新垣結衣さん、川崎正己氏、妻夫木聡さん、佐々木統氏
会場の様子




(本誌:武石修)

2012/7/23 22:03